3月13日 国際報道2019
去年11月
アメリカのIT大手アマゾンドットコムの第2本社の建設が決まったニューヨーク。
現地は大きな経済効果がもたらされるとして大いに沸いた。
しかし2月 計画は突如撤回されることになった。
背景にあったのが
格差や大企業に対する反発である。
ニューヨークマンハッタンの国連本部のビル。
川を隔てた東側の土地がアマゾンが第2本社を計画していたロングアイランドシティーである全米238の都市や地域が名乗りを上げるなか
激しい誘致合戦を勝ちぬいたのがニューヨーク州のクオモ知事とニューヨーク市のデブラシオ市長である。
民主党出身の2人は
日本円で3,300億円に上る助成金や税制優遇措置などを打ち出してアマゾンを誘致。
経済の活性化を目指したい考えだった。
(ニューヨーク市 デブラシオ市長)
「ニューヨークでしかできないことがあると
アマゾンは世界に知らしめた。」
地元からも大きな期待が寄せられていた。
(住民)
「仕事が増えるから素晴らしいと思うわ。」
しかしこれに異を唱えたのが
同じ民主党内でもよりリベラルな主張を掲げる
「プログレッシブ」と呼ばれる左派系の政治家とその支持者である。
(民主党 左派系 州議会議員)
「アマゾンにNOを突きつけよう!」
建設予定地に隣接する地域の下院議員 オカシオコルテス氏もその1人である。
去年 最年少で下院議員に当選した。
社会の格差解消や大企業への優遇反対を主張し
アマゾン第2本社の誘致にも反対を表明している。
(民主党 オカシオコルテス下院議員)
「世界1の街でアマゾンのおこぼれに甘んじる必要はありません。」
彼女の声に呼応したのが格差に不満を持つ若い人たちである。
ニューヨーク市議会の公聴会では派手なパフォーマンスを展開。
マンハッタンにあるアマゾンの店舗にも押しかけた。
「私たちの街だ!」
(民主党 オカシオコルテス下院議員)
「アマゾンに3,300億円も払うなら
そのお金をこの地域のために使えます。
教員も増やせるし
地下鉄も直せるし
雇用も増やせます。」
反対運動の結果
誘致決定からわずか3か月でアマゾンは“計画は白紙に戻す”と発表した。
アマゾンは声明で
“世論調査では市民の70%が賛成していたが地元議員らと友好的な関係が築けなかった”
と説明している。
アマゾンにとっても意外な顛末だったことがうかがえる。
それは誘致を進めてきた側も同じである。
ニューヨーク市のデブラシオ市長にとってはまさに“寝耳に水”の知らせだった。
(ニューヨーク市 デブラシオ市長)
「残念だ。
なぜこうなったが理解できない。」
地元でビジネスをする人たちにも左派系に対する不満がくすぶる。
(地元飲食店オーナー)
「左派系の政治家たちが企業誘致を妨害するなんておかしい。」
オカシオコルテス氏をはじめとする左派系は
巨大企業を追い出したことで「アマゾンキラー」ともてはやされている。
アマゾン騒動で浮き彫りになった民主党と民主党の対立。
専門家は
「過激にも聞こえるこうした左派系の主張がこれまでよりも幅広い層に支持を広げている」と分析している。
(コロンビア大学 トッド・ギトリン教授)
「左派系の存在感がこんなに大きくなったのは初めてです。
彼らが主張するぜいぢゃ社会福祉などの制度が
いま人々に支持されているのです。」
大企業への反発は来年の大統領選挙にも影響を与えようとしている。
3月に入ってニューヨークには次々と有力候補が演説に訪れている。
次期大統領選挙への立候補を表明した民主党の左派系の人たちである。
騒動の震源地ロングアイランドシティーに入ったエリザベス・ウォーレン上院議員(69)。
新たな政策として
“アマゾンなど巨大企業の解体”をぶち上げた。
(民主党 ウォーレン上院議員)
「巨大IT企業を解体するときが来た。
大富豪にたかられるのはうんざり!
財を築いたらそれを助けしてくれたこの国に少しは返せ!」
そして前回の大統領でヒラリー・クリントン氏と最後まで指名を争ったバーニー・サンダーズ上院議員(77)。
今回の騒動をきっかけに左派系の勢いはさらに増している。
(民主党 サンダース上院議員)
「1%の富裕層と巨大企業にこう言おう!
“私が大統領になったら税の優遇は許さない”ということを!」