3月26日 おはよう日本
アメリカではIT企業を中心に人材獲得競争が激しくなっていることもあって
あの手この手の福利厚生が広がっている。
AIを使った広告サービスを提供している会社。
ペット同伴で仕事をすることができる。
この会社は毎日10匹以上の犬が出勤している。
福利厚生の一環としてペットの同伴を認めている。
(社員)
「ストレスがたまると犬と遊んだりするのよ。」
お金をかけずに福利厚生を充実させ
優秀な人材を確保する狙いがある。
(ガムガム フィル・シュレーダー社長)
「ペット同伴を認めることで会社の良さを伝えられる。
他社と差別化が図れる。」
驚くような育児休暇制度も登場している。
アマゾンドットコムは
社員の配偶者が別の会社に勤め育児休暇制度がない場合には配偶者の給料も支払ってくれる。
海外旅行の費用を負担する会社も。
ソフトウェア会社のエピックは
訪問先が初めての国だった場合旅費を補助する制度を設けている。
広がる福利厚生。
この流れをとらえようとするビジネスも現れた。
それはガソリンの配達。
会社の駐車場に出向き社員が働いている間に給油をするサービスである。
このサービスを利用しているテネシー州の会計事務所。
1人月々約1,800円の会費を会社が福利厚生として負担している。
(会計事務所の社員)
「本当に便利。
給油しなければと考えなくてもいいのよ。」
このサービスを行っている会社の名前はYOSHI。
日本語の “よし行くぞ!”が気に入った創業者が命名した。
ガソリンの配達だけでなく洗車やオイル交換も行う。
通勤には車が欠かせないアメリカ。
走る距離も長いのでガソリンスタンドで頻繁に給油しなければならない。
この時間と手間を省くことが“新たなビジネスになる”とこの会社は考えたのである。
福利厚生に力を入れる企業が増えていることから事業は急拡大。
創業わずか4年だが現在全米20都市でサービスを展開している。
(ヨシ 共同創業者 府ブライアン・フリスト社長)
「特徴ある福利厚生を企業は導入している。
もっとも大事なのは従業員の時間だよ。
取り返しようがないからね。」
働く人の満足感をどこまで高められるのか。
企業の工夫が人材獲得の成功につながる時代になっている。
3月24日 編集手帳
大阪では時々<売りたいおじさんの底力>が込められた、
強烈な宣伝を見かける。
作家の中島らもさんが『西方冗土』(集英社文庫)で紹介している。
「当方明治三十八年生まれ。
余った命。
だから安い!」(表札屋の貼り紙)、
「シングル百八十円、
ダブル三百円、
サブル四百五十円」(イカ焼き屋のメニュー)…。
大きさ3倍がなぜトリプルでなくサブルなのか。
謎の造語は、
けれども頭にこびりつく。
「おいしいタコヤキ、
二百円でどやっ!?」。
らもさんは屋台の貼り紙に仰天したという。
どやっ!?と問われたら素通りできない。
買うか否か、
いやでも<答えを自分の中で出さねばならない>
統一地方選では大阪の有権者が迫られている。
「大阪都構想、どやっ!?」。
今後4年の街の行方を決める選挙だ。
教育とか福祉とか聞きたい策は様々あるだろう。
二者択一の「どやっ!?」は耳に響くが、
心にはどうか。
惑う人も多かろう。
さる会合で京都の学者さんが含み笑いで曰いわく
「実現したら1府1道2都43県に変わりますなぁ」。
実際は大阪府の名は今のまま変更なしとか。
単純な訴えと裏腹、
そこはややこしい。
3月23日 おはよう日本
ショッピングっセンターに並ぶ女性たち。
彼女たちは家事や育児の担い手としてやって来た外国人労働者 メイドである。
休日ともなると母国の家族への送金でごった返す。
シンガポールの人口は560万人。
その4%にあたる25万人がフィリピンやインドネシアなどから来たメイドである。
彼女たちの給料はひと月4万円~6万円程度。
母国の何倍も稼げるとあって多くの人が働きに来ている。
シンガポールではメイドを雇い主に紹介する仕組みが発達している。
仕事を見つけるにはまずメイド専門の紹介会社に登録する。
ある会社では1年間に700件の契約が成立した。
端末には名前や出身国仕事のスキルなどを掲載する。
英語で自己紹介の動画も撮影し人柄や語学力をアピールする。
(フィリピン人メイド)
「夫はおらず私1人で子どもを支えているのでより高い給料が欲しいです。」
メイドを雇っている共働き夫婦の家庭。
小学校と幼稚園に通う3人の子育ての真っ最中である。
(メイドの雇い主)
「メイドがいるおかげで
子どもたちと会話をするなど
子どもと一緒に過ごし向き合う時間が多く持てるようになっています。」
共働きが多いシンガポールでは6世帯に1世帯がメイドを雇っていると言われている。
この家で雇っているのはミャンマー人のメイド。
炊事 洗濯 掃除など家事全般を任せている。
(ミャンマー人メイド)
「シンガポールは安全なので来ました。
雇い主はとても親切です。」
外国人のメイドを積極的に受け入れてきたシンガポール。
受け入れにあたっては政府が厳しいルールを設けている。
メイドは母国から家族を呼び寄せることができない。
シンガポールでの結婚や出産も厳しく制限されている。
さらに定住はできない。
社会に根付いている外国人のメイドだが深刻な問題も起きている。
メイドの相談を受けているNGO。
給料の不払いや雇い主による暴力など様々な問題が持ち込まれる。
(相談者)
「身近に信頼できる人が欲しいです。」
メイドをめぐる問題は家庭という閉鎖的な空間で起きるため発覚しにくいのである。
一昨年 雇い主からの暴力で足にけがをしたと言う女性。
(被害を受けた女性)
「私の荷物をすべてトイレに投げ入れられ部屋に閉じ込められました。
こちらの話も聞かず怒鳴り続けられ
心の傷となっています。」
NGOではこうした被害を防ぐためにはメイドの権利を守る制度が必要だと考えている。
(NGO担当者)
「メイドを守るためのガイドラインはありますが不十分で
メイドたちの立場は弱いです。
労働者と雇用者の双方が納得できる社会にしないといけません。」
外国人材の受け入れが進んでいるシンガポール。
人手の確保と労働者の保護をどう両立させるか
難しい課題が浮かび上がっている。
3月20日 国際報道2019
今や世界の音楽市場トップのジャンルとなったR&B・ヒップホップ。
その本場アメリカで
アジア出身のアーティストを次々とヒットさせている注目のプロデューサーがいる。
アジア系アメリカ人のショーン・ミヤシロさん。
これまでアジア人が成功することは難しいとされてきたこのジャンルで
新たな才能を発掘し続けている。
今年初めの東京のライブハウス。
日本だけでなくアジア各国からおよそ2,400人の若者たちが集まった。
ステージに登場したのは世界を席巻するアジアのアーティストたちである。
主催したのはアメリカ拠点のレーベル
88RISING。
このレーベルのCEOがプロデューサーのショーン・ミヤシロさん(37)である。
「良い作品を作ることでステレオタイプを打破したいんだ。」
日本人の父親と韓国人の母親のもと
アメリカ カリフォルニア州で生まれ育ったショーンさん。
幼い頃から親しんできたのがヒップホップだった。
しかしアメリカのエンターテインメント業界でのアジア人の扱いには違和感を抱いてきたという。
(プロデューサー ショーン・ミヤシロさん)
「アメリカで育ったが
子どものころから
ジャッキー・チェンが出てくるまではアジア人の顔をテレビで見たことはなかった。
若者たちが共感できるようなアジアのアーティストや俳優もいなかった。
私はアジアには多種多様な才能ある人たちがいることを世界に伝えたいと思っている。」
2016年 ショーンさんはニューヨークを拠点に
アジアのアーティストを発掘しプロデュースするベンチャー企業を起ち上げる。
すると手掛けたアーティストたちは
インターネットを通じて瞬く間に世界中のj若者たちに拡散され
大ヒット。
YouTubeの登録者数も急激に数を伸ばしていった。
レーベルとして初めてプロデュースしたのがインドネシア人のラッパー
リッチ・ブライアン(19)。
代表曲「Dat$tick」では若者目線で自身が住むジャカルタに蔓延する経済格差を綴っている。
コカインをやる人々は食べ物を求め殺し合ってる
アジアの現実を歌うこの動画は再生回数1億回を超えるヒットとなっている。
さらに注目のアーティストが中国拠点のヒップホップグループ
ハイヤー・ブラザーズ。
中国の若者たちの率直な思いを綴った歌が次々ヒットしている。
「WeChat」
俺らの国にはスカイプもフェイスブックもツイッターもインスタグラムもない
だからWeChatを使うんだ
(マ シウェイ)
「自分のやりたいことをやって
それが認められるのはうれしい。
誰かの模範でありたいと思ってはいないが
ありのままの自分を表現し続けることができるように
もっと高みを目指したい。」
若者たちのシンボル的存在を次々に生み出すショーンさん。
音楽によって世界へのアジア人の存在感を高めていくことが
自らの使命だと考えている。
(プロデューサー ショーン・ミヤシロさん)
「今やデジタル世代の人たちはどんな壁も簡単に飛び越えることができる。
私たちはカンフーをやる人間ではない。
かっこいい音楽を作っているんだ。
その音楽でアジア人はかっこいいということを体現したい。」
3月19日 おはよう日本
平成の時代には
人口減少が進む地域で
プロスポーツを中心に地元を活性化しようという取り組みが各地で生まれた。
その典型的な事例が鹿島アントラーズ。
茨城県の人口7万人の町に
平均2万人の観客を集めるクラブである。
Jリーグ発足とともに設立され
これまでリーグ最多の20のjタイトルを獲得してきた。
(サポーター)
「地元の誇り。」
「アントラーズあっての鹿嶋市。」
鹿嶋市は昭和40年代に工業都市として開発された。
しかし娯楽施設がなく若者の流出が課題となっていた。
クラブ設立の中心メンバーの1人 平野勝哉さん。
Jリーグのクラブを作ることで街に賑わいを生み出したいと考えた。
(元クラブ職員 平野勝哉さん)
「当時の鹿島の町のたたずまいは日没 即夜中。
スポーツを通じて地域が盛り上がる
その可能性にかけた。」
Jリーグが重視したのが当時珍しかった地域密着の理念。
平野さんたちはまずスタジアムの清掃や駐車場の管理などを地元の住民に任せ
クラブの運営に巻き込んだ。
元ブラジル代表のスーパースター ジーコ選手もその手本を示した。
練習の合間にはサポーターと積極的に交流。
海外では当たり前に行っていたファンサービスをチームに根付かせたのである。
(鹿島アントラーズ ジーコさん)
「私には周りの選手にファンサービスの大切さを伝える大きな責任があった。
関係が良くなればサポーターが増える。
サポーターが増えれば選手のモチベーションとクラブの収入が増える。
すべてがつながっている。」
地域に密着しながら強いチームであり続けたアントラーズ。
ファンクラブの会員数は今では約2万7,000人に達している。
仕事や年齢がバラバラな住人が試合観戦などで交流するようになり
地域と住人をつなぐシンボルになっている。
(元クラブ職員 平野勝哉さん)
「きのうアントラーズ勝って良かった
負けて悔しい
そういう話題が良く出てくるようになった。
やっと住人参加型の形ができた。」
平成5年に始まったJリーグは当初10クラブだったが
現在は35都道府県55クラブにまで増えた。
さらにバスケットボールBリーグや野球の独立リーグなど
さまざまな競技でプロチームが誕生し
その数は100を超えている。
一方 資金力のないチームは観客動員で苦戦を強いられている。
なかには経営難に陥り運営母体が変わるチームも出てきた。
地域振興の核となるプロスポーツをどう維持していくか課題が突き付けられている。
サッカーJ2のレノファ山口。
Jリーグ参入5年目の新しいクラブである。
県内唯一のプロスポーツチームだが
昨シーズンのホームでの平均観客数は約6,100人。
安定運営のためにクラブが目標としている7,000人には及んでいない。
クラブの運営部長 内山遼佑さん。
観客動員が伸びない理由の1つに山口の立地があると考えている。
東にはJ1で優勝経験のあるサンフレッチェ広島やプロ野球の広島カープ。
西にはソフトバンクホークス。
県内のスポーツファンの多くは外を向いてしまっているのである。
さらに県内企業からのスポンサー料収入もここ数年横ばいである。
(レノファ山口 運営部長 内山遼佑さん)
「なかなか一気に1,000人2,000人増える起爆剤はレノファ山口にはないと思うので
何ができるか考えたときに
本当に積み重ねだと思う。」
チーム存続へどう観客数を増やすのか。
開幕戦では地元小学生による演奏会を開催した。
サッカーに興味がない人にも足を運んでもらう狙いである。
さらに観客増員作戦は県外にまで及ぶ。
この日レノファ山口は愛媛県でのアウェーゲーム。
会場にブースを出し山口県の魅力をアピール。
次の試合で来てもらおうというのである。
山口県からも4人の職員が参加。
ういろうなど特産品が当たる抽選会などで愛媛サポーターにアピールする。
(愛媛FC サポーター)
「秋吉台とか名前は聞くけど行ったことはない。
ぜひ次のアウェー戦は行きたいと思う。」
「お得なクーポンももらったので
愛媛FCもレノファ山口も両方応援しに行きたい。」
レノファ山口では九州などの試合にも出向き
安置したクラブ運営のため
観客動員を増やす試行錯誤を続けていく予定である。
(レノファ山口 運営部長 内山遼佑さん)
「アウェーの地にも観光PRに来られるのは意義がある。
スタジアムを満員にしたい。
レノファが地域にあってよかったと
成績にかかわらず思われる存在になりたい。」
3月16日 おはよう日本
熊本市中心部のビルにある コアミックスまんがラボ。
新人漫画家の発掘を目的に去年10月にオープンした。
部屋にはプロの漫画家も使う専用のペンが用意され
デジタルでの作画ができる高価な液晶タブレットも配備されている。
さらにはプロの編集者からアドバイスを受けることもできる。
こうした画材や相談はすべて無料でできる。
(利用者)
「イラストレーターとか漫画家にあこがれています。
すごく楽しみでした。
オープンまで2か月待ちました。」
起ち上げたのは
人気漫画「北斗の拳」や「シティハンター」の作者らが集まり設立した東京の漫画専門の出版社である。
(熊本コアミックス 社長)
「若い漫画家志望者が東京の出版社に持ち込んでいたが
そこからプロの漫画家になっていたが
ここ数年は持ち込みが少なくなっている。」
プロの漫画家になるには主に2つのパターンがある。
自作の漫画を出版社に持ち込むか
漫画コンテストに応募するかである。
しかし出版社の多くは東京に集中しているため
持ち込みは地方に住む人にとって大きな経済的負担が伴う。
そこでこの出版社では窓口を増やすために初めて地方に編集部の分室をもうけたのである。
プロと同じ環境のもと手軽に持ち込みができるとあって
連日 九州各地から漫画家を志す人たちが足を運んでいる。
一方出版社側にとっても大きなメリットがある。
大型モニターを通して東京の編集部が漫画家志望者と直接やりとりを行うため
地方に埋もれている金の卵をいち早く発見することができる。
(熊本コアミックス 社長)
「才能あるのに1歩が踏み出せなくて
開花しないまま別の職業についてしまう人が多いのではないか。
気軽に持ち込んで気軽に見せられるような
プロの人にも見てもらったりして
同じ志を持った若い人たちと一緒に頑張る
そういう場所であってほしい。」
まんがラボに通う熊本生まれの女性。
幼い頃から絵が大好きで
漫画家になる夢をかなえようと専門学校で2年間学んだ。
在学中から東京の出版社に作品を送っていたがほとんど反応がなく
次第に自分の漫画に自信が持てなくなったという。
「本当に読んでいるのかわからない。
既読がつくわけでもなく返信が必ず来るわけではないので
確信が持てないのにやり続けるのは本当に夢につながるのかなと思う。」
今回まんがラボの誕生をきっかけに
もう一度漫画家への夢に挑戦することを決めた。
「まんがラボだと“人対人”なので圧倒的にスピードが速い。
見せてアドバイスもらってやり直してまた見せてみたいな。
その場で感想がもらえることは“人対人”の利点だと思う。」
女性は最新の漫画を携えてまんがラボを訪れた。
自分の漫画はどのように評価されるのか。
(東京の編集者)
「キャラクターが圧倒的に今回はキャッチ―なビジュアルをしている。
設定というかしゃべり方も含めて。
その分8ページに収めようとして無理やり終わりにしている感じがある。
出したキャラクターには責任を持つ使命がある。」
顔を見てすぐにアドバイスをもらえたことで
具体t機な目標や課題を知ることができた。
「めちゃくちゃ緊張していた。
何か結果が出せたらいいなと思う。」
熊本から世界へ。
漫画を愛する人たちの戦いは始まったばかり。
3月15日 国際報道2019
フランスのマクロン政権に抗議するいわゆる“黄色いベスト運動。
地方と都市との格差解消などを訴え
去年の11月から始まり今も収まっていない。
そのなかでマクロン大統領が打ち出したのが“国民対話”である。
税制や社会保障など国の政策について国民の意見を反映させようという対話を続けている。
市民主催も含めこれまでに対話は1万回以上に及んだ。
3月8日にパリで行われた国民対話。
1人で子育てをしている80人の男女が集まった。
会場にはマクロン政権の閣僚が駆け付けた。
保育所や住宅確保の問題などで議論をかわし
対話は3時間の及んだ。
「公営住宅や保育所の申し込みはいつもシングルマザーより夫婦が優先されます。」
「アパート入居の募集がかかると数百人もの希望者が殺到します。
私は14年間も待たされ続けています。」
「14年も!」
「いったいどこに行ったら助けてくれるのか知りたいです。」
「わかりました。」
次々と問題を訴える参加者たち。
意見は議題ごとにまとめられ政府へと届けられる。
「これで前に進むことを願います。」
(フランス ドノルマンディー都市・住宅相)
「市民が世の中をよくするために話し合える歴史的な出来事なんです。」
フランス革命以来ともいわれる今回の国民対話。
さまざまな方法で国民の意見を聞きだす取り組みが行われている。
その1つが全国の役場に置かれているカイエ・ド・ドレアンス(陳情書)である。
歴史は古く
フランス革命直前の1789年春に
ルイ16世が広く民衆の声を集めようと全国に置かせたと言われている。
ノートには誰でも国への意見を書くことができる。
多い人では10ページ以上にわたる。
”議員を削減するべきだ
上院・下院議員を300人に”
“富裕税の復活を”
“官僚や議員大手企業の社長 サッカー選手などの給料を減らせ!”
去年12月 地方の役場に置かれたのをきっかけに一気にフランス全土に広まった。
これまでに全国で1万5,000冊以上集まった。
さらに現代ならではのカイエ・ド・ドレアンスも。
パリ郊外へ出向き
討論会や役場に行く時間がなく社会的に立場が弱い人たちの意見をビデオカメラに収録。
政策に反映させようという取り組みである。
しかしここから聞こえてきたのは切実な訴えだった。
「契約社員を代表して言わせてもらいます。
マクロン大統領は公務員が余っているから契約社員を切ると言っていますが
それでは国が立ち行かなくなります。」
長い人では20分以上もカメラに向かって熱っぽく語りかけた。
「マクロン大統領に会える人は限られているので
こうした場所が毎日あれば自分たちのような若者も意見を言えます。」
専門家は
国民対話がマクロン政権のイメージ向上に一時的につながる可能性があると指摘する一方で
懐疑的な見方も示している。
(オルレアン大学 ジャン・がリーグ教授)
「数万の意見をまとめるのは非常に困難です。
国民対話は大きなリスクを抱えています。
誰もが納得する解決策を示すことは不可能だからです。」
国民対話が始まった1月以降
黄色いベスト運動の参加者は減り続けている。
マクロン大統領の市民とひざを突き合わせて毎回深夜までの対話を始めると
一時20%台前半まで下がった支持率は徐々に回復してきている。
41歳と若く議論も得意なマクロン大統領にとって
市民の意見に耳を傾けながらも自らの政策を主張でき
毎回テレビで生中継される国民対話は
いまのところ黄色いベスト運動の混乱で離れていた支持層を取り戻すきっかけになっている。
正念場はここからだと言える。
マクロン大統領は当初
3月15日まで国民対話を続け
4月までに意見を集約して自身の見解を示すとしていた。
ところが3月に入って大統領府は3月15日以降も国民対話を続けることを明らかにしたのである。
まだ回れていない地域があるからだとしているが
地元のメディアは
対話を続けることで黄色いベスト運動が再び拡大しないようにする狙いがあるのではないかと伝えている。
対話を続けているうちは
国民が自由に発言し何かが変わるのではないかという高揚感に包まれているものの
実際に万人が納得する政策を打ち出すのは簡単ではない。
引き続き厳しいかじ取りが続くものとみられる。
3月15日 おはよう日本
カーリング女子世界選手権日本代表の中部電力。
2月の日本選手権で平昌オリンピック銅メダルのロコソラーレに勝って代表の座をつかんだ。
その背景にあったのは頼れる新コーチの存在である。
中部電力のチームの平均年齢は22歳と若い。
今のメンバーになってから世界選手権に出るのは初めてである。
選手たちを世界に導いたのが今シーズンから新たに就任した両角友佑コーチ。
男子のトップチーム SC軽井沢クラブで司令塔として活躍。
日本代表として国際大会の経験も豊富である。
初めて中部電力の選手たちを見たとき
細かな技術が足りないと感じた両角コーチ。
取り組んだのがストーンを投げるというカーリングの基礎の徹底だった。
(両角友佑コーチ)
「まだまだショットが安定していなかった感じだった。
何が自分たちの正しい投げ方なのかをそれぞれの選手にしっかり知ってもらった。」
練習中 選手が投げるごとに
ストーンを構える位置
腰の位置など
フォームで気になったところを丁寧にアドバイスしている。
去年まで選手として世界の舞台で戦った両角コーチ。
サードの松村千秋選手は
経験に裏打ちされた指導が自分たちの成長につながっていると感じている。
(松村千秋選手)
「すごく細かくて
石の置く位置がちょっとだけずれているとか
足の入るタイミングが本当少しだけ遅い・早いというところを指摘されて
言われたことを忠実にやると
しっかりラインに入れられて投げられる。
自信をもって投げられるようになったし
これだったら決められるというショットが増えた。」
選手たちの成長は試合中の積極性に表れる。
日本選手権の決勝第6エンド。
松村選手は
狭いスペースを通して相手のストーンをずらし
さらに中心近くにとどめる
難しいショットを選択する。
見事に成功して突き放すきっかけを作った。
自信が形となって表れた1投だった。
(松村千秋選手)
「得意なショットではなかったが
でも今は決められそうだとか
これ決めたいというふうに
自分から投げたいと思うようになった。」
両角コーチは
つかんだ自信を世界の舞台でも保てるかが大きなカギと考えている。
(両角友佑コーチ)
「世界の強豪との戦いは初めてで
どういうふうに出るかわからないが
いちばん大事なのは日本選手権のときのように
自分たちのカーリングを相手に惑わされずやり続けることだと思う。
選手たちが集中できるような環境を整えたい。」
3月14日 編集手帳
「木枯し紋次郎」は笹沢左保の小説で、
紋次郎は「上州に生まれた」と書かれている。
いまの群馬県である。
同じ群馬に暮らしたことが縁で、
名前をもらった種牛がいる。
霜降り「紋次郎」という。
いい肉質の子を出す大種牛として知られたが、
平成に入ってまもなく事件に巻き込まれた。
美術品や服飾ブランドがそうであるように、
人工授精に使う精子のニセモノが出回ったのだ。
当時、
北関東の支局で事件を取材した。
和牛の生産に誠実に取り組む人々を裏切る心ない仲介者がいたのを思い出す。
魅力が増せば増すほど危機は高まるのだろうと、
大阪の事件にも思った。
和牛の受精卵と精液を、
中国に持ち出そうとした男2人が警察に逮捕された。
改良の歴史が100年に及ぶ生産地もある。
どれほどの畜産家が汗をかいてきただろう。
和牛の品質は世界に名をとどろかせるまでになった。
海外への持ち出しをたくらむ者は今後も現れよう。
法に、
制度に、
遺伝資源を保護する取り組みは喫緊の課題である。
紋次郎はたくさんの子孫を残した。
遺伝子はどこかで生きている。
物語のように旅から旅の渡世人にはしない。
3月13日 編集手帳
昭和のエンターテイナー植木等さんが、
映画『ニッポン無責任時代』(1962年)で演じた役名を思い出す。
「平均」。
姓はたいら、
名はひとしと読む。
高度成長期まっただ中のサラリーマン喜劇で、
1億総中流時代を映すネーミングにちがいない。
この頃は「みんな同じで何より」とする空気が強かったのかもしれない。
時節柄、
元号の区切りで考えたくなる。
親が付ける名前に変化が出たのは平成だろう。
俗に言うキラキラネームである。
山梨県の高校3年生が目立ちすぎる名前に悩み、
大学進学を前に家裁に申し立てたところ、
改名を許されたという。
県版によれば、
新しい名前を認められたのは赤池肇さん(18)。
以前の名前は「赤池王子様」だった。
名はおうじさまと読む。
親は「唯一無二の存在に」との願いから付けたそうだが、
本人は「この名前で生きていくのが苦しかった」と話している。
過去を断ち切って新しい人生を始める――
「肇」にはそんな思いを込めた。
旅立ちの春に歌を引く。
<真砂なす数なき星の其の中に吾に向かひて光る星あり>正岡子規。
人生のキラキラは自分で探すものだろう。
3月13日 国際報道2019
去年11月
アメリカのIT大手アマゾンドットコムの第2本社の建設が決まったニューヨーク。
現地は大きな経済効果がもたらされるとして大いに沸いた。
しかし2月 計画は突如撤回されることになった。
背景にあったのが
格差や大企業に対する反発である。
ニューヨークマンハッタンの国連本部のビル。
川を隔てた東側の土地がアマゾンが第2本社を計画していたロングアイランドシティーである全米238の都市や地域が名乗りを上げるなか
激しい誘致合戦を勝ちぬいたのがニューヨーク州のクオモ知事とニューヨーク市のデブラシオ市長である。
民主党出身の2人は
日本円で3,300億円に上る助成金や税制優遇措置などを打ち出してアマゾンを誘致。
経済の活性化を目指したい考えだった。
(ニューヨーク市 デブラシオ市長)
「ニューヨークでしかできないことがあると
アマゾンは世界に知らしめた。」
地元からも大きな期待が寄せられていた。
(住民)
「仕事が増えるから素晴らしいと思うわ。」
しかしこれに異を唱えたのが
同じ民主党内でもよりリベラルな主張を掲げる
「プログレッシブ」と呼ばれる左派系の政治家とその支持者である。
(民主党 左派系 州議会議員)
「アマゾンにNOを突きつけよう!」
建設予定地に隣接する地域の下院議員 オカシオコルテス氏もその1人である。
去年 最年少で下院議員に当選した。
社会の格差解消や大企業への優遇反対を主張し
アマゾン第2本社の誘致にも反対を表明している。
(民主党 オカシオコルテス下院議員)
「世界1の街でアマゾンのおこぼれに甘んじる必要はありません。」
彼女の声に呼応したのが格差に不満を持つ若い人たちである。
ニューヨーク市議会の公聴会では派手なパフォーマンスを展開。
マンハッタンにあるアマゾンの店舗にも押しかけた。
「私たちの街だ!」
(民主党 オカシオコルテス下院議員)
「アマゾンに3,300億円も払うなら
そのお金をこの地域のために使えます。
教員も増やせるし
地下鉄も直せるし
雇用も増やせます。」
反対運動の結果
誘致決定からわずか3か月でアマゾンは“計画は白紙に戻す”と発表した。
アマゾンは声明で
“世論調査では市民の70%が賛成していたが地元議員らと友好的な関係が築けなかった”
と説明している。
アマゾンにとっても意外な顛末だったことがうかがえる。
それは誘致を進めてきた側も同じである。
ニューヨーク市のデブラシオ市長にとってはまさに“寝耳に水”の知らせだった。
(ニューヨーク市 デブラシオ市長)
「残念だ。
なぜこうなったが理解できない。」
地元でビジネスをする人たちにも左派系に対する不満がくすぶる。
(地元飲食店オーナー)
「左派系の政治家たちが企業誘致を妨害するなんておかしい。」
オカシオコルテス氏をはじめとする左派系は
巨大企業を追い出したことで「アマゾンキラー」ともてはやされている。
アマゾン騒動で浮き彫りになった民主党と民主党の対立。
専門家は
「過激にも聞こえるこうした左派系の主張がこれまでよりも幅広い層に支持を広げている」と分析している。
(コロンビア大学 トッド・ギトリン教授)
「左派系の存在感がこんなに大きくなったのは初めてです。
彼らが主張するぜいぢゃ社会福祉などの制度が
いま人々に支持されているのです。」
大企業への反発は来年の大統領選挙にも影響を与えようとしている。
3月に入ってニューヨークには次々と有力候補が演説に訪れている。
次期大統領選挙への立候補を表明した民主党の左派系の人たちである。
騒動の震源地ロングアイランドシティーに入ったエリザベス・ウォーレン上院議員(69)。
新たな政策として
“アマゾンなど巨大企業の解体”をぶち上げた。
(民主党 ウォーレン上院議員)
「巨大IT企業を解体するときが来た。
大富豪にたかられるのはうんざり!
財を築いたらそれを助けしてくれたこの国に少しは返せ!」
そして前回の大統領でヒラリー・クリントン氏と最後まで指名を争ったバーニー・サンダーズ上院議員(77)。
今回の騒動をきっかけに左派系の勢いはさらに増している。
(民主党 サンダース上院議員)
「1%の富裕層と巨大企業にこう言おう!
“私が大統領になったら税の優遇は許さない”ということを!」
3月9日 編集手帳
徳光和夫さんはあおむけに倒れたまま、
痛くともなかなかマイクを離さなかった。
日本テレビのアナウンサーだった頃、
覆面レスラー「ザ・デストロイヤー」に4の字固めをかけられた。
「激痛手当を出せ、
数日後は父親参観なんだ!」――かつての人気番組「金曜10時 うわさのチャンネル」の一こまである。
覆面からのぞく大きなつぶらな目、
団子っ鼻、
たらこのような分厚い唇がウッシッシと笑う。
リングから、
スタジオから、
その足技を昭和のテレビっ子の心にがつんとかけたデストロイヤーさんが亡くなった。
88歳。
米国の自宅で息を引き取ったという。
本国に戻ってからは教育学の修士号を生かし、
水泳やレスリングのコーチになった。
かたわら子供たちを日本に連れてくる活動を20年にわたり続け、
それが叙勲の対象となった。
昨年の式典では「高校時代は敵だったが日本に行って大好きになった」と語った。
この時も覆面をつけていた。
素顔も明かさないまま、
これほど日本になじみ愛された外国の方を存じない。
強かった。
面白かった。
そして痛かった。
幼友達とかけ合った4の字固めが懐かしい。
3月8日 編集手帳
作者は仙台市の小学1年女子という。
タイトルがほほ笑ましい。
「ランドセルのしゅぎょう」。
先日、
読売KODOMO新聞が募集した作文の審査をしたとき、
“修業”の一端をのぞいた。
<お母さんが「お米みたい」とわらいます。
ほんとうに、
はかったら4・7キロあって、
お米と同じでした。
おもいランドセルはからだをつよくするしゅぎょうみたいです>。
問題はランドセル自体ではなく、
その中身と入りきらない学習道具だろう。
体操着、
絵の具セット、
習字道具、
リコーダー…
時間割によっては副教材を山と抱え歩くことになる。
体重を考えれば、
大人が米俵を運ぶ感覚に近いかもしれない。
文部科学省は昨秋、
持ち物を減らす配慮を求める通知を出した。
「脱ゆとり教育」以降、
教材はだんだんと重みを増し、
体の痛みを訴える子が増えたためという。
「置き勉(強道具)」が一つの策といわれる。
春の年度替わりを前に、
先生方は知恵の絞りどころだろう。
軽やかにてくてく歩く子供たちの通学風景は街を明るくする。
重い、
痛い…
かわいそうな事件が絶えず、
幼い悲鳴に敏感になっていることもある。
3月7日 国際報道2019
かつて90%近い支持率を誇っていたロシアのプーチン大統領。
しかし国民に不評な年金制度改革や経済の低迷によって支持率は低下。
そのプーチン大統領に追い打ちをかけているのが汚職への人々の不満である。
ロシアの内務省が毎年摘発する汚職事件の数は約3万件。
2016年の被害総額は日本円で1,300億円を超えた。
しかしそれも氷山の一角に過ぎないと言われている。
政治家や高級官僚らからも億単位の規模のもの
さらには横領・恐喝・殺人まで
あらゆる手段を使って私腹を肥やすなど
また一般市民でもわいろを使って交通違反を見逃してもらうことも多く
社会の隅々まで汚職が広まっている。
一方で帝政ロシアや旧ソビエトなど歴史的に国家に権力が集中してきたロシアでは
汚職は“悪しき伝統”で
権力者とはそんなものだと社会的に黙認されてきた側面もある。
しかし今変化が表れている。
国民がどのような社会問題に不満を持つかを表したグラフ。
“汚職”と答えた人が4年前から倍増。
かつては下位にランキングしていたのに今では
トップ2つの“物価高”や“貧困”といった経済への不満に迫る勢いである。
そして同時期のプーチン大統領の支持率の推移をみると
88%から62%と26%も下がっている。
モスクワ中心部のレストラン。
食材や内装にこだわり流行に敏感な中間層の間で人気である。
オーナーのjセルゲイさんは
1年前突然警察が店に押しかけたという。
警察が目を付けたのは店の従業員だった。
「警察は従業員の身分証明書を調べはじめ
さらにキッチンにも入っていきました。」
不法就労者がいないか警察署のデータベースと照合するとして
15人の従業員に出頭を求めた。
そこで警察から出た言葉は
(レストラン オーナー セルゲイさん)
「副署長は言いました。
“取り調べはしない
すぐに開放してもいい
食事の代金を半額にする割引券が3枚必要なんだ”と。」
セルゲイさんはこの要求を断固として拒否。
いきさつを自分のフェイスブックに書き込んだ。
今どきのわいろは現金ではなく割引券ですよ!
この投稿は瞬く間にシェアされ1万4千人以上に拡散した。
どうにもならない まさにギャング国家ね
頑張れ!
きっと大丈夫
真実の側にいれば何だって打ち負かせるさ
こういった要求に応じることがロシアでは当たり前だったというミロノフさん。
反響の大きさにロシア社会の変化を感じたという。
(レストラン オーナー ミロノフさん)
「要求に応じるほうが楽だとの考えではロシアの汚職はなくなりません。
法治国家に住みたければ自分たちの手で作らなければ。」
汚職によって金銭を失うだけでなく人生を変えられてしまった人もいる。
モスクワ在住の実業家 ボリソフさん。
経営していたベーカリーが突然立ち退きを迫られ廃業に追い込まれた。
「このスペースで焼き立てのパンなどを売っていました。」
店が繁盛し事業を拡大しようとしていた10年前
怪しげなブローカーに建物の権利を手放すよう強要された。
断ったところ警察に呼ばれ警察に呼ばれ
全く身に覚えのない詐欺事件で刑事告発されたのである。
(ボリソフさん)
「“建物を引き渡さなければ告発されるぞ”と事情徴収で言われて気づきました。
建物を手に入れて怖し
空いた土地を誰かのために使う必要があるのだと。」
ブローカーと警察が共謀していると確信したボリソフさん。
弁護士を雇って徹底抗戦したが
2年間の自宅軟禁後さらに1年間拘置所に拘留されてしまう。
「縛り付けられたまま何度も蹴られ
食事や水を与えられず放置されました。
私は当時65歳で
常に死の危険と隣り合わせでした。」
9年以上にわたる捜査の末
去年ようやく不起訴となったボリソフさん。
しかし交流期間中に何者かが店を破壊。
ベーカリーは営業停止に追い込まれ
真相は今も明らかになっていない。
ロシアに蔓延する汚職する汚職の実態を世界に発信したい。
ボリソフさんはいま手元に残った資金を使って汚職撲滅を訴えるアニメーションを制作している。
汚職とは頭を切られても生まれ変わる“魔物”みたいなものだ
(ボリソフさん)
「汚職はわいろの受け渡しだけでなく
もっと根深いものだと知ってもらいたいのです。」
そしていま汚職への不満はプーチン政権へ向かっている。
2月に行われた反政府デモ。
プラカードには“汚職のないロシアを”と文字が掲げられた。
汚職対策に力を入れるとするプーチン大統領。
しかし対策を強化すれば自らの権力基盤を揺るがしかねないジレンマを抱えていると専門家は指摘する。
(世論調査機関「レバタセンター」調査部長)
「ネット上で汚職の取引を告発する人々が増えたことで
汚職の問題に対する社会的な関心は高まっています。
しかし大統領が本気で取り締まりを行えば自分の側近が犠牲になるだけなのです。」
3月7日 おはよう日本
いま中部ヨーロッパで医師を目指す日本の大学生が増えている。
なかでも
チェコ ハンガリー スロバキア ブルガリア
4か国で学ぶ日本人の医学部生はこの10年余りで20倍以上に増え約500人にのぼる。
スロバキアの首都ブラチスラバにあるコメニウス大学。
医学部4年生の妹尾勇希さん。
この大学を選んだのは
学費が年間130万円と日本の私立大学の半分以下であること。
そして授業のほぼすべてが英語で行われることが理由だということである。
妹尾さんは女性医師の割合の多さが日本と異なる点だと話す。
(妹尾勇希さん)
「日本では女性がキャリアを考えて子育てして家庭を持つのが難しい印象があった。
日本で働きにくかったら海外に行くとか
そういう働き方が目指せるので
なお欧州に行ったらいいんじゃないかなって感じた。」
OECDが行った医師の男女比の調査では
スロバキアは女性の割合が57%と高く
コメニウス大学でも学生の6割が女性である。
妹尾さんも性別によって不利な待遇を受けることはないと感じている。
(妹尾優希さん)
「日本に比べると
男性が優遇されている印象は特にない。」
こうした事情はヨーロッパの医学部への関心の高まりに少なからず影響しているようである。
2月福岡で開かれたハンガリー大学医学部の進学説明会。
参加者は例年よりも4割増え
6割が女性だった。
主催した企業は
去年日本で明るみに出た医学部の不適切な入試での
女子学生への差別の影響を指摘する。
(ハンガリー医科大学事務局 中谷広報課長)
「医学部試験の不正入試の問題
意識されている参加者が多い。
日本の医学部を受けずに
ハンガリー含め海外の医学部を受験するということで
進路を変える方が増えている。」
一方で中東欧の医学部が人気なのは日本だけの話ではない。
その大きな理由が
卒業すればEU圏内で働ける医師免許が手に入るためである。
コメニウス大学の医学部には
ドイツ イタリア イランなど
世界中各国から学生が集まっている。
(コメニウス大学 副学長)
「留学生を受け入れることで学生間の競争が激しくなります。
日本など他の国から学生が来ることで
本校の文化的基盤が豊かになります。」
激しい競争の中で学生には猛勉強が求められる。
そんななかで頼りになるのは同じ目標を持つ日本人の学生である。
濱田省太さんはコメニウス大学で学年が1つ上の先輩である。
妹尾さんは
何をいつどのくらい勉強すれば単位が取れるのか
経験に基づいたアドバイスを求めてきた。
こうした日本人同士の関係は欠かせないと濱田さんは話す。
(濱田省太さん)
「同じどうしの人のつながりは強く
みんなで情報共有するので
自分は日本人が少なく苦労したので
後輩にはそんな思いはしてほしくない。」
妹尾さんは帰宅しても勉強漬けの毎日である。
勉強中 眠気をふせぎ集中力を持続させるために食べているのがゆで卵。
(妹尾優希さん)
「炭水化物を食べてしまうとかなり眠くなるので
ゆで卵は腹持ちが良く援用も満点なので。」
進級試験に受からなければ即退学という厳しい世界。
当初 妹尾さんの学年には日本人が8人いたが今は2人しか残っていない。
(妹尾優希さん)
「試験期間中は朝から晩まで勉強している。
それでも追い付かず心が折れて
大学に行けなくなる学生もいる。
試験では1,000~2,000ページの本を丸暗記しなきゃいけない。」
故郷から遠く離れたスロバキアで医師になる夢絵を追う妹尾さん。
目標はグローバルに活躍できる医師になることである。
(妹尾優希さん)
「フットワークを軽く
どこの国でも行けるのが私のアドバンテージだと思う。
もしEUと日本
ダブルで医師免許を取れたら
それを生かして働いていけたらと思う。」