La douce vie

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乙川優三郎の「屋烏」

2005-11-10 | book/comic
乙川優三郎の「屋烏(おくう)」は江戸時代の市井の人々を描いた短編集です。
世の中は世知辛いことが多い。でも、この短編集を読むと胸の重みがすーっと救われるような気持ちになります。
本文中から作者の品格を感じます。ホテルマン出身だそうですが、とてもソフィスケートされた方とお見受けしました。読んでいて気持ちがよいです。なんだか、藤沢周平に相通じるものを感じます。
特にタイトルになった「屋烏」は早世した両親の代わりに弟が家を継ぐまで家を守りぬいてきた姉が主人公の話。
気がつけば婚期も過ぎ、弟夫婦に迷惑をかけまいと1人で生活を算段していた。そんな彼女はある日顔に傷がある武士に助けられる。その武士は家老を救った経歴があるにも関わらず、国許の評判はよくなかった。しかし、彼女は実際に彼と話してみると悪い印象は受けなかった…。
最後に広がる幸福な気持ち、私はこの話が一番好きです。