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蛮カラ

2018-05-15 07:00:00 | 編集手帳

4月22日 編集手帳

 

 極限まで引き算し、
簡素な所作で祈りや願い、
悲嘆を演じる能には様々なお約束がある。
装束なら紅入(いろいり)は若い女、
紅無(いろなし)は中年の女というふうに、
愛好家は演者たちの姿から年齢や身分といった情報を、
ごく自然に読み取る。

そういった記号性の強さなら、
あのアイテムも相当なものではないか。
大将とか番長とか呼ばれる人の必需品、
下駄(げた)である。

昭和の漫画やアニメを思い浮かべてみる。
戸川万吉、
風大左衛門、
ゴリライモ…。
かまやつひろしさんのヒット曲「我が良き友よ」の出だしはこんなだった。
♪下駄をならして奴(やつ)がくる――。
一節を耳にしただけで情景がぶわっと立ち上がってくるから不思議だ。

めっきり見かけなくなったと思っていたら、
意外な記事にその二文字を見つけた。
大阪府教育庁が校則の点検・見直しを指示したところ、
時代遅れだとして「下駄での通学禁止」を削除した高校があったという。

驚き半分、
奇妙な寂しさが半分。
カラン、コロンと気ままに闊歩(かっぽ)し、
先生に小言をくらう。
そんな男くさい生徒がいつまでいたのか。
蛮カラという言葉すら絶えて久しい今だからこそ無性に気になる。



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