5月18日 キャッチ!
13億の人口があるインド。
このうち約8割がヒンドゥー教の信者だと言われている。
ヒンドゥー教の寺院は色彩豊かな装飾が特徴だが
そこに一役買っているのが鮮やかな花の数々である。
しかし今その花が環境問題の原因の1つになっている。
首都ニューデリーにあるヒンドゥー教の寺院。
多くの人々が参拝に訪れ
神様に花を供え
祈りをささげる。
飾られた花は主にマリーゴールド。
ヒンドゥー教でオレンジ色と黄色は神聖な色とされている。
毎年秋に行われるガネーシャ祭りは
象の頭と人間の体を持つ神様ガネーシャに厄除けを祈願するお祭りである。
ここでも花が大切な役割を果たす。
寺院や祭りで飾られた多くの花はしきたりによって川に流される。
“母なる川”が人々の罪や業を花とともに洗い流すと信じられているからである。
ところが近年
流された大量の花が大きな問題になっている。
捨てられたゴミとともに川の汚染の原因の1つになっているというのである。
政府も花を川に流さないよう呼びかけているが効果が上がっていない。
こうしたなか寺院から出た大量の花をリサイクルする活動が注目を集めている。
ニューデリーにある障碍者支援施設。
障害のある人たちが社会で活躍できるよう手助けするため
市内の病院で臨床心理士をしていたマドゥミタ・プリさんが25年前に起ち上げた。
その後
障害のある人が働く場を作りたいと考えていた矢先に
川を埋め尽くす大量の花を見たのである。
(障碍者支援施設代表 マドゥミタ・プリさん)
「昔は花を川に流すのは善行でしたが
いまはこの街だけで寺が1万以上あります。
川が汚れるのは当然のことです。」
マドゥミタ・プリさんは
花をリサイクルすれば障害のある人に就労の機会が生まれ
少しでも川をきれいにできると考えたのである。
施設のメンバーは毎日市内の60の寺を回って1日300キロの花を集める。
最初は宗教的な理由から協力を拒む寺が多かったそうだが
マドゥミタさんが川の汚染を強く訴えた結果
花を提供してくれる寺が徐々に増えた。
(僧侶)
「川をこれ以上汚さないために活動に協力することにしました。
みんなが習慣を変えれば“母なる川”は再びきれいになるでしょう。」
集められた花は色ごとに仕分けされ
茎や葉が丁寧に取り除かれる。
残った花びらにグリセリンや天然の芳香剤などを混ぜて線香やキャンドルを作る。
加工品で最も売れているのは
乾燥した花びらをパウダー状にしたカラフルな色粉である。
ヒンドゥー教の祭典では
色とりどりの粉や水を
お互いの幸せを交換するために家族や近隣住民で掛け合う。
しかし近年
化学物質が含まれた粉による健康被害が続出し
自然由来の体にやさしい粉が人気を集めるようになっている。
価格は他のメーカーの2倍程度にもかかわらず
売り上げが増加。
去年は5年前の2倍を生産した。
当初は20人ほどで始めた活動も
今では300人まで規模が拡大。
国の支援が不十分なうえ就職が難しい障害がある人にとって
安定収入の得られる恵まれた就労機会になっている。
(施設作業員 ビジェイ・ニシャッドさん)
「ここで働くようになってからとても幸せです。
両親が働けないので
私の収入が家族の支えです。」
3年前にガンジス川下流の都市でも生産を始めたマドゥミタさん。
今後は各地の支援施設と連携してインド全土で活動を展開したいと考えている。
(マドゥミタ・プリさん)
「私たちは全ての人の能力に目を向けるべきです。
障害のある人をもっと雇用して
世の中に影響を与える事業にしたいです。」
神様と人々をつなぐ役目をいったんは終えた花々。
障害のある人の力で生まれ変わり
第2の務めを担う。