9月30日 経済フロントライン
9月にドイツで開かれた世界最大級のモーターショー。
展示の主役は電気自動車。
各メーカーは鮮明に“EVシフト”を打ち出した。
ダイムラーは5年後までにメルセデスベンツで10車種
フォルクスワーゲンは2025年までに50車種の投入を目指すと宣言した。
(フォルクスワーゲン ディースCEO)
「我々は電気自動車を大きなマーケットととらえ
新たなスタンダードにします。」
メーカーが電気自動車に力を入れる理由は
ヨーロッパ各国が進める環境重視の政策にある。
EVシフトがいち早く進むノルウェー。
電気自動車であることを示す“E”から始まる特別なナンバーの車が並んでいる。
(EV所有者)
「とても気に入っています。
音も静かだし走りもいいです。」
ノルウェーは温暖化による海面上昇の危機感があり
2025年までにすべての自動車を電気自動車にする目標を掲げ
さまざまな優遇策を進めている。
まず購入する際には
通常100万円以上かかる税金と25%の消費税が免除される。
さらに高速道路は無料。
渋滞している時にはバスとトタクシーの専用レーンを走ることが許されている。
3年前にBMWが作る電気自動車に買い換えた女性。
当初は1回の充電で走れる距離に不安があったというが
充電スタンドが全国に1万か所以上整備されているため
遠くに出かけるときに心配はないと言う。
(購入した女性)
「電気自動車は未来の環境にもつながる車だと思っています。」
国主導の普及策の結果
今年は新車販売の2割近くを電気自動車が占めるまでになっている。
(BMW イアン・ロバートソン上級副社長)
「ノルウェーを見てください。
今後 各国政府が追従するでしょう。
EVシフトはますます加速するとみています。」
ヨーロッパの自動車メーカーがEVシフトを進めるのには1つ大きな理由がある。
(2015年9月 フォルクスワーゲン ウインターコルン前会長)
「今回の不正について心よりお詫び申し上げます。」
一昨年フォルクスワーゲンが排ガス規制を逃れるために不正を行っていたことが発覚。
主力のディーゼル車は売り上げを落とし
新たな戦略が必要となったのである。
(フォルクスワーゲングループ ウルリッヒ・アイヒホルン最高技術責任者)
「ディーゼル車のスキャンダルは当然ながら悪影響を及ぼしました。
EVシフトの計画を早めざるを得なくなったのです。」
すでに電気自動車の量産体制を整えたメーカーもある。
BMWである。
敷地内で目立つのは巨大な風車。
環境対策への取り組みをアピールするために作られた工場が量産の拠点になった。
BMWはこの工場の生産効率を大幅に改善。
電気で走る車の生産を強化し
今年は10万台を市場に送り出す計画である。
(BMW 広報担当者)
「我々は他社と比べて経験も豊富で大きく前に進んでいます。
他の工場でもEVの生産に取り組めるようにさらに投資をしていきます。」
EVシフトの加速で懸念されているのは
自動車産業を支えてきた部品メーカーへの影響である。
創業140年のドイツの部品メーカー。
エンジンの部品が主力製品だったが
去年その売り上げが落ちた。
ガソリン車やディーゼル車で必要とされていたエンジンまわりの部品の多くは下請けのメーカーが作っている。
それがモーターで動く電気自動車では不要になるため影響が避けられない。
このメーカーでは60億円をかけてバッテリーを接続する部品を開発。
新たな取引先を開拓できたが
生き残りにはさらなる開発が必要だと考えている。
(部品メーカー エルリングクリンカー シュテファン・ヴォルフCEO)
「50年後も会社が成功しているように
どういう戦略をとるか。
部品メーカーの多くはまだこの変化に備えられていないでしょう。」
環境対策
さらにディーゼルでの不正問題を背景に進むヨーロッパのEVシフト。
産業構造そのものを大きく変えようとしている。