4月18日 キャッチ!ワールドEYES
保護主義的政策を次々と打ち出すトランプ大統領は
3月 輸入される鉄鋼やアルミニウムに高い関税をかけたほか
中国の知的財産の侵害をめぐって幅広い輸入品にも関税を課すことを決めた。
じつはこの鉄鋼関税より前の去年11月
政府の補助金により不当に安く販売されているとして
カナダ産の輸入木材に対しても高い関税をかけることを決めていたのである。
しかし今
アメリカの林業を保護するための高い関税による影響が林業以外の産業にも広がり始めている。
広大な国土の半分が森林におおわれているカナダ。
世界の針葉樹林の3割を占めると言われている。
業者は森林を所有する政府から伐採する権利を購入し
アメリカに安く輸出している。
アメリカの林業は大きな影響を受けてきた。
西部オレゴン州で100年近く操業している製材会社。
加工しているのは地元で伐採されたベイマツという針葉樹である。
ベニヤ板やチップなどに加工している。
しかし安いカナダ産木材との競争激化で売り上げは減少傾向が続いている。
オレゴン州の木材の生産量は20年間で半分以下に減少した。
こうした状況を打破しようと動いたのがトランプ大統領である。
(アメリカ トランプ大統領)
「国民はカナダがアメリカに厳しいのを知らない。
木材にとても高い関税をかけてやる。」
去年11月からカナダ産の木材に平均で20%余の関税を課すことを決めた。
カナダに強い不満を抱えてきたアメリカの製材会社はトランプ大統領の判断を歓迎している。
(製材会社 カイル・フレーレスさん)
「みんな木材の貿易は不公平だと感じています。
アメリカの生産者は搾取されてきた。
大統領はいい仕事をしているよ。」
その一方で関税化が思わぬ形で影響を及ぼしている現場がある。
アメリカの建設業界である。
オレゴン州で戸建て住宅を手掛ける住宅メーカーの社長 ケント・カウフマンさん。
アメリカ産より3割安いカナダ産の木材を大量に使用している。
しかしいま急激な価格の上昇に直面し収益を圧迫する要因となっている。
(住宅メーカー ケント・カウフマン社長)
「見積もった予算と実際かかる費用が全く違うので驚くことがあります。」
関税がかけられる前までは
カナダ産の針葉樹材の価格305ドルに対し
アメリカ産は409ドルだった。
しかし今ではカナダ産が401ドルに上昇。
アメリカ産も供給不足などが原因で433ドルまで値上がり。
住宅メーカーも販売価格に転嫁せざるを得ない状況だと言う。
すでに住宅メーカーの間では建設作業員の人件費の高騰などで
販売価格に上乗せしても買い手が付く高級住宅を優先して建設する傾向が強くなっている。
去年のアメリカの新築販売件数を4年前と比べると
5,300万円以上の物件は2倍に増えた一方
2,700万円以下の家は6%減った。
木材の価格上昇はこうした動きに拍車をかけると言われている。
その結果
初めて住宅購入を希望する20~30代の若い世代にとって
手ごろな物件を見つけにくい状況が生まれている。
住宅メーカーの社長は
トランプ大統領による産業保護政策は
消費欲が盛んな若者には逆にマイナスに働いていると感じている。
(住宅メーカー ケント・カウフマン社長)
「持ち家がアメリカンドリームなんて昔話ですよ。
住宅メーカー社長の私も新築とは無縁です。」