
ほら、見な、
あんな雲に
なりてえんだよ。
(第9作 『男はつらいよ 柴又事情』より)
この短いセリフに山田洋次監督の描く、人間の美しさと悲しさが見事に描かれています。
自分は、あの空に浮かぶ雲のように、自由に生きたいという願いが込められています。
「男はつらいよ」とタイトルはついていますが、これはなにも男だけの願いではないでしょう。
男や女にこだわる必要はないですし、人間は一人ひとりちがう中でも、自分らしく自由に生きたいというのは、万人の欲求です。
そう思って雲を見上げると、戦後の日本と日本人の気持ちを、巧みに表現しているのが山田監督であると、あらためて思うのです。