ある日の午後、アパートを出てみると、雨!! 傘を取りに戻ろうとふと横を見ると、かわいい子ガラスが雨宿りしていました。もう見た目にはずいぶん大きいのですが、まだくちばしの端が黄色くて、飛んでうちの前の高い木の上の巣に戻るのはむずかしいようです。でも、羽が乾けば飛べるだろうと思って、そのまま用事を済ませに出かけました。
2時間ほどして、帰ってきてみるともう子ガラスはいなくなっていました。巣に帰れたのかな?と思っていると、うちの前、20mほど先の駐車場に歩いていったようです。ヨタヨタと車の下から出てきました。そこへ、15,6歳くらいの少年たち4人が通りかかりました。するとそのうちの一人が棒でこのカラスを殴り始めました。あっという間にこの子ガラスは死んでしまったようで、動かなくなってしまいました・・・ そしてこの子ガラスを殴り殺した少年は私に「お~、ズドラスティ」と陽気にあいさつをしていったのです。
本当に、ほんの数秒のことで、声も出ません。まさか!!! でも、考えてみたら予想すべきことだったのかも。前にも、うちの前にエサをねだりに来た子猫がいました。そこへ10歳くらいの男の子が2人通りかかったら、まるでサッカーボールを蹴るようにこの猫を手加減なく蹴り上げたのです。急所ははずれたのか猫は一目散に逃げていきました。
どうしてなんだろう・・・小さな動物に対する憐れみ、みたいなものはあんまりないのかな・・・ ここは日本とちがって酪農国。一年大事に飼ってきたブタや自分のところで生まれた子牛をさばいて食べる。それがあたりまえ。動物とはそんなもんだ。ということなんでしょうか・・・
でも、これらの少年たちの行動を見てふと思い出した私自身の行動。以前住んでいた山陽地方は、温暖なせいかとにかく大きなゴキブリがたくさんいました。部屋に一人でいると視線を感じるのです。「ムムッ、殺気!!」そこには大きなゴキちゃん! そして、目が合って(ホントですよ、これ)「トオ~ッ!!!」のかけ声とともにスリッパで叩きつぶしてました。だって、ゴキブリは「害虫、キタナイ、気持ち悪い!」と思っているからです。ということは・・・ もしかしたら、ブルガリアでは、カラスや猫は日本のゴキブリのような位置づけなの?
とはいえ、ここでの、人々の「野良」に対する反応はまちまちです。うちのようにノラ猫にエサをあげる人は少なくありません。でも石を投げつけたり蹴ったりする人も(特に若い男性)たくさんいます。とにかく「野良」系の犬、猫がものすごく多い!!! 猫はとにかく、犬は時々人をかんだりしているので(しょっちゅう吠えられるし・・・)、ナントカして欲しいんですよね、確かに。
ところで、前出の、子供に蹴り上げられた猫は、その後も生き延び用心深くなっています。子供がきたらさっと車の下などに隠れるようになりました。「元気でよかったね。」と私はほっとしてエサをねだりに来るとクレンビルシ(ソーセージ)のハシキレをあげたりして、「ヒゲ」と私の中で名づけて(黒い部分が多いのにヒゲが白くて長いから、という単純な理由ですが)かわいがっています。最近、この「ヒゲ」ちゃん、ずうずうしさ(あつかましさ)も身に付け、エサをくれそうな人のアパートの前で大きな声で「ニャア~!!!」とエサをねだるようになったのです。(うちだけでない。少なくともうちの建物だけであと4件はエサをあげています) おかげで野良とは思えない毛並みと体格!! ここ最近では、近所のネコ社会での地位(?)も安定したようで、遊び盛りの年頃と言うこともあり趣味(?)にも手を出すようになりました。それは・・・ハンティング!しかも身の程知らずにターゲットは鳥!! ハトが「ポロッポ~!」とその辺をトコトコ歩いているとサーッと飛び掛るようになりました。(もちろん、まだ捕まえたところは見たことがありませんが。) 木登りも覚え、うちの前の木にも登るようになりました。その一番てっぺんには・・・ そう!カラスの巣!! そういえば最近カラスがヒゲちゃんを牽制するような行動を取っていたなあ!
あのかわいそうな子ガラスをヒゲちゃんが見つけていたら・・・ 間違いなく襲っていたでしょう。それを目の当たりにしたら私はいったいどちらの味方をしたのか?
かわいそうな子ガラスのなきがらは、少し目をはなしたすきになくなっていました。誰かが片付けたのか、ノラ犬たちのおやつになったのか・・・ 少なくともうちのヒゲちゃんではないようです。