最高気温が夏日の日、貝母の移植作業や帰化植物の作業にと妻女山の陣場平へ。湿度も低く日陰は快適ですが、日向で作業をすると汗が吹き出します。そんな中で、このところ顔見知りのニホンカモシカの子供と邂逅しました。
作業を終えて帰ろうかと思ったら、妻女山里山デザイン・プロジェクトで管理している椎茸のホダ木に顔見知りのニホンカモシカの子供がいました。大きさと角の小ささから作年の夏に生まれた子供でしょう。何度も出会っているので私を認識しているみたいです。声をかけながらゆっくりと近づきました。ニホンカモシカは、雄と雌の区別が難しい。おしっこをする場面を見れば分かります。雄は立ったまま脚を少し広げてします。雌はお尻を下げてします。それで分かります。
しばらく気を引いていたのですが、飽きて帰り始めました。ちょっと待ってと言うと振り返りました。ニホンカモシカは鹿ではなく牛科なので好奇心が強いのです。じつはこの個体のひいおばあさんから追いかけています。この母親はブランカ、その母親はシロ。拙書で鞍骨山のページに冬毛が抜けた日の写真を載せています。その母がマダム。不思議なことに彼女からずっと雄雌の双子を生んでいるのです。ただこの個体が双子かは確認していません。可能性はあります。
特にマダムは、うちの山に塒(ねぐら)があったので、彼女が双子を生んで育てるまでずっと観察していて顔見知りでした。子供に近づくと走ってきてシュッと鼻息を鳴らして近づかないでと。大丈夫だよ何もしないよと言うと、安心して引き下がったこともありました。マダムと名付けたのは、なにかとても色っぽく風格があったからなのです。シロは夏毛が真っ白で美しいカモシカでした。私のツイッターのアイコンは彼女です。
ニホンカモシカの子供は、寄ってくることもありますが、絶対に触ったり餌をあげたりしてはいけません。特別天然記念物なので、傷つけたりすると違法行為になります。
拙書では、「森の哲人」ニホンカモシカの好奇心というエッセイを掲載しています。江戸時代の『遠山奇談』にまつわる話は、ニホンカモシカの本来の生態を推察したなかなか面白い考察になっていると思います。
●ニホンカモシカの写真集:マダムやシロも写っています。
移植作業や帰化植物除去の後で昼は、今は亡き友人で山仲間のKさんのログハウスへ。彼が拾ってきたかもらってきたという神社に咲くツツジが満開です。右に鎮座する勅命と書かれた謎の石碑は、調査してもらう予定です。
彼が育てたレンゲツツジも満開です。美しい花には毒がある。有毒の植物はかなり多いので覚えておきましょう。
猛毒なので蜜は絶対に吸ってはいけません。庭木で植えるのもタブーです。
私が好きなリュウキュウツツジ。白いツツジは珍しい。大輪で清楚で美しいツツジです。300年ぐらい前から栽培されていた園芸品種。琉球といいますが、沖縄とは直接関係なさそうです。平戸ツツジともいいます。
翌日、最高気温は28度になりました。さすがに半袖です。陣場平の貝母群生地への小道。こんな素敵なワクワクする小道もそうありません。何が待っているでしょう。コゲラのドラミングが響きます。ノスリが低空飛行で飛んでいました。
氷河期の生き残りといわれるウスバシロチョウが二頭舞っていました。そして、今年初見のアサギマダラが一頭。残念ながらいいカットは撮影できませんでした。なにせ彼らが吸蜜する花がほとんどないのです。わずかにタンポポとミツバツチグリが。しかし、蝶は遠目が効きません。いきあたりばったりなので、なかなか吸蜜する花を見つけられないのです。
貝母の移植作業は、遠くに散ってしまった株を掘り起こして、中央に植えます。前回は上の葉を切りましたが、今回はそのまま植えてみました。違いを見るためです。貝母はかなり強いので、実がなっているものが成長して種を飛ばせるか確認します。里山保全作業は、梅雨入り前と梅雨明け後に、有害帰化植物の除去作業を中心に行います。
ミツバツチグリが咲き出しました。キジムシロはまだです。初夏のバラ科の黄色い花は、皆似ていて同定が難しいのです。ミツバツチグリ、キジムシロは、ヘビイチゴ、ヤブヘビイチゴ、オヘビイチゴ、ツルキンバイなど。特徴があるので、花だけでなく萼や葉などもきちんと見なければなりません。
ゴヨウアケビの花。実が大きく食用になるミツバアケビはもう少し標高の低いところにあります。
ホタルカズラも一斉に咲きだしました。つぼみは赤紫で開花すると青色になります。花の直径は10ミリ足らずなので、よく探さないと見逃します。イカリソウも咲き始めました。
クサノオウも咲き始めました。妻女山の登り口にたくさん咲いています。遠足で子供達が登る頃に咲くので、引率の先生に触らないでと言ったことがあります。それで、子供達に里山の話をしてくださいと言われて、拙書を見せながら色々話したことがあります。
有害帰化植物のハルザキヤマガラシ。遠目で見ると菜の花に見えます。近年、堤防や野原、里山や高原にまで繁殖している問題の帰化植物です。見たら引き抜いて欲しいです。
ヤマフジも咲きました。見ると綺麗なんですが、成長して根本が50センチにもなると、大木にも絡みついて枯らしてしまいます。そんなわけで、陣場平のヤマフジは全て除去しています。
国道403号の妻女山入り口から見る妻女山(赤坂山)。上信越自動車道のトンネルをくぐって舗装路を登ると妻女山展望台と招魂社の奥に駐車場があります。陣場平や天城山(てしろやま)、鞍骨山(鞍骨城跡)には、そこから登ります。陣場平までは30分、天城山までは60分、鞍骨山までは90分が目安です。
来週あたりから淡竹の筍を目当てに鏡台山から親子連れの熊が出てくるので、熊鈴とホイッスルを必ず用意してください。出会ったときは、悲鳴をあげず、だいじょうぶだからねと言いながら静かに後退りしてください。熊は本来臆病です。背中を向けて逃げたら必ず襲われます。拙書の「猫にマタタビ、月の輪熊に石油」のエッセイに詳しく記しています。
◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。
★本の概要は、こちらの記事を御覧ください。
★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
作業を終えて帰ろうかと思ったら、妻女山里山デザイン・プロジェクトで管理している椎茸のホダ木に顔見知りのニホンカモシカの子供がいました。大きさと角の小ささから作年の夏に生まれた子供でしょう。何度も出会っているので私を認識しているみたいです。声をかけながらゆっくりと近づきました。ニホンカモシカは、雄と雌の区別が難しい。おしっこをする場面を見れば分かります。雄は立ったまま脚を少し広げてします。雌はお尻を下げてします。それで分かります。
しばらく気を引いていたのですが、飽きて帰り始めました。ちょっと待ってと言うと振り返りました。ニホンカモシカは鹿ではなく牛科なので好奇心が強いのです。じつはこの個体のひいおばあさんから追いかけています。この母親はブランカ、その母親はシロ。拙書で鞍骨山のページに冬毛が抜けた日の写真を載せています。その母がマダム。不思議なことに彼女からずっと雄雌の双子を生んでいるのです。ただこの個体が双子かは確認していません。可能性はあります。
特にマダムは、うちの山に塒(ねぐら)があったので、彼女が双子を生んで育てるまでずっと観察していて顔見知りでした。子供に近づくと走ってきてシュッと鼻息を鳴らして近づかないでと。大丈夫だよ何もしないよと言うと、安心して引き下がったこともありました。マダムと名付けたのは、なにかとても色っぽく風格があったからなのです。シロは夏毛が真っ白で美しいカモシカでした。私のツイッターのアイコンは彼女です。
ニホンカモシカの子供は、寄ってくることもありますが、絶対に触ったり餌をあげたりしてはいけません。特別天然記念物なので、傷つけたりすると違法行為になります。
拙書では、「森の哲人」ニホンカモシカの好奇心というエッセイを掲載しています。江戸時代の『遠山奇談』にまつわる話は、ニホンカモシカの本来の生態を推察したなかなか面白い考察になっていると思います。
●ニホンカモシカの写真集:マダムやシロも写っています。
移植作業や帰化植物除去の後で昼は、今は亡き友人で山仲間のKさんのログハウスへ。彼が拾ってきたかもらってきたという神社に咲くツツジが満開です。右に鎮座する勅命と書かれた謎の石碑は、調査してもらう予定です。
彼が育てたレンゲツツジも満開です。美しい花には毒がある。有毒の植物はかなり多いので覚えておきましょう。
猛毒なので蜜は絶対に吸ってはいけません。庭木で植えるのもタブーです。
私が好きなリュウキュウツツジ。白いツツジは珍しい。大輪で清楚で美しいツツジです。300年ぐらい前から栽培されていた園芸品種。琉球といいますが、沖縄とは直接関係なさそうです。平戸ツツジともいいます。
翌日、最高気温は28度になりました。さすがに半袖です。陣場平の貝母群生地への小道。こんな素敵なワクワクする小道もそうありません。何が待っているでしょう。コゲラのドラミングが響きます。ノスリが低空飛行で飛んでいました。
氷河期の生き残りといわれるウスバシロチョウが二頭舞っていました。そして、今年初見のアサギマダラが一頭。残念ながらいいカットは撮影できませんでした。なにせ彼らが吸蜜する花がほとんどないのです。わずかにタンポポとミツバツチグリが。しかし、蝶は遠目が効きません。いきあたりばったりなので、なかなか吸蜜する花を見つけられないのです。
貝母の移植作業は、遠くに散ってしまった株を掘り起こして、中央に植えます。前回は上の葉を切りましたが、今回はそのまま植えてみました。違いを見るためです。貝母はかなり強いので、実がなっているものが成長して種を飛ばせるか確認します。里山保全作業は、梅雨入り前と梅雨明け後に、有害帰化植物の除去作業を中心に行います。
ミツバツチグリが咲き出しました。キジムシロはまだです。初夏のバラ科の黄色い花は、皆似ていて同定が難しいのです。ミツバツチグリ、キジムシロは、ヘビイチゴ、ヤブヘビイチゴ、オヘビイチゴ、ツルキンバイなど。特徴があるので、花だけでなく萼や葉などもきちんと見なければなりません。
ゴヨウアケビの花。実が大きく食用になるミツバアケビはもう少し標高の低いところにあります。
ホタルカズラも一斉に咲きだしました。つぼみは赤紫で開花すると青色になります。花の直径は10ミリ足らずなので、よく探さないと見逃します。イカリソウも咲き始めました。
クサノオウも咲き始めました。妻女山の登り口にたくさん咲いています。遠足で子供達が登る頃に咲くので、引率の先生に触らないでと言ったことがあります。それで、子供達に里山の話をしてくださいと言われて、拙書を見せながら色々話したことがあります。
有害帰化植物のハルザキヤマガラシ。遠目で見ると菜の花に見えます。近年、堤防や野原、里山や高原にまで繁殖している問題の帰化植物です。見たら引き抜いて欲しいです。
ヤマフジも咲きました。見ると綺麗なんですが、成長して根本が50センチにもなると、大木にも絡みついて枯らしてしまいます。そんなわけで、陣場平のヤマフジは全て除去しています。
国道403号の妻女山入り口から見る妻女山(赤坂山)。上信越自動車道のトンネルをくぐって舗装路を登ると妻女山展望台と招魂社の奥に駐車場があります。陣場平や天城山(てしろやま)、鞍骨山(鞍骨城跡)には、そこから登ります。陣場平までは30分、天城山までは60分、鞍骨山までは90分が目安です。
来週あたりから淡竹の筍を目当てに鏡台山から親子連れの熊が出てくるので、熊鈴とホイッスルを必ず用意してください。出会ったときは、悲鳴をあげず、だいじょうぶだからねと言いながら静かに後退りしてください。熊は本来臆病です。背中を向けて逃げたら必ず襲われます。拙書の「猫にマタタビ、月の輪熊に石油」のエッセイに詳しく記しています。
◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。
★本の概要は、こちらの記事を御覧ください。
★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。