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苔に想いを馳せる

2018-05-16 07:00:00 | 編集手帳

4月23日 編集手帳

 

 縁談の相手が知っている花の名前は、
桜と菊と百(ゆ)合(り)だけだった。
それで女は結婚をためらう。
向田邦子さんの小説「花の名前」である。
確かに草花への関心は、
人柄を知る手がかりの一つだろう。

題名の「花」を「コケ」に置き換えたくなるようなニュースを最近、
ヨミウリ・オンラインで読んだ。
京都大の女子大学院生が、
苔(こけ)庭のコケの種類を自動判別する人工知能(AI)を開発した。
高校生の頃から古刹(こさつ)に足を運び、庭に夢中になったという。

植物学者の秋山弘之さんが、
著書『苔の話』で述懐している。
〈ただ純粋に苔に想(おも)いを馳(は)せるとき、
 私の心に浮かぶのは、
 物悲しさの中の静寂です〉

この植物を観察したければ、
〈ゆっくりと落ち着いた気分であること〉が大切だ、
と助言もしている。
町のあちらこちらでひそやかに生きる姿が見えてくるらしい。

さっそく近所の公園に行った。
葉桜が陽光にきらめいている。
幹のところどころに緑色の広がりがある。
やはりコケだった。
なんだかうれしい。
AIがいかに発達しても、
この気持ちは人間だけが味わえるものだろう。
ゆっくりと名前も調べてみようか。



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