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稀勢の里 危ない!

2017-06-03 06:00:00 | 編集手帳

5月25日 編集手帳

 

 戦前の名アナウンサー、
NHKの松内則三(まつうちのりぞう)さんは慶応大学の出身だった。
野球の早慶戦をラジオで中継したときのこと。
接戦を制した早稲田をたたえ、
思わずマイクに絶叫した。
「敵ながら、
 あっぱれ」。

血の通った人間のぬくもりが感じられて、
ちょっと楽しい。
大相撲の夏場所を見ていて、
その逸話を思い出した。
3日目(16日)の横綱稀勢の里―平幕千代の国戦である。
俵に追いつめられた横綱にアナウンサーが叫んだ。
「稀勢の里、
 危ない!」。

先場所、
左肩付近を負傷し、
表彰式で抱く賜杯の重みにさえ苦悶(くもん)の表情を見せた横綱である。

「痛い」「つらい」を言わず、
完治にほど遠い身で土俵を務める姿に、
そのひと言が漏れたのだろう。
千代の国関には申し訳ないが、
小欄も「危ない!」と叫んだクチである。
人間らしくてほほえましい印象とともに、
実況アナ氏の声が耳に残った。

けがは、
やはり重かったらしい。
稀勢の里関がきのう11日目から休場した。
松内さんは、
大相撲の実況で自作の川柳を披露したこともある。
〈国技館たった二人にこの騒ぎ〉。
“騒ぎ”を連れて土俵に帰ってくる日を待つ。


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