1月15日 おはよう日本
去年開催された浜松国際ピアノコンクール。
ピアニストたちが華やかな闘いを繰り広げたこの大会を陰で支えたのがピアノの調律師である。
88本ある鍵盤。
繊細な調整を尽くして最高の音を導き出す。
それが調律師である。
浜松市内に本社がある楽器メーカー。
ピアノ調律技能士 大久保さん。
より良い音を導き出すために最適なバランスを探し求め調整を続けてきた。
(1級ピアノ調理技能士 大久保さん)
「本当にいい音とは何か
いいタッチとは何かを
この3年間追求してきた。」
コンクールはピアノを選ぶことから始まる。
用意されたピアノは3台。
地元浜松のメーカー2社と世界的シェアを誇る海外メーカーのものである。
出場するピアニストは与えられた10分の間に自分が演奏するピアノを選んでいく。
自分のピアノを選んでもらえるかどうか
大久保さんは別室で見つめる。
しかし次々と他のメーカーのものが選ばれていく。
そんななか1人のピアニストが大久保さんのピアノを選んだ。
トルコ出身の若手 ジャン・チャクムルさん(21)である。
大きなコンクールでの受賞歴はないが
将来の活躍を期待されているピアニストである。
ピアノの調整は髪の毛1本の太さに満たないレベルで行う。
これまで培ってきた感覚だけが頼りである。
「0,0何ミリでいろいろな音が変わってくる。
そういう微妙な調整をしているが
最後は耳で判断して。」
本番直前
オーケストラとのリハーサル。
チャクムルさんから“音の止まり方にわずかなばらつきがある”と指摘された。
残された時間はわずか。
「40分に交代?」
「あと18分。」
ぎりぎりまで調整が続いた。
「ちょっと手がつけられていなかった所を指摘された。
一流のピアニストになると
細かい所に気づいてしまう。
それだけ感覚が敏感。」
予選を勝ち抜いた6人のピアニストたち。
それぞれが選んだピアノで演奏に望む。
いよいよチャクムルさんの出番。
大久保さんは舞台袖から見守る。
全てを出し切ったチャクムルさんの熱演。
割れんばかりの拍手が巻き起こった。
審査の行方を見守る大久保さん。
1位はチャクムルさんに決定。
大久保さんのピアノが最高の演奏を引き出した。
「あなたの調律は完璧だった。」
「君のピアノも完璧だった。」
(1級ピアノ調律技能士 大久保さん)
「人生をかけたコンクールで
そのピアノに信頼を置いて
演奏してもらえるのは
最高の喜び 幸せ。」