12月18日 おはよう日本
40を超えるカジノが立ち並ぶマカオ。
わずか数分で億単位の金が飛び交う。
カジノの周りには富裕層が満足できるようなリゾート施設が相次いで誕生している。
スパではプラチナ製のマスクで肌の手入れ。
ホテル最上階のVIPルームには執事が24時間常駐。
価格は非公開。
泊まれるのはカジノでたくさんのお金を使った人に限られている。
こうした施設が人気を呼び
訪れる外国人の数は年間3千万人以上。
売り上げはカジノだけでも4兆円に迫る勢いである。
その恩恵によって町は一変。
20年前は干潟だったところが世界有数のリゾートへと生まれ変わった。
(マカオのIR経営者)
「カジノは財政上のエンジンだ。
日本でIRが注目されるのはなぜか。
それは新しい挑戦を可能にするからだ。
外国人観光客から得たカジノ収入で大きな発展につなげることが可能だ。」
マカオはどう変わったか。
大きく変わったのは雇用である。
今では労働人口の23%にあたる9万人がカジノで働いている。
税収の7割がカジノがもたらすようになった。
その結果市民65万人の教育費や医療費は無料。
さらに毎年1人あたり10万円以上のの現金が支給されている。
地元経済にカジノがもたらした恩恵は大きい。
しかしその一方で負の影響も深刻になっている。
最近マカオではカジノの従業員がチップを盗む事件が相次いでいる。
カジノ従業員自らが依存症になり
かけ金欲しさに窃盗などの犯罪に走ってしまうというのである。
依存症はカジノが生活の身近にある一般の市民にも及んでいる。
公務員だった妹が深刻なギャンブル依存症になったという女性。
最初は興味本位で3万円程度から始まったカジノ遊び。
負けが重なり見る見るうちに借金は1,200万円に膨れ上がっていた。
ばく大な額を取り戻そうと詐欺に手を染めそのまま海外に逃亡してしまった。
「ギャンブルは大嫌い。
家庭も何もかも壊してしまうんです。」
ギャンブル依存症の疑いのある人がピーク時には成人人口の6%
2万5,000人にのぼったマカオ。
こうした事態を受け対策も広がっている。
カジノにほど近い広場では家族が依存症になった人たちが参加する市民グループが注意を促している。
「少しの額ならいいですが大金をつぎ込んではいけません。」
さらに政府も最新のシステムを導入。
指紋など個人情報を登録すれば
依存症の疑いがある家族などの入場を制限できるという。
(マカオ政府 ギャンブル依存症対策担当者)
「2012年に運用を始めてから7万人が登録し効果をあげている。
カジノ従業員のカジノへの入場を法律で全面禁止にするなど
政府として対策を講じている。」
12月13日 国際報道2018
大英博物館のツイッターのヘッダー画像は
アイヌの人たちが登場する日本の大人気漫画「ゴールデンカムイ」のキャラクターである。
いま世界では先住民族のアイヌが日本の文化としても注目されている。
先住民族は世界では90の国に3億7,000万人が暮らすとされている。
しかしその言語や文化の多くは衰退している。
とくに言語については世界で約7,000語が話されているが
このうち2,500語が話す人の減少が著しく危機的な状況にあるとされている。
そのなかでアイヌ語はもっとも消滅に近く
極めて深刻と指摘されている。
こうしたなか
国連は2007年に「先住民族の権利に関する宣言 」を採択。
先住民足の文化や伝統を守ることを訴えてきた。
そしてそしてユネスコは2019年
「先住民族の国際年」と定め
言語の継承に向けた取り組みを行なうよう呼びかけている。
こうした取り組みを世界に先駆けて進めてきたのは北欧のノルウェーである。
首都オスロから北へ1,000km余り
ノルウェー北部の街カウトケイノ。
冬はマイナス30度にもなる厳しい極北の街である。
トナカイの遊牧など
伝統的な生活文化を守ってきたのが先住民族「サーミ」の人たちである。
ノルウェーの人口の約1%
4万人いるとされるサーミの人たち。
彼らが話すサーミ語は公用語のノルウェー語とは全く違う言語である。
ノルウェー政府は1980年代までサーミの人たちに対する同化政策を進めていた。
公の場でサーミ語を話すことを禁止したほか
子どもたちは親から引き離され
徹底した同化政策が行われた。
その結果 サーミであることを名乗る人は激減。
多くが都市部に住み
土地に根づいた独自の文化も失われようとした。
オスロに住むタチアナ・コルプスさん(33)は都市部で暮らすサーミのひとりである。
数年前 母親から自分がサーミであることを聞かされた。
なぜ長い間そのことを黙っていたのか。
母親はいまでも多くを語らないという。
(タチアナ・コルプスさん)
「母はサーミであることを隠して生きてきたのです。
サーミゆえのつらい思い出があるのでしょう。
昔のことは話したがりません。」
同化政策のなかで虐げられてきたサーミの人たち。
転機となったのは1989年
ノルウェー各地に散らばるサーミの人たちが集まり議会を設置したことだった。
「議会は一般に公開されています。
ライブカメラで生中継されます。」
議会ができたことでサーミの人たちは政府と対等な立場で交渉できるようになり
独自の文化を守る権利が法的にも認められた。
ノルウェー社会の一員としての地位を確立したサーミの人たち。
1994年のリレハンメルオリンピックでは
かつて公の場で禁じられていた歌を披露した。
サーミ議会の議長を務める アイリ・ケスキタロさんは
オリンピックの開催がノルウェー社会の多様性を世界に訴えるきっかけになったという。
(サーミ議会 アイリ・ケスキタロ議長)
「ノルウェーは単一文化・単一言語の国とされていたが
それは違った。
五輪はサーミの文化を目に見える形で世界に披露する場となった。」
その後もサーミ独自の文化や言語を取り戻す活動が各地で進められるようになった。
政府はサーミ語や伝統衣装の作り方などを学ぶ学校をサーミが多く暮らす地域を中心に整備。
インターネットを使った遠隔授業も行われ
受講した生徒には単位が与えられる。
「2018年はサーミ語で?」
「クオクテ・トゥハフ・ヤ・カウフツェヌプ・ロフカイ。」
ノルウェーの公共放送はサーミ語のニュースを全国放送。
多くの国民がサーミを身近に感じるようになったという。
(サーミ語アナウンサー)
「若い世代を代表してサーミ語を伝えられてうれしいわ。
サーミじゃない友だちもみんな『かっこいい』と言ってくれるの。」
こうした取り組みの結果
サーミであることに誇りを持つ若い世代が増えている。
母親からサーミであることを聞かされたタチアナさん。
最近 本格的にサーミ語の勉強を始め
サーミの人たちが集まるイベントにも積極的に参加するようになった。
(タチアナ・コルプスさん)
「自分がサーミだとわかったときは本当に戸惑いました。
サーミ語を勉強するのは大変ですが
失っていた自分のアイデンティティーを取り戻していると感じます。」
一方 日本では先住民族アイヌへの理解は進んでいない。
いまもアイヌの人が多く暮らす北海道平取町出身のMAYAさん(19)。
神奈川県の大学に通っている。
地元に暮らす祖母はアイヌ伝統の機織りをいまも受けついているが
アイヌ語で会話をする機会はほとんどない。
アイヌ語を本格的に学ぼうと思っても独学で勉強するしかないという。
(MAYAさん)
「自分の文化・言語をもっと知りたいという当たり前のことを私はできていない。
魅力がある文化・言語がなくなってしまうことはすごく悲しい。」
MAYAさんは11月に沖縄で開催されたシンポジウムに参加した。
テーマは「消滅の危機にある言語」である。
そこで出会ったのがサーミの代表として参加した15歳のサラ・カップフェルさん。
「ノルウェーでは誰でもサーミ学校でサーミ語を勉強できるの。」
ノルウェーの取り組みに衝撃を受けたMAYAさん。
日本でもより多くの人にアイヌのことを知ってほしいと願うようになった。
(MAYAさん)
「サーミ学校とか
やっぱりすごい。
アイヌ語を授業で教えてくれる人がいないので
独学とか知り合いに聞いたりして
アイヌ語を学びたい人が気軽に通えるようなところがあまりない。
素直に自分の文化を学びたい
自分の言語を学びたいというのが実現される社会にしていかないと。」
12月12日 キャッチ!ワールドEYES
中国系の老舗旅行会社が企画したツアーにこの日参加したのは合わせて250人。
その多くが中国からの観光客である。
映画の都ハリウッド。
歴史ある映画館やセレブの名前が刻まれた歩道などがあるロサンゼルスは
中国人旅行者にとってアメリカで人気ナンバーワンの観光地である。
去年は過去最多の106万人が訪れた。
(中国人旅行者)
「大国のアメリカにあこがれていました。
どんな所か見てみたかったのです。」
ところがいま異変が起きている。
2018年の5~9月にアメリカを訪れた中国人は2017年の同じ期間と比べ13%減ったのである。
この旅行会社でも今年の春以降
中国人の利用者は2017年と比べ毎月40%も減少している。
背景にあるのは
巨額の貿易赤字の解消を目指すアメリカの中国に対する厳しい政策である。
(トランプ大統領)
「中国は何年もの間アメリカを食い物にしてきた。」
こうしたトランプ政権の強硬姿勢を受けてか
中国政府が国民にアメリア行きをあまり推奨しなくなったことが
中国人旅行者の減少につながったと旅行会社は見ている。
(美国亜州旅行会社)
「中国人旅行者はこのところ劇的に減っています。
中国とアメリカの外交上の問題が何か関係しているのだと思います。」
アメリカを2017年に訪れた外国人7,760万人のうち
中国人は300万人。
その割合はわずか4%だが
観光業界が心配しているのは中国人旅行者の爆買いの減少である。
中国人の旅行者は滞在期間が長いこともあり
アメリカ国内で1人あたり6,900ドル(約80万円)を使う。
日本人 約50万円
イギリス人 約37万円
フランス人 約39万円
韓国人 約36万円
これは日本人らの旅行者と比べて圧倒的に多い金額である。
中国人旅行者が2017年アメリカに落としたお金は
合わせて331億ドル(約3兆7,000億円)と日本人の約2倍にのぼる。
そのためロサンゼルスの観光局は米中関係の推移を注意深く見ている。
(ロサンゼルス観光局)
「中国では旅行の行き先を決めるとき
その国が好意的にみられるかが大切です。
ですから米中関係を注意深く見守っています。」
そんななか米中の摩擦を横目にいま積極的に中国人旅行者を誘致しているのがカナダである。
カナダの観光局が製作したPR動画。
カナダ政府は2018年を中国人観光客を重点的に誘致する年して
雄大な自然を満喫できる体験やグルメをアピールしている。
美しい山に囲まれ去年30万人の中国人旅行者が訪れた西部のバンクーバーは
2018年 中国のIT企業テンセントと提携。
中国人を中心に10億人以上が使う中国のSNS「ウィーチャット」を使って
中国語のアプリを開発した。
(バンクーバー観光協会)
「中国の富裕層のカナダ旅行は増えています。
目的は美しい自然や健康的な体験です。」
バンクーバーにある中国語の語学学校では地元の観光関係者の申し込みが増えているという。
(中国語学校 マネージャー)
「カナダを訪れる中国人留学生や旅行者が増えているので
中国語ができればビジネスで大きなメリットになります。」
エステ店では中国語を話せるスタッフを配置。
さらにウィーチャットをフル活用して
富裕層の中国人の来店を毎月増やしている。
(エステ店 店長)
「ウィーチャットのおかげで順調です。
サービスが良ければ友人なども連れてきてくれます。
未来は明るいと思います。」
12月12日 おはよう日本
モモイロペリカンのカッタ君。
山口県宇部市のときわ公園でかつて放し飼いされていた人気ものである。
自由に飛びまわり
お気に入りの幼稚園に毎日通っていた。
子どもたちと遊ぶ姿が話題になり全国でも有名になった。
「はい 知ってます。
大きいんですけど
なんとなく愛くるしいというか。」
「かわいかったですよ。
宇部=カッタ君みたいな。」
カッタ君の名残りは宇部市のあちらこちらに。
死んでから10年経った今も地元に愛され続けている。
ときわ公園では
7年前に園内の黒鳥に鳥インフルエンザが見つかり
全ての鳥の放し飼いは禁止になった。
鳥と人間との直接的な触れ合いがなくなってしまった今
せめてその良さを語り継いでほしい。
公園では写真やメッセージなどを集めた企画展が開かれた。
(ときわ動物公園動物課)
「いまペリカンに触ったり触れ合ったりしていただくことはできませんが
懐かしんで思い出していただきたい。」
昭和60年 日本初の人工ふ化で生まれたカッタ君。
飼育員の手で育てられ
人によくなついていた。
昭和63年頃
ほかのペリカンは羽の一部を切られて飛べなくされていたが
カッタ君の羽だけは切られなかった。
当時 飼育にあたったときわ動物園の白須さんは
ペリカンが空を飛ぶ姿をみんなに見てほしいと考えていた。
その夢をカッタ君にたくしたという。
(カッタ君の育ての親 白須さん)
「カッタ君の場合は子どもたちに大変やさしかった。
羽を切らずに飛ばしても大丈夫だっていう思いがあったので
カッタ君の羽を切らずに飛ばしたわけですね。」
そして平成元年。
カッタ君は大空を舞った。
ペリカン島から自由に出掛けるようになったのである。
お気に入りは公園から800メートル離れた幼稚園だった。
明光幼稚園の山口先生。
カッタ君が初めて来たときのことを鮮明に覚えているという。
(明光幼稚園 山口先生)
「くちばしが子どもの目の高さなので
危ないということで線を引いて
“ここからは近寄っちゃだめ”としていましたが
毎日来ることで距離がどんどん近づいていって。」
カッタ君が好きだった曲「ぼくのミックスジュース」。
園児と一緒に歌ってくれたと山口先生は感じている。
当時この幼稚園の園児だった大束紀子さん。
いま子ども2人もこの幼稚園に通っている。
大束さんはカッタ君の存在がやさしい気持ちを育んでくれたと感じている。
(大束さん)
「動物に対して恐怖心無く育って
ちょっと大きい動物でも小さいときから近寄って触って温かみを感じていた。
動物はすごい今でも好きです。」
子どもたちの心を育んでくれたカッタ君。
しかし今そうした貴重な機会はなくなった。
世間の目が少しずつ厳しくなっていると感じているときわ公園の白須さん。
生き物と触れ合える機会をこれからも大切にしてほしいと願っている。
(カッタ君の育ての親 白須さん)
「時にはペリカンが子どもたちを傷つけたりすることもありました。
でもそれは大丈夫と
親が言って怒ることもなかった。
もう少し自然に触れ合うことのすばらしさを感じるようなことがあっていいと思うんです。
今からの子どもたちにそういう機会を
できれば大人の世界で作ってあげてほしいなと思います。」
多くの人の心に生き続けているカッタ君。
今の時代へのメッセージをそっと投げかけてくれている。
12月10日 キャッチ!ワールドEYES
現職のアーダーン首相が産休を取得するなど
ニュージーランドは仕事と私生活の両立が進んでいる国のひとつである。
ニュージーランド最大の都市オークランド。
従業員240人の資産や遺言などの信託を請け負う会社。
一見ふつうの職場に見えるがよく見るとところどころに空席が。
実はこの会社は11月から
生産性を落とさないことを条件に
従業員が希望すれば週休3日にできる制度を導入した。
社長のアンドリュー・バーンズさんは人間の集中力や生産性に関する記事から発想を得た。
(社長 アンドリュー・バーンズさん)
「雑談やインターネットの閲覧は時間の無駄です。
小さな無駄を洗い出して
時間ではなく賢く働く意識を持ち
休みを取って元気になれば従業員の生産性も上がります。」
ただニュージーランドでは週40時間の勤務が基本となっていて
これを下回れば給料が下がるため
週休3日で働く場合 1日の労働時間が長くなるのが一般的である。
このことに疑問を持たバーンズさん。
今年2月
週休3日で勤務時間も週32時間に減らすという制度を試験的に導入すると発表。
さらに生産性を落とさないことを条件に
給料を減らさないことを約束した。
(社長 アンドリュー・バーンズさん)
「席を温めても給料は支払いません。
週4日の勤務で週5日働く人と同じ労働成果をあげられるなら
同じ給料が支払われるべきです。
つまり考えかたの問題です。」
最初は戸惑いを見せた従業員たちも
私生活が充実したことで働き方にも変化があらわれたという。
(従業員)
「すばらしい制度です。
効率よく働き
生産性をあげたくなりました。」
従業員のひとり レイガン・スト―アーさん(32)。
制度が始まり働き方を見直してきた。
(従業員 レイガン・スト―アーさん)
「これまでの仕事を振り返り改善方法を探るきっかけになりました。」
毎朝その日の業務を書き出して
時間を決めて取り組み
机の上には携帯電話を置かないようにした。
これにより効率も集中力も上がったという。
同僚から会議に誘われたスト―アーさんが向かったのは時短を目的に作られた共有スペースである。
互いの距離が近い空間にしたことで意見を率直に交換しやすくなり
実際に会議の時間も短くなったという。
(従業員 レイガン・スト―アーさん)
「働き方や同僚とのやりとりが大きな違いを生みます。」
新しい働き方に慣れてきたスト―アーさん。
今のペースを維持するため週半ばの水曜日に休みを取っている。
楽しみにしているのはジョギングや海辺での散歩である。
これまでは疲れて動けない休日もあったが
休日が増えたことで身心ともに余裕ができたという。
(従業員 レイガン・スト―アーさん)
「元気を取り戻し
多くのことに挑戦できるようになりました。
週半ばの休みで切り替えることができ
さらに仕事に集中できます。」
(社長 アンドリュー・バーンズさん)
「授業員のやる気や生産性も高まり
それが私生活にも反映されています。
こうした状況をうれしく思います。」
人材管理の専門家は
効果的な結果が得られている背景には
労働を時間ではなく成果で評価し
報酬として休みを提供していることが大きいと指摘する。
(オークランド工科大学 ジャラッド・ハー教授)
「早く仕事を終えたら休みがもらえる。
満足な報酬を得ることでやる気も生まれます。
従業員が幸せになり
企業の生産性も上がる。
互いの利益になります。」
休みを報酬として生産性を高めようという試み。
ワークライフバランスを推し進める新たなカギとなるのか注目される。
専門家の調査では試験導入の際に課題がいくつか確認された。
仕事を週4日で終わらせるのが難しく
結局 週に3日も休めなかった人が何人かいたということである。
また働いている人が少ない日に病気などで休む人が出ると
負担が一気に増えたということである。
事前の引継ぎをしっかりと行なうなど
業務に支障が出ないよう
職場での情報共有と連携をどのように高められるかが問われる。
休みが増えたことで私生活に対する満足度は高まり
ワークライフバランスの実現具合は平均して78%と
試験導入前より24ポイント上がっていて
全体としてはおおむね従業員からは好評と言えるとしている。
現在 利用者は約40%ほどだが
申請が増えていて
クリスマスまでには80%ほどになりそうだということである。
生産性を落とさないという条件を全員が満たせるかは難しいため
11月の本格導入にあたり制度を選択制にしたということである。
人によって仕事のスピードは異なり
働き方に満足している人もいる。
制度を押しつけるのではなく
従業員が自分に合った働き方を選べることも上手く運用できている理由になっている。
さらに制度を利用しやすいように柔軟性も持たせている。
たとえば
丸1日休む代わりに半休を2回取得したり
時短に変更も可能である。
特に時短への振り替えは子育て中の従業員を中心に好評ということである。
子育てと仕事の両立を目指す人が増えるなか
女性の労働力を確保する上でもこの制度は大きな可能性を秘めている。
この会社はこれまでに約40か国のメディアで取り上げられ
各国の企業からも問い合わせが寄せられているということである。
しかし一定のスピードで生産を行なう工場やコールセンターの従業員など
勤務時間と業務が密接に関わっている職種がある。
また生産性を重視するあまり質が損なわれる懸念もある。
こうした課題をどのようにカバーできるかが
制度を普及させるうえでのカギとなる。
12月9日 国際報道2018
国土の半分以上が砂漠で
水資源が乏しいイスラエル。
いま収穫のピークを迎えているのがアボカドの農場である。
多くが外国に輸出されている。
競争力を高めるために欠かせないのが
栽培に必要な水と
肥料にかかるコストの効率化である。
そこでこの農場が導入したのがAI(人工知能)による栽培システムである。
土の中の水分や養分を24時間監視。
最新の気象情報と過去の栽培データをふまえて
AIがベストなタイミングで最適な量の水と肥料を供給する。
(農場主)
「新しい農業システムのおかげで
水を20%も節約できるようになりました。」
こうしたハイテク農業の土台なっているのが軍事技術である。
イスラエルのミサイル防衛アイアンドーム。
ハマスが発射するロケット弾を迎撃するため各地に配備されている。
隣接するガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの衝突を繰り返してきたイスラエル。
11月にはガザ地区から500発近いロケット弾による攻撃を受けた。
発射されてから着弾まで短いときは20秒の猶予しかない。
これに対抗したのがアイアンドーム。
被害を与える可能性があるロケット弾を瞬時に選びだし
合わせて100発を撃ち落とした。
AIがロケット弾が発射された瞬間にさまざまなデータを解析し
迎撃命令を出しているのである。
アイアンドームの命中率は90%を誇る。
この高い技術に着目したのがイスラエルの農業メーカーである。
長年蓄積されたさまざまな栽培データと
紛争で培ったシステム技術を融合できないかと考えたのである。
(軍事技術を農業に転用したメーカー)
「新開発のためもっとも正確なシステム技術を探し
イスラエルの軍事技術に行き当たりました。
それがアイアンドームの開発企業で
われわれは農業用への転用を願い出ました。」
3年間に及ぶ共同開発が実りようやく製品が完成。
この秋からは外国でも利用が始まり
日本の茶畑にも導入されている。
イスラエルからはシステムを通じて各国の農場の様子をつぶさにモニタリングしている。
南米ペルーのサトウキビ農場や
中国やインドなど世界11カ国の合わせて30か所に出荷され
すべり出しは上々だという。
(軍事技術を農業に転用したメーカー)
「イスラエルならではのイノベーションを生かして
軍事技術を転用し農業技術を向上できました。
この技術は農業にとって革命的なものです。
世界にどんどん広げていきたいです。」
イスラエルは軍事技術を民間に転用しハイテク製品を生み出すことを得意としていて
“中東のシリコンバレー”との呼ばれている。
12月8日 おはよう日本
福岡市にある福岡市動植物園。
平日にもかかわらず多くの人が訪れている。
皆さんのお目当ての動物はどんな動物なのか。
「食いついて
遠心力でくるくる回るみたいな。」
「こんな感じでぶんぶんぶん!
つかまりながら遊んでた!」
その正体はカワウソ。
上からつるされた小さなひもを小さな口でくわえて
体を自由自在に回している。
子どもたちもぐるぐると回り続けるカワウソの姿にくぎ付け。
この動物園で飼育されているのはコヅメカワウソの家族。
家族は8匹。
その中で目をひいたのはオスのげんた(5)である。
家族の中でも最も早くそして美しく回ると言われている。
豪快な回転は“ダイナミック・トルネード”と名付けられ
これを見ようとたくさんの人が訪れる。
ロープを使った大回転は飼育員のふと思いついたアイデアがきっかけである。
(福岡市動植物園 飼育員)
「掃除中にホースを持って入るんですけど
それによくじゃれついて遊んでいったっていう様子を見て
ロープを垂らしてみたらどうだろうって。」
ロープに最初に食いついたのは母親のリラ。
その様子を見た子どもたちが次々とまねをするようになった。
げんたもロープを加えるが始めはなかなか回ることができなかった。
「最初は噛むことも上手じゃなくて
回っている途中で振り落とされたりとか。」
げんたの激しい回転を支えるのは長いキバ。
肉食でエサとなるトリの骨もかみ砕く。
この長いキバと強いあごによって5キロの体を支えることができる。
回転はカワウソの生態と深い関係があるという。
(飼育員)
「水中で魚を捕まえて
体をひねって相手を弱らせるとか
そういう動き自体は持っていた。
その動きを組み合わせて遊びにしてしまった。」
美しく回転するげんたには人をひきつける魅力があるという。
(飼育員)
「オスらしい姿だと思います。
体つきも太り過ぎることなく
筋肉もうっすらと浮いて
イケメンだと思います。」
12月7日 編集手帳
本紙の記事データベースに「貴」「大相撲」と入力してみた。
二つの語を併せ持つ記事は過去10年で約2300件だが、
うち約500件はこの1年である。
九州場所の貴景勝の優勝をのぞけば、
土俵外の話題であったことは言うまでもない。
去年の今頃は貴ノ岩を被害者とする暴行事件で大騒ぎだった。
横綱・日馬富士が引退に追い込まれ、
協会の調査が本格化し、
そこから貴乃花親方の登場が増えていく。
調査に協力しないと発言して波紋を広げ、
このあとは理事選に、
春場所の無断欠勤に、
貴公俊による付け人への暴行問題…。
それで終わりではなかった。
親方は夏、
一門から離脱し、
秋に協会を退職し弟子たちは部屋を移った。
そして季節が一周したこの冬、
貴ノ岩の暴行事件である。
付け人の言い訳に怒り顔が腫れるほど殴ったという。
「お前がやるか」という見出しで報じたスポーツ紙があった。
これほど世間の驚きを代弁する表現はあるまい。
「貴」と聞けば、
元親方や先代の名勝負を真っ先に浮かべたのはいつ頃までだろう。
もっと大事にしていただきたい。
相撲ファンの多くに今も大切な一字である。
12月6日 編集手帳
昔いやいや勉強した物理学を思い出す。
「場から受ける力」という現象があって、
重力だの、
磁力だのであったと思う。
今秋の東京・渋谷でのハロウィーン騒動のおり、
たびたび頭をかすめた。
仮装大会のような<場>から受ける<魔力>だろうかと。
まさかふだんから軽トラックを横倒しにし、
踏みつけて楽しむ趣味のある人たちではあるまい。
暴力行為等処罰法違反(集団的器物損壊)容疑で男4人が逮捕された。
みんな若い。
職業・年齢は会社員(20)、
とび職(27)、
土建業(22)、
美容師(20)と発表された。
防犯カメラの映像から悪質行為に及んだ者を特定したという。
警察車両の後部座席に乗せられ、
おどおどする若者をテレビで見た。
古い言い回しで恐縮だが、
髪形や服装もいたって普通で愚連(ぐれん)隊のような雰囲気はない。
いまごろ刑事さんにこってりと絞られ、
一夜のハメはずしを悔やんでいることだろう。
仮装大会ぐらいで人生を傷つけるのはあまりに悲しい。
と思えば、
一夜明けた<場>には、
散乱する酒ビンやごみを拾いに駆けつけるボランティアの若者たちがいる。
この<力>には感心してやまない。
12月6日 おはよう日本
クラッシュドアイスは20年ほど前にスウェーデンで始まった。
4人が一斉にスタートし
氷でつくられた
高低差約20m
長さ約350mのコースを一気に滑り降りる。
最高時速80キロ。
ぶつかり合いながらゴールを目指す。
そのスリリングさでアメリカやカナダで人気である。
日本では初めて大会が開かれ
その大会の結果で将来進む道を決めようと意気込んでいるアスリートがいる。
横浜市内の公園に作られたコースの下見に訪れた
佐藤つば冴選手(25)。
今回初めてクラッシュドアイスに出場する。
実は佐藤選手はアイスホッケーのクラブチームに所属しながらこの大会に出場する。
(佐藤つば冴選手)
「ホッケーでもやっているのでぶつかり合いに関しては全然怖くない。
むしろ“やったろう”ぐらいの勢い。
自分のチャンスを広げるというのもいいかなと考えている。」
長野県の軽井沢で生まれ育った佐藤選手。
10歳からアイスホッケーを始め
目標はオリンピックに出ること。
常に生活の中心にアイスホッケーがあった。
ただ日本代表に呼ばれることはなく
平昌オリンピックに出場することはなかった。
(佐藤つば冴選手)
「年齢的に選ばれていないといけないのに全然代表の声がかからなかったので
ちょっとまずいなと。
アイスホッケーだけでやっていくとなるときつい面もある。
少しずつ他のものにシフトチェンジするのもありなのかと。」
そんな時出会ったのがクラッシュドアイス。
関係者に招待され見に行った大会で
そのスピード感に一気に引き込まれた。
もしかするとアイスホッケーに代わる存在になるかもしれない。
大会に向けて取り組んでいるのはインラインスケートである。
クラッシュドアイスのコースは平坦なアイスホッケーと違い
起伏が多い。
バランスをとるために膝を曲げ伸ばしすることが必要となってくる。
長いときは1日4時間練習して
その動きを体に覚え込ませている。
(佐藤つば冴選手)
「全く未知の世界なので全部刺激的。
新しいことにチャレンジすることが楽しいという感覚でいっぱい。」
クラッシュドアイスで自分の可能性を広げたい。
強い気持ちを持って大会にのぞむ。
(佐藤つば冴選手)
「初めての大会なので
どうなるかわからない状態。
緊張もするけれど
やることはやってきているので
あとは楽しむだけ。」
12月6日 おはよう日本
長野県内では以前からシードルが造られてきたが
さらに広がりを見せている。
10月 南信州を走るJR飯田線で特別な列車が運行された。
りんごで造ったお酒
シードルを楽しむ“シードル列車”である。
「おいしい。」
「おいしいです。
最高だ。」
地元のりんご農家などが初めて企画し
県内外からおよそ40人が乗車した。
りんごの栽培が盛んな長野県松川町。
シードル列車を企画したひとり
りんご農家の竹村暢子さん。
24年前りんご栽培に携わるようになった竹村さん。
りんごを買う人の客層の変化に今後への不安を感じている。
(りんご農家 竹村暢子さん)
「りんごの購入者はご年配の方が多いというのは感じる。
40代50代だった方たちが今は70代ぐらいになっていて一番多い。」
国の家計調査では客層の高齢化がはっきりと示されている。
りんごの年間購入量を世帯主の年代別にみると
70歳以上の世帯では20,8㎏。
29歳以下では10分の1の1,9㎏と
若くなればなるほどりんごを買わなくなっているのである。
若い世代にどうやってりんごに親しんでもらうか。
竹村さんが目を付けたのがシードルだった。
シードルはしぼったりんごに酵母を加えて発酵させたお酒。
ワインに比べてアルコール度数は低めで
さわやかな香りとすっきりした甘さが特徴である。
竹村さんは3年前から自宅近くのワイナリーに委託してシードルを造っている。
この日は今年の仕込みの相談に訪れた。
(醸造の担当者)
「今年は何を持ってきますか?」
「王林とシナノゴールド。
ふじがとれしだい入れてもらいたい。」
販売を始めてから竹村さんはシードルが持つ大きな可能性を実感したという。
リンゴジュースの3倍の値段でも売れるうえ
保存がきくため1年を通じて流通させることができる。
さらに台風などで傷ついたりんごの活用にもつながった。
(竹村暢子さん)
「すれちゃって贈答や発送には使えないので加工用になってしまう。」
傷がついてしまったりんごでもシードルにすることで新たな価値が付けられるのである。
精魂込めて育てたりんごを使ったシードルを多くの人に知ってもらいたい。
そこで竹村さんが仲間の農家と一緒に企画したのがシードル列車だった。
用意したのはいずれも県南部で造られた15種類のシードル。
竹村さんも自ら造ったシードルの味の特徴や
使っているりんごの種類を直接説明して回った。
「透明感のある味わい深いものに仕上がっています。」
(参加者)
「初めてシードルをのんだので
いろんな味を飲めてすごく良かった。」
「生で食べても美味しいけれど
お酒になるともっともっとおいしくなる。
どっちも味わいたいと思う。」
(竹村暢子さん)
「おいしいりんごの産地にプラスしておいしいシードルの産地でもあると
どんどん輪が広がっていけばいい。
どんな形でもいいので
りんごを食べてもらい
りんごを好きになってもらいたい。」
12月6日 おはよう日本
高松市にあるホテルのカフェ。
ここで試験的に導入を始めたのが
トウモロコシなどが原料で自然の中で分解される“生分解性”のプラスチックで作られているストロー。
使い心地は従来の石油などを原料としたストローとほとんど変わらない。
このストローの導入を決めたホテルを経営する会社は
ほかにも高速道路のサービスエリアなどの運営を手掛けていて
年間4万6,000本余のストローを使っている。
特にサービスエリアが提供したストローが外で捨てられる可能性があるとして
今年度中に新しい素材のものに切り替えていくことにしている。
(穴吹エンタープライズ施設・購買部)
「ストローをそのままお客さんに渡したら回収できなくなってしまうので
少しでも環境に役立つことができればというような提案で採用することに決めた。」
プラスチックゴミの削減が課題となっている背景には海洋汚染への懸念がある。
石油などの化石燃料から作られるプラスチックは自然界では分解できない。
このため
棄てられたレジ袋やストローなどのプラスチックごみが海を漂い
海洋生物が誤って飲み込む被害が世界各地で起きている。
特に問題になっているのは
プラスチックのゴミが海を漂流している間に直径5ミリ以下に砕けたマイクロプラスチックである。
マイクロプラスチックは魚などの体内に入ってしまうこともあり
海の生態系や魚などを食べる人への影響も懸念されている。
こうしたことから自然の中で分解される素材を使ったプラスチック製品を使う動きが広がっている。
鹿児島県の焼酎の原料にサツマイモの畑に使われている農業用のフィルム。
シートを指で押してみると簡単に破れ
分解が始まっていることがわかる。
農業用フィルムは5月にサツマイモの苗の植え付けに合わせて
保温や保湿などを目的に畑に敷かれた。
約半年後の秋にサツマイモが収穫される頃に合わせて分解が始まるよう
メーカーでは素材の作り方を調整しているということである。
農家や従来
農業用フィルムを剥がしてからイモを収穫していたが
新しい素材のものはそのままにしておけば畑で分解されるので剥がす手間も省けた。
(サツマイモ農家)
「収量も全然遜色ない。
環境にやさしいと省力化が主な目的。
我々が導入したのは。」
この農業用フィルムを開発した香川県丸亀市に本社を置くプラスチック加工メーカーの熊本市の工場。
現在は
従来の石油などを原料にした農業用のフィルム生産がほとんどを占めているが
メーカーでは自然の中で分解される素材を使ったものの需要は
今後 年に10%ほど伸びていくと見込んでいる。
(大倉工業 社長)
「今ようやくそういうもの(生分解性の製品)が市場で認知をしていただけるようになった。
今後 環境負荷の低減に貢献できるというところを
1つのビジネスのチャンスにしていきたい。」
プラスチックゴミを削減する動きが急速に進むなか
自然の中で分解される素材を使った製品を取り入れる動きは
今後さらに加速しそうである。
12月5日 国際報道2018
ムスリム漫画。
イスラム圏を舞台にしたりイスラム教徒の生活などを題材にした漫画の総称である。
今年話題になった「サトコとナダ」。
日本人女性が留学先でルームメートになったイスラム教徒の女性との交流を描いたもので
宝島社「このマンガがすごい!2018」オンナ編第3位。
11月に都内で開かれたムスリム漫画をテーマにしたイベント。
漫画を通してイスラム教について知ってもらおうと開催されたもので
国内外の漫画家の作品が展示された。
(来場者)
「コーランについて描かれた漫画があったが
読んでみたいと思いました。」
「思ったより日本の漫画寄りで
すごく親しみやすい。
ぜひ日本語に翻訳して
日本の人に見てほしい。」
イベントで講演したイラン出身のハメド・ヌリさん(27)。
去年来日し
都内の高校で英語を教えるかたわらムスリム漫画を描いている。
(ハメド・ヌリさん)
「私の好きな漫画を通じてイスラム教徒と国際社会の橋渡しをしたかったのです。」
ハメドさんがインターネットで発表した作品「花と花の愛」。
舞台は日本の高校である。
恋愛に縁のなかった女子高校生の 花。
偶然すれ違った男子生徒に一目ぼれする。
ある日の昼休み
ひとり教室を出て行った彼。
友だちに背中を押され
花は彼に声をかけようと後を追う。
するとそこで目にしたのは素足になり礼拝する彼の姿だった。
彼は日本人とインドネシア人の両親のもとに生まれたイスラム教徒だったのである。
「えっと・・・何・・・やってたの?
お祈り?」
「うん
毎日しているよ。
1日5回。」
「5回?
そんなにたくさん?」
「1日に5回も自分を見つめる機会があるのはいいことだと思うよ。」
「わぁ
それってすごいね!」
彼に心惹かれていく花。
それと同時にイスラム教に関心を持っていく。
「今度お祈りのことについてもっと教えてほしいな。」
「もちろんだよ 花さん。」
(ハメド・ヌリさん)
「花が彼を知るのと同じように
日本の読者がイスラム教徒を理解できるようにしています。」
ハメドさんがムスリム漫画を描くようになったのは
高校時代を過ごしたアメリカで投げかけられた心ない言葉がきっかけだった。
(ハメド・ヌリさん)
「高校時代に同級生から“テロリスト”と呼ばれたんです。
精神的にとても傷つきました。
イスラム教徒に対する誤解や偏見があふれているんです。」
どうすればイスラム教徒のことを正しく知ってもらえるのか。
考えた末にたどり着いたのが
幼いころから親しんできた漫画だったのである。
(ハメド・ヌリさん)
「漫画の力によってアメリカ人が日本の文化や言葉に関心を持ったように
ムスリム漫画を読んだ日本の人にもイスラム教に関心を持ってもらえるはずです。」
ハメドさんはいま自ら漫画を描くだけでなく
さまざまなムスリム漫画を集めたウェブサイトの運営を行なっている。
掲載されているのは
コーランの教えをストーリー仕立てで描いたものや
断食の意味や目的を分かりやすく伝えるものなど
50作品以上。
読者も世界20カ国以上に広がっているという。
(ハメド・ヌリさん)
「ほかの才能ある人を応援することによって
イスラム教との肯定的なイメージや価値観を伝えられたらいいと思います。」
12月4日 キャッチ!ワールドEYES
日本のアニメの世界全体の売り上げは
リーマンショックの影響で一時落ち込んだがその後堅調に拡大し
一昨年 初めて2兆円を超えた。
海外だけでも7,500億円超にのぼっている。
日本のアニメが高い人気を誇る国としてはアメリカやフランスなどがあるが
実は南米でもファンが多く
ペルーでは自分の子どもにアニメキャラクターの名前をつける人までいる。
11月3日 南米ペルーで開かれた南米最大のアニメイベント。
このイベントは毎年開かれ
今年で11回目。
回を追うごとに参加者が増加し今年は延べ10万人が訪れた。
会場ではコスプレをしているファンが目立つが
特に人気があるのが日本のアニメのキャラクターである。
(来場者)
「日本のアニメが好きでドラゴンボールのファンです。」
「日本のアニメはすごくカッコいいです。
ストーリーもオリジナリティーがあります。」
ペルーのアニメファンが多い理由は
1970年代後半から繰り返されるテレビの再放送である。
また1990年に日系人初のフジモリ大統領が就任したことも
日本のアニメが浸透したことに一役買ったと言われている。
リマに暮らす熱狂的なアニメファンの1人。
企業のM&Aを手掛ける国際弁護士をしているホルヘ・フロレスさん(37)。
フロレスさんがお気に入りのアニメは日本でも人気がある「聖闘士星矢(セイントセイヤ)」である。
「聖闘士星矢」は1980年代半ば~90年にかけて日本のマンガ雑誌に連載された。
コミックは3,500万部以上売り上げている。
ギリシャ神話をモチーフにした物語で
星座をイメージした鎧をまとった登場人物が特徴である。
テレビ版のアニメは1980年代後半から世界中で繰り返し放送されている。
フロレスさんも5歳のとき初めてテレビで見て大好きになったと言う。
(ホルヘ・フロレスさん)
「聖闘士星矢は昔から愛されているアニメで
魅力的な要素がたくさんあります。」
人形や本 ゲームなどを集める傍らファンクラブを起ち上げたフロレスさん。
2年前にはコレクションを披露するため自宅を博物館に改装。
6,000を超える聖闘士星矢のグッズの価値は5,000万円にのぼり
アイテムの数はギネスの世界記録にも認定された。
この日フロレスさん宅を訪ねたのはガールフレンドのクリスタル・ガルシアさん。
デートのときガルシアさんは聖闘士星矢のメインのキャラクターの1人
沙織のコスプレをすることが多いという。
沙織はキャラクターデザインの美しさに加え名前がスペイン語で発音しやすいこともあり
ペルーでは非常に人気がある。
(クリスタル・ガルシアさん)
「彼のグループが主催するコンテストで初めて沙織のコスプレをしました。」
さらには聖闘士星矢が好きすぎてこんな人も出てきている。
リマの郊外でタクシーの運転手をしているアレハンドロ・メンドーサさん。
メンドーサさんには2人の子どもがいるが
長女の名前は「さおり」である。
(アレハンドロ・メンドーサさん)
「物心ついたときから沙織のファンで
彼女の名前を子どもにつけるのが夢でした。」
妻のアルサラさんも聖闘士星矢の大ファン。
「さおり」という名前をつけるのには大賛成だった。
フジモリ元大統領の支持者でもともと日本的な名前に魅力を感じていたそうである。
(アルサラさん)
「小さいころから聖闘士星矢を見ていました。
子どもの名前をさおりに決めたとき
美しくてすばらしい名前だと思いました。」
メンドーサさん夫婦は
さおりさんにはアニメのキャラクターのように
地球とすべての生き物を愛する人になってほしいという。
実はペルーでは近年
自分の子どもに日本のアニメのキャラクターの名前をつけるのが流行っている。
ペルーの名前に詳しい人は
(政府系シンクタンク 文化研究の調査官)
「ペルーの人は場所や食べ物など好きなものを子どもに名付ける傾向があります。
ですからアニメのキャラクターの名前をつけることは珍しいことではありません。」
政府が行った調査では
ペルー国内に「さおり」という名前の人が6,000人以上いることがわかった。
ファンクラブの会長としてその活動にも力を入れているフロレスさん。
週に1回はメンバーを集めて意見交換を行っている。
いま取り組んでいるのが
ペルー文化を生かした独自の聖闘士星矢のキャラクターを考案して仲間内で発表すること。
それを新聞やフェイスブックを通して南米全体に向けて発信し
ファンの輪をペルーから広げていきたいと考えている。
(ホルヘ・フロレスさん)
「聖闘士星矢に込められたメッセージをこれからも広めていきたいです。
このアニメには隣人愛などすばらしい価値観が込められていますから。」
12月4日 編集手帳
志賀直哉はピリピリした神経質な性格だった。
親友の武者小路実篤の突き抜けた無頓着がうらやましかったらしく「武者は私をいつも反省させる」と書いている。
実篤は歩いた道に羽織を寝そべらせることがあった。
考えごとをしながら歩くのか、
羽織が肩からずれ落ちていくことに気づかなかったという。
昔から言うところのボーっとした人だろう。
今年の新語・流行語大賞の10傑にチコちゃんの「ボーっと生きてんじゃねーよ!」が選ばれた。
長く武者小路さんを基準にしてきた身には番組を見ていて5歳の子の一喝にたじたじとなる。
彼女はご存じNHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』の主役である。
クイズ形式で身の回りの疑問を投げかけ、
浅はかな答えに終始すると、
先のセリフで解答者を追い込む。
スマホを携帯し、
たくさんの情報に接するも深く考えることはないし、
しようと思っても時間が足りなかったりする。
言われてうれしい言葉ではないにもかかわらず、
共感を呼ぶのは広すぎる情報の海に暮らすゆえだろう。
それが幸せなことなのかどうか。
考えているうちに、
ボーっとしてしまった。