子曰く、君子は言に訥にして、行ないに敏ならんと欲す。(論語・里仁)
先生は仰った。「ぐだぐだいうとる暇があったら、とっととやらんかい!」
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少々品のない訳になってしまいましたが、正しくは、「君子は言葉少なく、行動にはすばやくありたい」と訳す方があってるのでしょう。
テレビを見ていると、いろんな人がいろんなことを言っていますが、なんだか聴いていてもよくわからないような、政治評論だの、人物批評だの、所信表明だの、未来計画だの、いろいろ。言葉は飛び交っているのだけど、はてさて、その言葉がどこに行って、何をしているのかは、さっぱりわからない。
かたおかにつゆみちて
あげひばりなのりいで
かたつむりえだにはひ
かみそらにしろしめす
すべてよはこともなし
(ブラウニング)
何がうまくいっているのか、世はめちゃくちゃなのに、ここは平和そのものだ。
わたしはきょうも
せんたくものをほしに
べらんだにでて
ひがしのそらの日をあおぎ
きょういちにちみなぶじであるようにと
てんのかみさまにいのる
(てんこ)
はたして、世界を動かしているのはだれなのだろうな。少なくとも、テレビの中で千万言を吐いている人たちではなさそうだ。
真実を言うと、みなが一斉に黙れといって集まってくるこの世界。だまっていなければ、この嘘の舞台が壊れてしまうから。だから誰も、はっきりとした真実をまっすぐには言えない。きれいな隠喩に溶かして、あるいは、のらりくらりと痛いところをよけながら、巧みな表現で上手に取り繕う。その結果、誰も何もわからない。言いはするが、誰も何もしない。自分でも何を言っているのかわからないようだ。一体だれが、この世界を動かしているのか。誰が何をやって、何とかなっているのか。不思議なことだ。誰も知らない。
君子は言に訥にして、行いに敏ならんと欲す。
少なくとも、一言は、言った方がいいのだろう。それでないと、誰も本当のことをやらない。やりはじめない。ちょっとは黙って、やるべきことをやれということを、まるでやらない。さて、こういうわたしに、言えることはなにか。
「もうやめなさい。馬鹿なことは」
こういうところでしょうか。まるで小学校の先生のお説教のようだ。
やるべきことの本当の道は苦しい。やって来なかった宿題が山積している。けれどその道を行かねばならない。そろそろ、やりなさい、宿題を。
おかあさんのお説教だな。