「腕」の編に出てきた魔法学者です。力高く威厳のある女性とはどういう人だろう?と考えたのが、物語の始まりでした。彼女は相当高く学び進んでおり、強い力と高い知恵の持ち主であり、氷の塔のような高い誇りを持っている。しかし、女性であるがの故の弱さもまた、持ち合わせている。
最後に彼女が自分の腕を犠牲にして、仕事を全うしたのは、大事なところでどうしても自分を譲ってしまう、女性の持つある種自己犠牲的な性質が表面に現れたのかもしれません。女性はやはり、男性のように、非情にはなりきれない。愛には、かなわない。
「愚かねえ」と彼女が言ったのは、「女は、ほんとに愚かね」と言いたかったのかもしれない。
あの場面で、彼女が女性でなく男性だったら、もっと別の選択をしたかもしれません。男性の方なら、どうしますか?
「助手」
犬の顔を描くのは難しかったですが、なんとかそれらしく描けました。
彼がなぜ犬の顔をしているのかは、後に、何となく納得のいく理由がわかりますが、本当は彼も、相当力をつけている魔法使いであり、全く人間の姿になることはできるのです。でもあえて、顔だけを犬の容にしているのは、尊敬しつつ師事している魔法学者を、女性としてみてしまうことを、用心深く避けるためではないかと推測しています。
彼は賢いので、もちろん女性を男性より劣ったものだと思うことはありません。魔法学者の高い知恵と力に驚きを感じ、感動もしている。常に敬う態度を失しない。だが時に、女性というものの、知を超えた不思議さを感じざるを得ない。
男と女との間には、理論理屈では計算することのできない、何かの情感がわき出る泉が、何かの拍子にふと生まれてしまう。
最後のシーンで、魔法学者が少女のように助手に甘えて、助手が男性らしい優しさでそれにこたえるところは、わたしの好きな情景です。
思わず微笑んでしまいたくなります。