CubとSRと

ただの日記

旅の心象

2019年02月19日 | バイク 車 ツーリング
 「海よりも早く 空よりも安く」
 ・・・という惹句、キャッチコピーを覚えている人、って、いくつくらいなんでしょう。
 JR西日本の夏期限定特別編成の寝台急行。「日本海」。
 郵便専用車両を改造したらしいバイク専用車両を最後尾に連結して、その隣はライダーだけの寝台車。そこから先頭までは普通の寝台列車。
 初めのうちは発売当日に大方売り切れてしまっていたようです。
 当時は日本海フェリーが確か32時間。それも舞鶴まで行かなきゃならない。出航は夜。小樽に到着する時間は朝の4時ごろ。早過ぎて、何もない小樽。
 飛行機という手もあったけど、何しろバイクを飛行機に積んで行くわけだから、べらぼうに高い。
 それから見ると、夕方5時、大阪駅出発、翌日、昼前に函館到着。ほどほどに走って一泊目。
 「弾丸より早く 機関車よりも強く」に似てるけど、なかなかのコピーです。
 その「モトトレール」で初めて北海道に行ったのが、バイクに乗り始めて二年目の時でした。
 バイクはだいぶ慣れて来たGB250 。
 以前に書いた、その時の日記の一部です。
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 昔、ツーリングで、何度か北海道に行きました。
 大阪発の夏期限定列車、急行「日本海」をベースとした、「モト・トレール」という、バイク専用貨車を一輌つけた、寝台列車です。
 一人で乗る者も、二、三人で乗る者もいる。けれど、みんな大阪に集まらなければならず、同じ車輌のベッドで寝ることになっている。
 同じ北海道に憧れて行くんです、すぐ仲良しになる。一時間もすれば、みんなで、酒盛りです。
 それが翌日の昼前には終着駅の函館に着く。
 そうすると、みんな、それぞれが計画を立てた方向に走り出すわけです。
 見ず知らずの数十人が、一晩だけ、昔からの友だちのように集まって、バカ話して、大騒ぎして、で、翌日は何だか後ろ髪を引かれるような、それでも今日の予定の景色の中に向って走り出す興奮を持って、函館駅で別れを告げる。
 名残を惜しんで集合写真を撮って。でも、二十分も経たないうちに、四方に散らばって行く。
 「モトトレール」のなくなった今、あの感じは、もう誰も経験できないんですね。つい、「遠い目」になってしまいます。
 名残を惜しみながら、でも、これから先に開ける筈の北海道の景色にとび込んで行こうと出発した。当然の事ながら、そこからは一人。
 期待していた景色が、眼前に広がっていくと同時に、寂しさが増して来る。だからと言って、昨晩の車内の楽しかった時間を思い出すか、というと、それは、ない。
 今、ハンドルに手が触れていて、エンジンの振動が全身に伝わって来る、それだけです。
 変な話かもしれませんが、その時は「今」、しかない。
 今、寂しさを抱えている自分が、北海道の景色の中を、ただ、バイクの振動や、少し冷たい空気を感じながら走っている。
 さびしい、なんて言っても、上っ面だけです。そして北海道に来たうれしさ、興奮、というのも、心の底から湧き起って来る、みたいなものでもない。
 ただ、景色と、空気と、その中に自分が居て、これを望んでいたんだよな、という気持ちは、ある。
 今、こうやって思い出しながら書いていると、これ、バイクに乗ったことのない人、ツーリングに一人で出たことのない人には、想像もできないことなんだろうな、と思います。
 いや、想像出来ない以前に、「バカバカしくって想像する気も起きないよ」、なんじゃないかな、と思います。
 


コメント
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