5月23日 おはよう日本
4月に始まったあるプロジェクト。
呼びかけに応じて持ち込まれたのは廃棄されるはずだった携帯電話やスマートフォン。
中の電子基板から貴重な金属をとり出し
東京オリンピック・パラリンピックのメダルを作ろうというものである。
(東京都 小池知事)
「皆さんの携帯電話がメダルになっているなと思ったら
どんなにオリンピック・パラリンピック楽しみなことでしょうか。」
廃棄された携帯電話やパソコン
そしてテレビなどの大型家電に内蔵された電子基板。
金や銀など貴重な金属をとり出せることから“都市鉱山”と言われている。
しかし
日本から海を渡った都市鉱山がアジア各国で思わぬ事態を起こしている。
秋田県県内にある金属のリサイクル工場。
廃棄されたパソコンの電子基板が次々と機械に入れられ粉々にされていく。
その後1300度を超える炉の中で溶かされる。
水で冷やすとみるみる色が変わる。
純度99%以上
6,000万相当の金塊である。
重さは約13キロ。
23万枚の電子基板から作られた。
施設では大型のダクトとフィルターを設置し
有害物質が漏れ出さないようにしている。
(小坂製錬 河口純社長)
「二重三重にトラブルがないよう
安全確保ができるよう設備対応をやっている。」
しかしこの都市鉱山が海外で健康被害を引き起こしていると指摘する専門家がいる。
ジェトロ アジア経済研究所の小島道一研究員である。
小島さんがフィリピンで撮影した映像。
容器に移されたのは電子機器の部品。
沸騰しているのは金属をとり出す際に使う薬品である。
有毒な“シアン系の化合物”とみられている。
現地の人たちは手袋やマスクもせずに作業を進めていた。
小島さんは
こうした危険な作業が中国やベトナムなどアジア各国で行われ
住民の健康被害につながっていると見ている。
その影響を受けているのは直接作業にあたっている人にとどまらない。
不適切なリサイクルが行われているベトナムの村での調査結果では
母乳を調べたところ
有害物質の濃度が首都ハノイに比べて高く
中には10倍以上検出された人もいた。
子どもの脳の発達に影響を及ぼす懸念がある。
こうした廃棄物はどこから運び込まれるのか。
(小島道一さん)
「パソコンのキーボードはひらがながのっていて
これもおそらく日本から来ただろう。」
調査を進めると
日本で使われていたとみられる家電ゴミが多くあることが分かってきた。
(ジェトロ アジア経済研究所 小島道一研究員)
「健康被害を生じさせるような形でものが輸出されていくのは問題だと思う。」
こうした事態に対策を迫れているのが環境省である。
一般家庭から家電ゴミを集め海外に送る“不正なルート”があると見ている。
特に問題視しているのが
不正な回収業者とゴミが集められる“ヤード”と呼ばれる保管場所である。
家電ゴミを捨てる際の正式な手順は
洗濯機や冷蔵庫などの大型家電はリサイクル料を支払い小売店へ。
スマートフォンやパソコンなどの小型家電は
自治体の他
国の認定を受けた業者が回収する。
そこからメーカーやリサイクル業者に送られ
工場などの施設で適切に処理される。
一方環境省が注意を呼びかけているのが無料回収をうたう一部の業者。
本来は一般家庭から家電ゴミを引きとることができないため
“中古品として再利用する”という名目で回収。
その後“ヤード”と呼ばれる保管場所に持ち込まれ
鉄くずなどと一緒に海外へ運びだされていると見ている。
(環境省 廃棄物・リサイクル制度企画室)
「家電ゴミのかなりの割合がこうした形で外国に流出しているのではと推計している。
これからしっかりと全国どのような状態にあるか
把握していく必要がある。」
家電ゴミの不正な収集を根絶しようと監視を強めている自治体がある。
4年前からパトロールを続けている岐阜市である。
住宅の前で見つけたのはコーヒーメーカー。
他にもホットプレートや電子レンジなどの古い家電が。
“家電を無料で回収します”というチラシを見て出された家電ゴミである。
“指定の日時にご自宅の前に出しておくだけ”
住民の気を引く言葉が並べられている。
市の職員はこうした家電ゴミが多く運び込まれる“ヤード”に立ち入り調査に入った。
(岐阜市職員)
「廃棄物処理法第19条により立ち入り検査させてもらいます。」
そこにあったのは法律で小売店に引き渡されることになっている冷蔵庫や室外機など大量の家電。
業者は「再利用するための中古品だ」と主張した。
しかし
(岐阜市職員)
「通電しない
修理していない
冷蔵庫のコード切ってある。
粗雑な扱いもいいところ。」
市は廃棄物と判断。
今後家電ゴミの引き取りをやめるよう行政指導する方針である。
ただ行政指導に従わなかったとしても罰金などは課せられないため
不正な収集はなかなか無くならないという。
(岐阜市 換気用事業課 下川和彦係長)
「立ち入りを行い業者に対する指導は行っているが
改善されていないのが現状。
ゴミを排出される市民の方の意識が変わるのが一番だと思うが
無料という言葉に
どうしても市民の方がゴミにお金を出すことに抵抗を感じる方が多いと思う。
市が行う処理施設で適正に処理していただくのが一番いいことだと思う。」