3月27日 おはよう日本
首都ニューデリーで去年 農家数千人が参加して行われたデモ。
参加者が口々に訴えるのは収入の改善である。
(デモ参加者)
「一生懸命働いた分の適正な収入をもらっていません。」
「政府は何もしません。」
国民の6割を占める農家。
5年前に当選したモディ首相は
2022年までに農家の収入を倍増させることを公約に掲げた。
しかし補助金の支給や灌がい施設の整備など
農村振興策は思うように進まず掛け声倒れとなっている。
収穫物の価格が低迷する一方
燃料や肥料代は高騰し
多くの農家は経済成長の恩恵を実感できていない。
こうしたなか社会問題となっているのが農家の自殺である。
生活のための借金がかさみ
それを苦に自殺する人たちが後を絶たないのである。
その数は年間1万人以上にのぼる。
西部マハラシュトラ州
人口180万人ほどの地方都市アコラ。
去年1年間に農家約60人が自殺する深刻な事態となっている。
去年10月 夫を自殺で亡くしたサンギータさん。
夫は自宅近くの畑で小麦や大豆を育てていた。
(サンギータさん)
「ここが夫が農作業していた畑です。
すべて1人でやっていました。」
年収は日本円で15万円ほど。
農家の平均的な年収だが
肥料など諸経費を差し引くと手元にはほとんど残らない。
2人の子どもの教育費もかさみ借金に頼らざるを得なかった。
しかし収入は一向に改善せず
借金はおよそ60万円にまで膨らんだ。
(サンギータさん)
「これが借用書です。
いつも悩み続けていました。
返済ができなければ子どもの教育や家計はどうなるのかと。」
残された借金に追い込まれ
夫の兄の家に身を寄せるサンギータさん。
今は地元のNGOから精神的なケアなどの支援を受けながら仕事探しを始めようとしている。
(NGOの担当者)
「借金のことよりもあなたの人生の方が大事よ。
良い人生を送るためにも働くことが必要ね。」
NGOは
こうした支援にも限りがあり
政府が農作物の買取価格を引き上げたり
借金の軽減を行ったりする必要があると訴えている。
(NGOの担当者)
「政府が農家の収穫物に適正な価格を保証しなければ
借金は増え続け
自殺者は増えるいっぽうです。」
一方 若者たちにも暗い影を落としているのが深刻な就職難である。
モディ政権は当初
製造業などの活性化などで年間2,000万人の雇用の創出を目指していた。
しかし実現できたのは半分以下の800万人である。
首都ニューデリーに住むマノージさん(21)。
大学で生物学などを学び去年卒業した。
研究職を希望してこの1年就職活動を続けているが一向に就職が決まらない。
(マノージさん)
「きのう届いた試験の合否通知です。
2次試験に進めませんでした。」
短期雇用の警察官や鉄道省の職員などにも幅を広げ試験を受け続けているが全て不合格である。
いまは路上で野菜や果物を売ることで食いつないでいる。
早朝から深夜まで1日15時間働いて得られる収入は日本円で月3万円ほど。
地方に暮らす恒例の両親への仕送りもここからやりくりしなければならない。
(マノージさん)
「このまま仕事が見つからなければ将来がどうなるか
とても心配です。
何とか仕事を見つけて不安から抜け出したいです。」
世界で最も高い経済成長を続ける一方
多くの人がそこから取り残されている現実。
専門家は
インド経済を支える農家や零細企業への政府の支援が不可欠で
それが雇用の創出にもつながると訴える。
(ジャワハルラル・ネルー大学 ヒマンシュ教授)
「頂点にいるのは一部の大企業だけで
ほとんどは底にいます。
その底を強化しなければいけません。
政府は彼らに市場へのアクセスや技術
電機や物流などのインフラを与える必要があります。」