愛を学ぶためには
それを失うことが一番なのだ
だから若者は
木に打ち付けられて死んだ
十字架は
伐り倒され滅びていく
森の予言でもあったのだ
冷酷な悪魔のように
神の愛の大きさが
かえって人を苦しめることがある
人間の小ささこそが
龍のように巨大な心の闇を生むものだから
驕慢の飾りが少しでも
自分を大きく見せるものなら
時にはどうしようもなく迷ってしまう
それが人間というもの
もの言わぬ森の愛を背負って
若者は滅びていく
その向こうには
光が潮のようにひいていく世界がある
彼はそれを指差して言う
さあ行こう
暗がりの時を乗り越え
その向こうでもう一度出会うために
たとえ最後の森が焼き尽くされても
世界はたった一つの種の叫びでよみがえる
必ず
光よ 再びあれ
と
(2003年ごろ)