9月27日 国際報道2017
太平洋に浮かぶ国 マーシャル諸島。
サンゴ礁でできた美しい島々から「太平洋に浮かぶ真珠の首飾り」とも呼ばれるマーシャル諸島。
かつてアメリカが核実験を繰り返した場所でもある。
マーシャル諸島共和国マジュロにある公立高校。
ここで数学の教師をしている進藤純子さん(33)。
今年4月にマーシャル諸島に移住。
9月から教壇に立ち
マーシャル語を使って授業を行っている。
中学生のころから
教育の場に恵まれない世界の子どもたちを助けたいと考えてきた新藤さん。
マーシャル諸島に初めてやって来たのは4年前。
JICA青年海外協力隊の一員として教育現場に携わった。
(教師 進藤純子さん)
「子どもたちがちゃんと学べていない環境がある。
彼らの可能性が最大限伸ばされていないことに気付いて
ここで頑張ろうと決めました。」
いま授業で高校生に教えているのは分度器の使い方など初歩的な内容ばかり。
ここに来て新藤さんは教育水準が想像以上に低いことに驚いたという。
ミクロネシアの国々の中でも若者の学力が最も低いとされるマーシャル諸島。
高校生の半数近くが授業について行けず学校を中退している。
進藤さんはその大きな原因は授業で使う言葉にあると気がついた。
マーシャル諸島の公用語は母国語のマーシャル語と英語である。
日常会話はマーシャル語が使われているのに対し
授業の多くは英語で行われている。
教科書のほぼすべてが海外からの支援品で
英語で表記されているからである。
母国語でなければ理解は深まらないのではないか。
進藤さんは毎日仕事が終わったあと独学でマーシャル語を勉強。
授業で使うように心掛けている。
(生徒)
「ほかの先生はマーシャル語で授業をしないです。
みんな英語です。
マーシャル語を使う進藤先生の授業は説明がわかりやすい。」
教育で英語が大きな比重を占めている背景には
アメリカとの深い関係がある。
第二次世界大戦後
アメリカの統治下に置かれたマーシャル諸島では
67回に及ぶ核実験が行われた。
実験の見返りに
アメリカからは国家予算の6割にあたる財政援助が今も続いている。
こうした中で日常会話では使わない英語での教育制度が導入されていった。
なんとか教育の現状を変えることはできないかと考えた新藤さん。
公立の小学校で図書館をつくったのである。
(教師 進藤純子さん)
「スタートラインとして
知識とか楽しく勉強できる
集まれる場所を作りたくて図書館をつくるのを考えました。」
資金はインターネットで募るクラウドファンディングを利用。
100万円余を集め完成させた。
図書館の蔵書は約600冊。
ほとんどが英語で書かれているが
マーシャル語で書かれたものも10冊ほどそろえた。
書店が1つもないマーシャル諸島の子どもたちにとっては
本に接する貴重な機会ができたのである。
絵本や図鑑など思い思いの本を選び夢中で読んでいる。
(生徒)
「図書館にいるとワクワクする。」
「本を読むのは楽しい!」
マーシャル諸島政府も新藤さんが図書館をつくったことで
マーシャル諸島の教育が変わると期待している。
(マーシャル諸島 カラニ・カネコ保健相)
「限られた予算しかなく寄付もあまりない中
進藤さんは第一歩を踏み出してくれた。
子どもたちは図書館で学んだことを将来に生かしてくれるだろう。」
新藤さんの次の目標は
図書館にある英語の本を翻訳してハーシャル語の本を増やしていくことだという。
(教師 進藤純子さん)
「マーシャル語でちゃんと本を読んで知識を得て
いろいろなことを勉強してもらうのが一番の目標なので
子どもたちがどんなことも
いいことも悪いことも
本や資料から学んでいける環境をつくっていきたい。
マーシャル諸島の子どもたちの未来のために。
進藤さんの挑戦は続く。