フィリッポ・リッピ、15世紀イタリア、初期ルネサンス。
美しい女性像だが、この人は心を閉じている。モデルは画家に誘惑されて駆け落ちした修道女であるらしい。情にほだされてやったものの、本意ではなかったのだろう。画家は好色な性質であったらしく、モデルの美しさをこれでもかと追及しているが、その絵の中には、自分の表面的な美しさしか見ようとしない男に絶望した女性の心が描かれている。美しさを見つめているうちに、画家は女の心まで描いてしまったのだ。結局は、美しさの元は心の姿だということなのだが、男は決してそれをみとめたがらない。女性はそういう男の幼稚さに、長い間耐え続けているのだ。