5月23日 おはよう日本
優れた新聞の報道や文学に与えられるアメリカで最も権威のあるピューリッツァー賞。
今年は大手メディアだけではなく
論説の部門で小さな新聞社も受賞し注目を集めている。
受賞したのはアメリカ中西部の農業地帯にある発行部数わずか3,000分の新聞社である。
アメリカ アイオワ州。
町の商店に新聞を配達するアート・カレンさん。
今回ピューリッツァー賞を受賞した新聞社の記者である。
スタッフはカレンさんの息子や妻など合わせて10人。
家族経営で週に2回新聞“ストームレイク・タイムズ”を発行している。
(カレン・アートさん)
「これまでの新聞の1面の記事です。
銀行強盗から消防士の殉職までいろいろ。
私たちの存在理由は地域に尽くすことだけです。」
ピューリッツァー賞を受賞したのは町の水質汚染をめぐる記事である。
(カレン・アートさん)
「夏場になると臭いがすごい。
誰だって問題があることがわかる。」
この地域の湖や川には周りのトウモロコシ農家から排出された肥料が流れ込む。
地元の自治体は水質汚染の対策が不十分だとして
下流の地域に水道を供給している会社から訴えられた。
自治体は対策を十分にとっているとして全面的に争った。
裁判の費用についてカレンさんたちが自治体に取材すると
「何も言えない」と回答されたという。
その答えに疑問を感じたカレンさん。
詳しく調べることにした。
しかし関係者の口が堅く
事実をなかなか明らかにできない。
自治体の会計担当者や関係する弁護士など
カレンさんたちは地道に関係者に取材を続けた。
その結果
水質汚染の原因となっている肥料のメーカー側の基金が
自治体の裁判費用を肩代わりしていることを突き止めた。
裁判に自治体が負けるとメーカー側も責任を追及される恐れがあると考え
援助していたとみられる。
カレンさんが書いた記事。
“隠された真実を暴く”
約8か月続いた連載。
基金から自治体への資金提供はストップした。
カレンさんは自治体と農業団体の癒着を明らかにできたと考えている。
(カレン・アートさん)
「選挙で公職者を選んでいる納税者ではなく
肥料・化学メーカーが自治体を動かしている。
政策を化学会社が決めるべきか
住民が決めるべきか
それが私たちの伝えたかったポイントだ。」
小さな新聞社の快挙を町の人たちは誇りに感じている。
(住民)
「びっくりだわ。
小さな町で素晴らしいことよ。」
「彼は誰に言われても決してあきらめない。
だから受賞につながったんだと思う。」
嘘の情報が飛び交う今だからこそ
カレンさんは地元に密着し事実を公平に伝えることが何より大切だと考えている。
(カレン・アートさん)
「トランプ大統領がどう考えるにせよ
アメリカでは報道の自由は健在だ。
報道機関は真実のためにこれまで以上に戦わないといけない。
読者がいてこそ報われる。」
地域のために真実を追求し紙面で訴え続ける。
小さな町に新聞社は
報道機関のあるべき姿を問いかけている。