ジョヴァンニ・ビリヴェルト
テッサリヤのペネイオス川の河神の娘ダフネは、活発で美しいニンフだった。できるならアルテミスのように結婚もせず自由に生きたいと思っていた。そんなダフネを、ある日通りかかった太陽神アポロンが見初めた。アポロンは恋心のままにダフネを追いかけた。男のものになりたくないダフネは逃げた。アポロンが自分の身分をあかしてやさしく声をかけても、ダフネは耳も貸さずに逃げ続けた。だが男に足の速さでかなうわけがない。とうとうアポロンにつかまりそうになったとき、ダフネは父の河神ペネイオスに助けを願った。ペネイオスはそれをかなえ、ダフネを月桂樹に変えた。彼女を惜しんだアポロンは、月桂樹を自分の木とし、この木の枝で作った冠を芸能や競技の勝利者に与えることにした。
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この神話をテーマにした絵に傑作を見出すのは難しい。それは女性に拒否されることが、男にはとてもつらいことだからでしょう。ダフネのように、男に縛られずに自由に生きたいと望んでいる女性はいます。しかしそれは今の世界では望むことのできない幸せだ。男が女を永遠支配したいという願いを取り下げない限り、女性にその幸せはない。そんな願いを通そうとすれば、ダフネのように木にでもなって消えていくよりない。