3月24日 編集手帳
大阪では時々<売りたいおじさんの底力>が込められた、
強烈な宣伝を見かける。
作家の中島らもさんが『西方冗土』(集英社文庫)で紹介している。
「当方明治三十八年生まれ。
余った命。
だから安い!」(表札屋の貼り紙)、
「シングル百八十円、
ダブル三百円、
サブル四百五十円」(イカ焼き屋のメニュー)…。
大きさ3倍がなぜトリプルでなくサブルなのか。
謎の造語は、
けれども頭にこびりつく。
「おいしいタコヤキ、
二百円でどやっ!?」。
らもさんは屋台の貼り紙に仰天したという。
どやっ!?と問われたら素通りできない。
買うか否か、
いやでも<答えを自分の中で出さねばならない>
統一地方選では大阪の有権者が迫られている。
「大阪都構想、どやっ!?」。
今後4年の街の行方を決める選挙だ。
教育とか福祉とか聞きたい策は様々あるだろう。
二者択一の「どやっ!?」は耳に響くが、
心にはどうか。
惑う人も多かろう。
さる会合で京都の学者さんが含み笑いで曰いわく
「実現したら1府1道2都43県に変わりますなぁ」。
実際は大阪府の名は今のまま変更なしとか。
単純な訴えと裏腹、
そこはややこしい。