彼女はもはや男性です。手に持っているのは、準聖者の資格のしるしである、青水晶の小杖。彼らのしるしであると同時に、大切な魔法の小道具。聖者の杖に準ずるもの。
さて彼女、いや彼は、上部に上がり、眼前に広がる風景を見る。
そこには、蒼い鋼の山があり、水素の氷河に星明かりの虹がかかっていた。植物の霊は、ごく稀にしかいなかった。鋼の山に、かろうじて生きる苔が、彼(彼女)にささやく。
あなたも来たか。ここはもはや、わたしたち植物が、愛で慰められるところではない。あなたは、自分の傷を、すべて自分で慰めねばならない。だが、あなたにはできるだろう。あなたはもはや、あの垣根を越えてしまったのだから。あなたならば、自分で、植物を、草原を、森を、作ることもできるのだ。
最初の指導者が、彼(彼女)の前に現れた。彼は彼(彼女)の前に一つの光る印を描き、それを手本にして魔法を行えという。彼(彼女)はその印を見て驚く。こんな方法があったのか!これができるのか、ここの人たちは!これをやるには、次元の壁に、手をつっこまねばならぬ。それをやれば常人ならば手が砕ける!
だが、やれと言われれば、やらねばならない。彼(彼女)は青い小杖をペンのように舞わせ、正確にその印を描き、ある一画に差し込もうとして、次元の壁に跳ね返され、思い切り後方に飛ばされた。指導者はただ冷たく彼(彼女)の様子を見守っている。彼(彼女)は、はあ、と重い息をつき、再び立ち上がる。そしてまた挑戦する。また跳ね返され、倒れる。だがまた、立ち上がる、跳ね返される。全身に傷を負い、骨が痛む。彼(彼女)は、できる魔法で自分を植物の霊に近づけ、愛で自分を癒すと、また、その印に挑戦する。
そしてそれが、何度続いたか。やっと、彼(彼女)の小杖は、次元の壁を抜け、その一画をいかにも正確に、見事な光の線で描いて見せた。
印は見事に空間に浮かび、愛の鍵として神の魔法のシステムを動かし、水素の氷河の一角を溶かして、虹を消し、鉄紺の空にオーロラが揺れた。
彼(彼女)は、次元の壁を突き抜けて傷ついた自分の手の、にじんだ血をなめながら、にやりと笑う。なんてことだ。これが、男か。おもしろい。なんて、苦しい。
さて、次は何だ。早くやりたい。男を、やりたい。