3月13日 編集手帳
昭和のエンターテイナー植木等さんが、
映画『ニッポン無責任時代』(1962年)で演じた役名を思い出す。
「平均」。
姓はたいら、
名はひとしと読む。
高度成長期まっただ中のサラリーマン喜劇で、
1億総中流時代を映すネーミングにちがいない。
この頃は「みんな同じで何より」とする空気が強かったのかもしれない。
時節柄、
元号の区切りで考えたくなる。
親が付ける名前に変化が出たのは平成だろう。
俗に言うキラキラネームである。
山梨県の高校3年生が目立ちすぎる名前に悩み、
大学進学を前に家裁に申し立てたところ、
改名を許されたという。
県版によれば、
新しい名前を認められたのは赤池肇さん(18)。
以前の名前は「赤池王子様」だった。
名はおうじさまと読む。
親は「唯一無二の存在に」との願いから付けたそうだが、
本人は「この名前で生きていくのが苦しかった」と話している。
過去を断ち切って新しい人生を始める――
「肇」にはそんな思いを込めた。
旅立ちの春に歌を引く。
<真砂なす数なき星の其の中に吾に向かひて光る星あり>正岡子規。
人生のキラキラは自分で探すものだろう。