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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

秋の気配漂う樹液バーとギャップに咲き乱れる仙人草。ミンミンゼミの交尾(妻女山里山通信)

2016-08-27 | アウトドア・ネイチャーフォト

 この夏は晴れの予報でも雲が多く、撮影が全く捗りませんでした。そうこうしている内に秋の気配が漂い始めました。クマノミズキの小枝が赤く染まり始めました(左)。晩秋には珊瑚のように真っ赤になり、実も濃紺になります。シオカラトンボのメス(中)。尾部付属器が開いていて中央に小突起があります。俗にムギワラトンボといわれますが、未成熟なオスもこの色ですが、眼が未成熟の薄茶色ではなく黒いので、これは成熟したメスですね。畑の害虫として知られるマメコガネ(右)。山ではマメ科の植物やクヌギなどを食べます。鳥やスズメバチが天敵ですが、土壌中のバチルス・ポピリエという乳化病菌が幼虫に寄生するため大量発生を抑えているということです。つまり、農薬の空中散布などで土壌汚染されて細菌が死ぬと大量発生の可能性もあるわけです。

 樹液バーで吸汁中のオオスズメバチのもとへヒメスズメバチが飛来しました。これだけ大きさが違うと全く勝負にならないことはヒメスズメバチも分かっていて、上側に反転して留まりました。隙をついてなんとか吸汁しようとするのですが、すぐにオオスズメバチに排除されてしまいます。少し離れた所で待機。チャイロスズメバチもやって来ましたがあっけなく排除されました。厳しい世界です。

 このオオスズメバチですが、既に1時間以上ずっと吸汁を続けています。この樹液バーは、太いコナラの根元部分にあり、樹液が豊富に出るため発酵して白く結晶化しています。よってアルコール分もかなり高めなのでしょう。このオオスズメバチは既に泥酔状態なのです。目の前にヤセバエがやって来たのですが気がつきません。向こう側にはルリタテハもやって来ました。

 泥酔したオオスズメバチが樹液バーを離れ、ヨロヨロと木を登り始めましたが、途中でよろけて落ちそうになったりしています(左)。思い切り顎を開いて、もう吐きそうという感じです(中)。実際は何をしているのか不明ですが。その内、地面に落ちて同じ所をクルクルヨタヨタ回り始めました。この間に、ヒメスズメバチやルリタテハは一斉に吸汁を始めました。しかし、20分後に2匹のチャイロスズメバチが飛来し、排除されました。
 そして、その10分後になんとまたあのオオスズメバチが戻ってきてチャイロスズメバチを排除し、また吸汁を始めたのです(右)。オオスズメバチの体重は、人間の一万分の一ぐらいなので、人間にとっては感じられないほどのアルコール量でもオオスズメバチは充分に酔うのでしょう。いきなり飛び立って撮影中の私の顔面に激突したり、飛び立つのに失敗して地面に落下したりしたこともありました。

 隣のコナラにある樹液バーにアカタテハが飛来し吸汁を始めました。成虫で越冬し、早春から舞い始めます。幼虫の食草は、イラクサ科のカラムシ(茎蒸)、クサマオ(アオソ:青苧)、ヤブマオ(藪苧麻)など。青苧は、上杉謙信が栽培を奨励し、糸や布で利益をあげていたことは有名です。この後、オオスズメバチとヒメスズメバチが飛来し、排除されてしまいましたが、わりとすぐにいなくなったので、また樹液にありつけました。

 この所、樹液バーにはチャイロスズメバチが多く飛来する様になりました(左・中)。小さいハチですがかなり攻撃的です。千曲市による松枯れ病の空中散布で昆虫が全滅した昨年でしたが、夏の終わりに20匹以上のチャイロスズメバチだけが飛来し、撮影しようと車外に出たところで襲われ、危うく刺されまくるところでした。オオスズメバチには敵いませんが、やや大きいヒメスズメバチなら簡単に撃退します。社会寄生を持つハチです。樹液バーでの撮影も、シーズン終わりになると、顔の横でスズメバチがホバリングしたり飛び回っても平気になります。不感症になったわけではなく、間合いや虫達の気分が分かるようになるのです。来シーズンになると、またすっかり忘れていますが…。
 昼に友人のログハウスへ寄り弁当を食べた後、前の草地でシロツメクサで吸蜜するヤマトシジミを撮影(右)。

 その帰りに陣場平に寄って帰化植物のオオブタクサを探して除去。帰ろうと林道への小道を歩いて行くと足元でガサガサと音がします。見るとミンミンゼミが交尾中でした。オスメスを判別するためにそっとつまんでひっくり返しました。少しバタバタしましたが離れることはありません。左下が腹板があるオスで、右上がメスでした。本来は木の幹に掴まってするのですが、何かの拍子に落下したのでしょう。以前撮影したアブラゼミの交尾も林道の真ん中でした。交尾は30分以上続きます。無防備なので交尾中に襲われることもあるでしょうね。

 陣場平とその手前のギャップでセンニンソウ(仙人草)が咲き誇っています。まだ蕾も多いので、満開になるのはもう少し先。いい香りのする野草ですが毒草なので、葉や茎の切り口に触れるとかぶれることがあります。

 そのギャップの奥で見つけたつる性植物(左)。花は小さく、直径が10ミリぐらい。花期は終わりを告げていてほとんどが結実していました。緑色の実は、熟すと紺色から黒になっていく様です(中)。葉は小さく繊毛があります(右)。これが調べてもなかなか種名が分からず難儀しました。手持ちの図鑑でやっと判明。ナデシコ科のナンバンハコベ(南蛮繁縷)でした。別名は、ツルセンノウ。南蛮とつくので帰化植物かと思いましたが在来種で、その異国風の花の形からの命名だとか。

 帰りに妻女山展望台へ。松代方面を撮影。珍しく根子岳と四阿山が見えていました。両山とも拙書で詳しく紹介しています。根子岳は、県の天然記念物のミヤマモンキチョウが生息します。こちらが撮影に成功した記事です。わずか3分間の出会いでした。四阿山は、真田氏に深い関係を持つ修験の霊峰です。こちらが四阿山から根子岳縦走の記事です。上空に巻雲が出ていました。秋ですねえ。左のロケットの打ち上げ雲の様なものは何でしょう。

 上杉謙信が本陣としたという斎場山(旧妻女山)。左へ15〜20分下ると妻女山展望台(旧赤坂山)。右へ10分ほど下ると、土口将軍塚古墳、次に薬師山。こここから鏡台山までの広い山域も拙書では詳しく登山コースを紹介しています。蝉の鳴き声がここまで聞こえてきます。

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本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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■『国分寺・国立70Sグラフィティ』村上春樹さんの国分寺「ピーター・キャット」の想い出。

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