明るくビンボーな年金生活をしている友人のターニャ。大家のエンカ(こちらもおばあちゃん)との対面を自宅でセッティングしてくれました。一目見て「あっ!結構フツウでしっかりしていそうな人だな~、バーバ・エンカは!!」と思いました。それもそのはず、何でも彼女は昔「ヤポンスキ・ホテル」(昔のニューオータニ、今はケンピンスキ・ホテル)で働いていたんだそうで、日本人に対して好感を持っているようでした。
同じブホッド、つまり入り口とエレベータ、階段を共有するスセディ(隣人)となるターニャ(2階に住んでる)はわたしの味方になって、交渉の場で特技である物柔らかな「大人げないワガママ力」を発揮します。
「エンカ~、わたしの友人たちはホントにみんないい人よぉ~ん。ほかの人に貸したりしたらあなたのアパルタメント、メチャクチャにされてしまうわよぉ~ん。」(ブルガリア語でしゃべってるんだけどこんな感じに聞こえます。あ、それからホントにそういうケースってブルガリアでは多いみたいですよ。ちゃんと契約して家を貸したのに借家人が1回も家賃を払わずにトンズラ。おまけに家にあったものを持ち逃げ・・・ エンカもその被害にあったんだそうです。)
「う~ん、分かったわ、200でいいわ。」 やったァ~!!! \(^^)/
でも、このバーバ・エンカ、すぐにOKしたのには訳があったのです。話せば長くなりますが、このアパート、元は彼女の息子ルーメンの所有で、彼は奥さんと住んでいたそうです。でもこのエンカ曰く、この嫁は「ローシャ・ジェナ(悪い女)」だったんだとか。ある日、酒もタバコもやるルーメンはインソルト(脳梗塞?)で階段で倒れてしまい、しばらく時間が過ぎて発見されて救急車で病院に運ばれ、一命は取り留めたものの半身不随になってしまいました。そんな夫を放ってイタリアやイギリスに行ってしまった嫁・・・ ふっとある日帰ってきたかと思うとその半身不随の夫を連れて銀行へ行き、ポッピス(サイン)だけさせたそうです。それは1600レバ(約13万円)のローンの連帯保証人になることへの同意のサインだったので、彼は少ない障害者年金の大半をその借金返済に取られてしまっているのでした。その上その嫁は二人で住んでいたアパートを自分のものにしようとしたそうですが、寸前にエンカはアパートの名義を息子から自分に変え、アパートの鍵まで交換して守ったんだとか。
「来月からデロートなのよね。」 デロート・・・ この言葉をここでまた聞くとは・・・ ペルニックの大家夫婦もしょっちゅう言ってたデロート、デロート・・・ これは日本で言うところの家裁に夫婦双方がいって裁判官や弁護士と会う日のことのようで、エンカの息子ルーメンもその「悪い嫁」と離婚調停に入るようです。
案の定こういう物件は不動産屋を通せない訳アリ物件なのです。こんなゴタゴタがあっている間水道、テッツ(温水)料金を払っておらず(何と20世紀から!)、両方で3000レバ以上滞っています。不動産屋を通すには家の修理をして滞納金を全部払ってしまわねばならないのですが、エンカにそんなゆとりはありません。もちろん、借家人は住んでいる間の分だけの公共料金を払うようになるのですが・・・ 家賃が相場の半分なだけに状態はあまりよくなく、写真では見事に隠れていますが窓は一箇所割れてるし、壁紙や天井はタバコのヤニで茶色・・・ よぉ~し!! これは家賃が浮いた分、リフォームするゾ!!!