9月13日 おはよう日本
『もうぬげない』(ブロンズ新社)
ぼくのふくがひっかかってぬげなくなって
もうどのくらいたったのかしら。
このままずっとぬげなかったらどうしよう。
ぼくはこのままおとなになるのかな。
服が脱げなくなってしまった男の子が
“このまま過ごしたらどうなるんだろう”とどんどん想像を膨らませていく絵本
『もうぬげない』。
子どもの困りごとが思いもよらない展開をみせることで
大人にも人気のこの絵本。
37万部を超えるベストセラーになっている。
作者はいま注目の絵本作家ヨシタケシンスケさん(44)。
(ファン)
「のほのほしている絵が好き。
共感できる点が多い。」
「自虐的なところがある。
クスッと笑えるところが大好き。」
多くの共感を呼んでいるヨシタケさんの世界だが
ヨシタケさんの生き方のモットーは
(ヨシタケシンスケさん)
「怒られないこと
場を荒らさないことが
僕の生きる目標だったので。」
4年前から本格的に絵本作家として活動を始めたヨシタケさん。
最新作は
男の子の“つまんない”という思いがきっかけに話が展開していく。
『つまんない つまんない』(白泉社)
うーん・・・
なんか つまんない。
うーん。
ねえ。
つまんないんだけど。
「・・・じぶんでなんとかしてちょうだい!」
“つまんない”とはどういうことなのか。
男の子はどんどん想像を膨らませる。
ヨシタケさんの大きな特徴が
ちょっとしたトラブルや些細な困りごとが
思いもよらない形で展開していくところ。
ついやってしまう自分の癖の理由を描く
『りゆうがあります』(PHP研究所)
ぼくのハナのおくにはスイッチがついていて
このスイッチをたくさんおすと
あたまから
「ウキウキビーム」がでるんだ。
へりくつをこねる。
(ヨシタケシンスケさん)
「僕はもともとすごくネガティブな性格。
心が弱いんですね。
何かですぐ落ち込んじゃう。
なんとかして自分を励まし直す必要があるんですね。
世の中思いどおりにいかないこと
つらいことがいっぱいあるけれど
考え方のよっては楽しいこともいっぱいあるし
おもしろがることができる。」
子どものころから自己主張が苦手だったというヨシタケさん。
自分の思いや気が付いたことをイラストでメモし続けている。
もともと落書きとして書いていたので小さなままである。
これが今の作品に生かされている。
(ヨシタケシンスケさん)
「当たり前すぎで誰も気づかなかったけど
この現象を僕は気づけたという喜びがあったり。
100人のうち1人2人僕みたいな人がいたとして
そういう方が“だよなぁ”と言ってくれればそれでいい。」
今年の春
ヨシタケさんは絵本ではなく育児に関する本を発表した。
『ヨチヨチ父』と名付けられたこの本。
育児に戸惑う父親の様子がユーモアあふれるイラストと文章で描かれている。
(ヨシタケシンスケさん)
「子育てをしていて一番気がつくことってやっぱり
いろんな育児本やウェブサイトがいっぱいある中で
まぁ参考にならないなと。」
2人の男の子の父親であるヨシタケさん。
最初の子育ての苦労で持ち前のネガティブさが爆発してしまった。
(ヨシタケシンスケさん)
「子どもが産まれたあとがとにかくボロボロだったので
子どもをつくって良かったんだろうかと思っちゃうんですよね。
良かったのかと思っちゃった自分にさらに落ち込む。
子育てをおもしろがれない自分ってダメなのかな・・・と。
まわりにはなかなか言えない思いをイラストで表現することで
共感して癒される人がきっといるのではないか。
ヨシタケさんの思いである。
(ヨシタケシンスケさん)
「決してつらいものとして描くんじゃなく
実際はこうだよね
でもそういうつらいことも考えようによってはおもしろくなるよねというような。」
「僕はこう納得したけど
別の人は全然違う場所をおもしろがってくれたり
そういう現象が起きてくれるのが正しい気がするというか。
読み終わった人が全然違う感想を持ってくれれば
ある意味成功なのかな。」
「むしろ自分の出来ないところを人前で言うのが気持ちいいですね。」
ヨシタケさんの絵本は決して説教臭くなく
読んでいてついニヤニヤしてしまう。
ヨシタケさんも
1人でこっそりと自分でペースで読んでほしい。
そんな絵本のあり方が好きでこういった絵本を作りたかったという。