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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

天城山林道のカタクリとキブシ。妻女山陣場平の満開の貝母をフィッシュアイで撮影。春爛漫(妻女山里山通信)

2023-04-10 | アウトドア・ネイチャーフォト
 春爛漫の信州は、猛スピードで駆け抜けていきます。うっかりしていると撮影チャンスを逃してしまうのでうかうかしていられません。天城山林道のカタクリが咲き始めたという情報をもらったので行きました。髻山の様にびっしりと群生しているわけではありませんが、林道の上下にかなり広い範囲で群生地があります。

 カタクリ(片栗)ユリ科。別名カタゴ、カタカゴ(堅香子)、ハツユリ(初百合)。種にアリが食料とするエライオソームという物質がついているため、アリによって運ばれるアリ散布植物です。日本にはアリによって増えるアリ散布植物が200種以上あります。左上の光っている線は蜘蛛の糸。

 花は温度により開閉します。17-20度で開花し、25度では完全に反り返り始めます。気温はそれほどなくても、直射日光に当たると花びらの体温が上昇するようです。

 少し変わった構図で。バックの色合いが面白いので載せました。妻女山山系にはヒメギフチョウはいませんが、聖山とか子檀嶺岳へ行くとカタクリで吸蜜するヒメギフチョウが見られます。陣場平では、ヒメギフチョウと間違いやすい春型のキアゲハが舞っています。鶯も鳴き始めました。まもなくサンコウチョウも。

「もののふの 八十(やそ)乙女らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子(かたかご)の花」大伴家持(万葉集)
 当維持29歳の大伴家持が、赴任先の越中国府の伏木(現在の富山県高岡市伏木に5年間赴任)で、寺井の井戸(井泉の跡と歌碑がある)の周りにたくさん咲くカタクリを宮中の乙女になぞらえ、都を懐かしんで詠んだ歌だといいます。そう思うと写真のカタクリが、美しい乙女に見えてくるから不思議です。
 もののふとは、宮廷に仕える文武の官のことで、物部と書きます。八十(たくさんという意味)にかかる枕詞ですが、数が多い氏と発音の同じ宇治川の宇治から、宇治川を導く枕詞となったということの様です。昔もやたらと役人が多かったのでしょうか。もののふとは、後に武士そのものを指す言葉に変化します。

 キブシ(木五倍子)。キブシの髄はスポンジ状で、昔は灯芯などにも使われたようです。髄を取り出すと中空になるので、酒樽の呑み口にも使われたとか。また、江戸時代には既婚の女性はお歯黒にする習慣がありましたが、キブシの実も利用されました。釘や鉄粉を食酢につけて酸化した液に、ヌルデの実、五倍子(ごばいし)やキブシの実の粉末をつけて、歯につけると黒く染まるそうです。

 すごく小さな花なので花の中は肉眼ではよく見えませんが、アップにするとこんなです。

 陣場平へ戻る途中の眺め。松代城の桜はすでに葉桜です。寒の戻りで、信濃町のリンゴには霜被害が出たとか。黄砂も心配です。

 陣場平へ。今日は十数人の団体さんをはじめたくさんの方が訪れてくれました。できるだけ2009年4月の発見からヨシやノイバラ、オオブタクサやハルジオンなどとの壮絶な格闘の保護活動の歴史や、貝母の生態をお話する様にしています。今回はフィッシュアイレンズ(魚眼レンズ)で撮影してみました。左手前から右奥に続く小道の左は、手前が昨年、その向こうは2年前に球根の移植作業をしたところです。メインの群生地は小道の右側です。

 南東の角から。これでも全体は入りきれていません。訪問者は、想像以上に大きな群生地ですねと驚かれます。ここは、川中島合戦の際に上杉謙信が本陣としたということで、古くから陣場平と呼ばれています。

 下の入口から登ってくると、群生地を真横から見ることができます。さく果の種が弾ける時はたいてい東風(こち)が吹くのですが、手前の貝母は南風の時に弾けたのでしょう。北風や西風で周囲に散ってしまった貝母は、球根を掘り起こして中央部に移植します。

 今日はたくさんの方とお話ができました。そんな中で色々な情報を得ることも多いのでなるべくみなさんとはコミニュケーションを取る様にしています。帰りに妻女山展望台に寄りました。千曲川の向こうに戸隠連峰と飯縄山。左には茶臼山と北アルプスの白馬三山が見えます。

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