3月7日 国際報道2019
かつて90%近い支持率を誇っていたロシアのプーチン大統領。
しかし国民に不評な年金制度改革や経済の低迷によって支持率は低下。
そのプーチン大統領に追い打ちをかけているのが汚職への人々の不満である。
ロシアの内務省が毎年摘発する汚職事件の数は約3万件。
2016年の被害総額は日本円で1,300億円を超えた。
しかしそれも氷山の一角に過ぎないと言われている。
政治家や高級官僚らからも億単位の規模のもの
さらには横領・恐喝・殺人まで
あらゆる手段を使って私腹を肥やすなど
また一般市民でもわいろを使って交通違反を見逃してもらうことも多く
社会の隅々まで汚職が広まっている。
一方で帝政ロシアや旧ソビエトなど歴史的に国家に権力が集中してきたロシアでは
汚職は“悪しき伝統”で
権力者とはそんなものだと社会的に黙認されてきた側面もある。
しかし今変化が表れている。
国民がどのような社会問題に不満を持つかを表したグラフ。
“汚職”と答えた人が4年前から倍増。
かつては下位にランキングしていたのに今では
トップ2つの“物価高”や“貧困”といった経済への不満に迫る勢いである。
そして同時期のプーチン大統領の支持率の推移をみると
88%から62%と26%も下がっている。
モスクワ中心部のレストラン。
食材や内装にこだわり流行に敏感な中間層の間で人気である。
オーナーのjセルゲイさんは
1年前突然警察が店に押しかけたという。
警察が目を付けたのは店の従業員だった。
「警察は従業員の身分証明書を調べはじめ
さらにキッチンにも入っていきました。」
不法就労者がいないか警察署のデータベースと照合するとして
15人の従業員に出頭を求めた。
そこで警察から出た言葉は
(レストラン オーナー セルゲイさん)
「副署長は言いました。
“取り調べはしない
すぐに開放してもいい
食事の代金を半額にする割引券が3枚必要なんだ”と。」
セルゲイさんはこの要求を断固として拒否。
いきさつを自分のフェイスブックに書き込んだ。
今どきのわいろは現金ではなく割引券ですよ!
この投稿は瞬く間にシェアされ1万4千人以上に拡散した。
どうにもならない まさにギャング国家ね
頑張れ!
きっと大丈夫
真実の側にいれば何だって打ち負かせるさ
こういった要求に応じることがロシアでは当たり前だったというミロノフさん。
反響の大きさにロシア社会の変化を感じたという。
(レストラン オーナー ミロノフさん)
「要求に応じるほうが楽だとの考えではロシアの汚職はなくなりません。
法治国家に住みたければ自分たちの手で作らなければ。」
汚職によって金銭を失うだけでなく人生を変えられてしまった人もいる。
モスクワ在住の実業家 ボリソフさん。
経営していたベーカリーが突然立ち退きを迫られ廃業に追い込まれた。
「このスペースで焼き立てのパンなどを売っていました。」
店が繁盛し事業を拡大しようとしていた10年前
怪しげなブローカーに建物の権利を手放すよう強要された。
断ったところ警察に呼ばれ警察に呼ばれ
全く身に覚えのない詐欺事件で刑事告発されたのである。
(ボリソフさん)
「“建物を引き渡さなければ告発されるぞ”と事情徴収で言われて気づきました。
建物を手に入れて怖し
空いた土地を誰かのために使う必要があるのだと。」
ブローカーと警察が共謀していると確信したボリソフさん。
弁護士を雇って徹底抗戦したが
2年間の自宅軟禁後さらに1年間拘置所に拘留されてしまう。
「縛り付けられたまま何度も蹴られ
食事や水を与えられず放置されました。
私は当時65歳で
常に死の危険と隣り合わせでした。」
9年以上にわたる捜査の末
去年ようやく不起訴となったボリソフさん。
しかし交流期間中に何者かが店を破壊。
ベーカリーは営業停止に追い込まれ
真相は今も明らかになっていない。
ロシアに蔓延する汚職する汚職の実態を世界に発信したい。
ボリソフさんはいま手元に残った資金を使って汚職撲滅を訴えるアニメーションを制作している。
汚職とは頭を切られても生まれ変わる“魔物”みたいなものだ
(ボリソフさん)
「汚職はわいろの受け渡しだけでなく
もっと根深いものだと知ってもらいたいのです。」
そしていま汚職への不満はプーチン政権へ向かっている。
2月に行われた反政府デモ。
プラカードには“汚職のないロシアを”と文字が掲げられた。
汚職対策に力を入れるとするプーチン大統領。
しかし対策を強化すれば自らの権力基盤を揺るがしかねないジレンマを抱えていると専門家は指摘する。
(世論調査機関「レバタセンター」調査部長)
「ネット上で汚職の取引を告発する人々が増えたことで
汚職の問題に対する社会的な関心は高まっています。
しかし大統領が本気で取り締まりを行えば自分の側近が犠牲になるだけなのです。」