イヴ・冤罪

最初に、アダムが、いやだと言った。
セックスを、いやだと言った。
なぜなら、セックスが、とてもすばらしかったからだ。
それゆえに、セックスをいいと言ってしまえば、
自分よりイヴのほうがえらくなると恐れて、
彼はセックスを馬鹿なものにしてしまい、
すべてを、イヴのせいだと言った。

しかしそれから、男はみな、セックスがしたくてたまらなくなった。
女は、セックスをして、男に馬鹿にされるのがいやで、セックスをしたがらなくなった。
そこで男は、女にセックスをさせるために、あらゆることをやらねばならなくなった。
彼らは男がどれだけすばらしいかを、女に見せるために、たくさんのことをやった。
しかしその多くは、実際、嘘だった。男はほとんど、嘘で女をだまして、セックスをさせた。

裏でずるをやり、嘘をついて人をだまし、かすめ取ってきた立派な獲物を女に見せ、自分の力を誇示した。そしていかに女が馬鹿であるかと、教え続けた。立派な男がいないと、女はだめになると、教え続けた。

男は、一旦ついた嘘を本当にし続けるため、嘘をつきつづけなければならなかった。
そして、どんどん、どんどん、嘘の深みにはまり続け、世界に、さまざまな意地悪やほくそ笑みやおぞましい魔のはびこる温床を延々と作り続けた。
そしてとうとう彼らは、これ以上行くと、すべてを嘘にするしかないというところまで来てしまった。
それは、すべてが死に絶え、絶望の中に消滅していくという意味だった。

滅亡の崖の際まで、なぜ男は、走り続けたのか。
その理由はただひとつ。

イヴが、いかにも、美しく、すばらしい女だったからだ。