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ギュスターヴ・モロー
アイアイエーの近くのカプリ島には、シレーンという魔女がすんでいた。そこを通りかかる船の船乗りたちを、美しい声で誘うのだった。その歌を聞いたものは心惹かれ、狂ったように海に飛び込んで、この島に泳いでいく。するとシレーンたちはその男たちを鳥のかぎづめで引き裂いてしまうという。しかし、もしだれかが彼女たちの歌に迷わないで無事に通り過ぎれば、シレーンたちはそれを恥て死んでしまうという。オデュッセウスがこの海域を通り過ぎた時、彼は自分を船のマストにしばりつけて耐えたという。
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水と女性の妖怪の結びつきは太古からあったようです。女性は柔らかい。水のように人生を潤してくれる。だがそれが荒ぶるとき、恐ろしい渦となって人を飲み込むときもある。それがシレーンやローレライなどと言った、船乗りを迷わす女性の妖怪のようなものになったのでしょう。弱さゆえに暴虐の犠牲になり消えていった女性たちの恨みの化身とも言える。何もないことにして滅ぼした女性の姿は、このような形で必ずこの世界に現れてくるのです。