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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

白いステンドグラスの様なウスバシロチョウが舞う陣場平。ホタルカズラ、シュンラン、リュウキュウツツジ、シナノタンポポ(妻女山里山通信)

2023-04-29 | アウトドア・ネイチャーフォト
 ゴールデンウィーク初日は晴れ。在京時代はアート・ディレクターといえどもサラリーマンなので、家族を連れて深夜とか早朝に信州とかに出ましたが。観光地や名所は大混雑なので遠出しないのが帰郷してからの慣例です。花後の貝母の保全作業もあります。9時過ぎに陣場平へ。すでに鞍骨城跡に向かった人達がいたようです。

 なんとウスバシロチョウが1頭だけですが舞っていました。初見です。こんな早く目撃したのは初めてです。ウスバシロチョウ(薄羽白蝶)チョウ目アゲハチョウ科ウスバアゲハ亜科。別名はウスバアゲハ。アールヌーボーのステンドグラスのランプシェードのような翅は僅かに透けています。北欧から中近東の山岳地帯、ヒマラヤ、中央アジア高原などに棲息する北方系の蝶で、氷河期の生き残りです。そのため古典的な蝶といえるわけです。バタバタと羽ばたいて滑空するあまり飛ぶのが得意とはいえない様が、なんとも愛嬌があります。幼虫は、ムラサキケマン、ヤマエンゴサクなどを食べます。

 その幼虫の食草のシロヤブケマン(白藪華鬘)。結実し始めました。ムラサキケマンの白花で、花びらの先端が紫。全部真っ白なのはユキヤブケマンです。

 貝母の花はほとんど散り結実がたくさん見られます。ハナアブとミツバチ達に感謝です。いい仕事してくれています。ラウンドアップなどのネオニコチノイド系農薬を使うと、ハナアブやミツバチは全滅し農業が成り立たなくなります。原料のグリホサート剤も同様。発がん性が強く絶対に使ってはいけません。

 貝母の群生地にある苔むした倒木脇にアカネ(茜)の群生。染色に使います。ヘビイチゴは咲いています。もうすぐキジムシロも咲くでしょう。背後には山蕗が。小一時間採りました。干しホタルイカと煮物にします。大きくなったらソフト鰊と。土を喰らう十二ヶ月の滋味です。

 眩しい日差しに光る貝母。中央にウスバシロチョウが舞っているのが分かるでしょうか。5月中旬には数え切れないほど舞います。初夏の信州は、里山から高原まで本当に素敵です。ぜひおいで下さい。

 貝母の実。直径12ミリぐらいに育っています。最終的には30ミリぐらいになりホウセンカのように弾けます。

 前回エノコログサ(猫じゃらし)を除去した穴を掘り下げ、さらに移植用の穴を掘りました。土は柔らかいのですが、ノイバラの地下茎があってそれを切りながらの作業は腰に来ました。ここに移植します。弾けた種は西に飛ぶので向こうに見えるベンチまで群生は数年で増えていくことでしょう。

 試しに森の奥に散った株を移植してみました。小さな株なので球根もそう大きくはありませんが、来春には開花します。梅雨入りまでにメンバーを集めて2回ほど除草と移植作業をします。

 シロヤブケマンの葉にアカスジキンカメムシの5齢幼虫。背中が人の顔みたいで面白い。成虫になると緑に赤のラインが入って全く別のデザインになる変身昆虫。

 山蕗の葉にアシブトハナアブ。複眼が離れているのでメス。

 ホタルカズラが次々に咲き始めています。赤紫は蕾。

 シュンランはどうなったかなと行ってみたらまだ咲いていました。花期が長いのです。アリが訪問中。

 昼は堂平大塚古墳へ。純白のリュウキュウツツジが満開です。300年前ぐらいに作られた園芸種のツツジ。北アルプスを眺めながら、小鳥のさえずりを聞きながらまったりとランチタイム。

 米が切れそうなので籾米をもって精米のために下山します。12キロ200円。道すがら咲き始めたクサノオウ。(瘡の王) ケシ科クサノオウ属。別名は、皮癬草(ひぜんくさ)。生薬名は、白屈菜(はっくつさい)といいますが、非常に毒性が強いものです。瘡(くさ)・丹毒(たんどく)・湿疹を治す薬効があるために、くさ(瘡)の王と呼ばれるようになったとか。茎は中空で、折ると白汁が出て、橙黄色に変化します。花に触らないように。
 以前遠足の子供達が触っていたので先生に話したら、子供達に話してくださいと言われて拙書を見せながら妻女山山系の自然を分かりやすく話したことがあります。
 花にヤブキリ(藪螽蟖)の幼虫がいます。幼虫の頃は、花粉や花弁を食べ、成長すると肉食性になり昆虫を捕らえて食べるようになります。

 シナノタンポポの群生ですが、ここだけ茎が赤いのはなぜでしょう。シナノタンポポ(信濃蒲公英)在来種カントウタンポポの亜種で、ともに染色体数が2倍体なので受粉しないと種子ができません。外見上は、写真のように総苞片全体の大きさが太く、外総苞片と内総苞片の先端の小角突起とが全く無く、緑色した外総苞片と内総苞片の色の濃さが薄いなどの特徴があります。

 妻女山展望台から望む北アルプスの白馬三山。手前右に茶臼山。その右奥に虫倉山。いずれも自然豊かな歴史ある里山で、切所でも詳しく紹介しています。今夜から明日の午前中は大荒れになりそうです。北アルプスなどに登っている人は早めの避難を。2000m以上は冬山です。里山も強風時は落枝や倒木があり非常に危険です。まず安全を第一に。

 作業と撮影の合間に山蕗を採りました。干しホタルイカと煮ます。生でも茹ででもだめ。干しホタルイカでないと出汁が出ないのです。採りたての若い山蕗はアクが少ないので茹でこぼしは一度だけ。毎日火を入れて3日ぐらいから味が染み込んで美味しくなります。山蕗がもう少し大きくなったら味の濃い鰊との煮物にします。初夏の里山の滋味です。

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