最近マスコミやブログ上で安倍さんの批判に対する批判が厳しくなっている。
然しその中には今回の社保庁の年金問題のように、政権与党である自民党の責任ではあるが、必ずしも安倍さんが直接責任とは言えないものもあるようだ。
それで無党派を自認する私として、もう少し公平な眼で今までの安倍さんの手法、実績を小泉さんのそれらと比較しながら考えてみたい。
[基本的な主張]
小泉さん:自民党破壊、改革実行、米国一本槍の外交
安倍さん:「美しい国」、主張する外交、戦後レジームの脱却、教育改革
私は安倍さんの主張には基本的には賛成だ。
然し、安倍さんはその手法と相まって、戦後レジームの主張を戦前への回帰→軍国主義の道へ導びこうとしていると一部の人達やマスコミから批判を浴びている。
私は安倍さんが言わねばならぬし、多分本当に言いたかったのは、戦後レジームでなくて、小泉体制からの脱却だったと思うのだが。
[内閣の陣容]
下記のメンバーを見て直ぐ判るのは、小泉さんは次期総理大臣になりそうな有力者を揃えているのに比して、安倍さんは麻生さんを除いて小粒な人ばかりで仲良しグループ内閣と揶揄されのも判るような気がする。
[安倍内閣] [小泉内閣(三次改造)]
総務大臣、郵政民営化担当
菅 義偉 竹中 平蔵(経済財政政策)(金融経済財政政策)
外務大臣 麻生 太郎 麻生 太郎
財務大臣 尾身 幸次 谷垣 禎一
文部科学大臣 伊吹 文明 小坂 憲次
厚生労働大臣 柳澤 伯夫 川崎 二郎
農林水産大臣 松岡 利勝 中川 昭一
経済産業大臣 甘利 明 二階 俊博
防衛大臣 久間 章生 防衛庁長官 額賀 福志郎
内閣府特命担当大臣
(経済財政政策)
大田 弘子 与謝野 馨(経済財政・金融)
組閣時にブログでも書いたが、安倍さんは伊吹、柳澤、松岡、久間さんなど以前から官僚の言いなりになるような人や、とかく噂のある人達を入れた。
そして心配した通り、佐田、松岡、久間さんの辞任または死亡を招いた。
なお安倍内閣のイメージを悪くしたのは、安倍さんが彼ら(最近では赤城さん)を徹底的に庇い結果的には安倍さん自身のイメージまで悪くさせる原因となった。
小泉さんの場合も組閣の失敗もあったが都度改造で入れ換えて乗り切ってきた。
安倍さんは良く言えば、彼の部下を思う暖かさから庇ったのかもしれないし、小泉さんは郵政改革反対の人を追放した冷酷さを持っているのかも知れないが、世論はそんな首相の人柄など何も言うわけない。
[人の使い方]
内閣の陣容から判るように、小泉さんは内閣の人達を活用し大臣達もそれに応えてきた。特に改革の重要な所には現職に恋々としない、竹中さんを随時配置し彼も思い切ってそれだけのことをしてきた。
端的に言えば小泉さんの諸改革は担当大臣と竹中さんと道路公団の猪瀬さんがやったようなものだ。
小泉さんが直接に手を下したのはイラク派兵くらいのものだ。
彼らがやってきたこと自体の評価は別として、確固たる信念を持ってそれらの人達を動かした小泉さんが評価されるのは当然だ。
それに比して安倍さんには信頼して任せる事が出来る部下もなく、全ての重要案件に対して首相が自分で決めるしかなかった。
だからその諸施策に色々の批判される余地があるのはあるのは当然だ。
小泉さんも安倍さんも、それぞれの形でリーダー・シップを取って来たがその成果は全く異なるのはいたしかたない事だ。
[復党問題]
郵政改革反対者の一部の人達の復党で自民党はまた支持率を下げた。
この場合ももし安倍さんが前にも書いた様に、当初から、小泉体制の脱却を宣言していたら、或いは亀井静香さんや平沼赳夫さんなどを含む全員の復党も果たして、今のように参院選で慌てずに済んだかも知れないし、その安倍さんの決定に、小泉さんの独裁的な態度に疑問や懸念を持っていた国民から喝采を浴びていたかもしれない。
然し事実は復党者に踏み絵を踏ませる様な屈辱を与えて、党と安倍さんののイメージを落としてしまった。
これも安倍内閣発足時、小泉体制の継続を言った彼流の気配りが裏目にでたのだと思う。
[今批判されていること]
思いつくだけを並べてみると、
1.明らかに小泉さん以前からの問題
・5千万と言われる消えた年金問題
・給与・社会格差、フリーターの問題
・改革の名のもとの国民の負担の増大
・景気上昇の実感がない
・医師の偏在などの医療不安
・復党問題
年金や復党問題は既に触れたが、これらは小泉改革またはその以前から抱えていた問題の後始末だ。
2.安倍さんの時代以後の問題
・閣僚に任命責任、赤城さんをを含む問題閣僚を庇う。
すでに触れた。
・小手先の諸施策
前々からの懸案の教育三法な、国民投票法などを除いた安倍内閣になって以来の諸法案や施策は皆小手先の対策ばかりで、党内からも批判がでる始末だ。
殆どの諸施策の発想を諮問委委員会に任せたり、安倍さん一人で考えた結果が、これくらいの施策で終わったのだろう。
・慰安婦問題に対する発言
・ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)が労働時間短縮に繋がると発言
以上二つの発言は日本を預かる首相にしては軽率、不勉強と言われても仕方がない。
・日本の右傾化
一方では憲法改正を選挙の争点にすると言い、同じ時期に集団的自衛権討議のパネルの設置を決めるなど、一部のメディアや政治家、批評家から日本を軍国主義に導こうとしているのではないかと言う批判を受ける原因となった。(実は批判する人は本心ではそうで無い事を知っていてだ。)
<<安倍さん批判の分析>>
安倍さんの治世に新しく起こった事への批判と、その以前に起こったことに対する批判の内容の重要度は遥かに後者の方が大きいのは直ぐ判ることだ。
だがその対処の仕方が拙い事が多かったのは事実だ。
前にも書いたが、ハマコーさんがテレビで言っていた。
「安倍さんは小泉政治との決別を宣言しなさい。」
然し、そう彼は言わずに小泉政治の継承を唱えた。
それは安倍さんが小泉さんの下で官房長官をしていたからで彼なりの配慮だったのだろう。
そしてやってきたことは、小泉さんのしりぬぐいだ。
そしてその点についてマスコミやブログで批判を浴びているのだ。
某ブログで言っていた。
安倍さんは「おそらく気持ちの優しい人なのだろう」「根は悪くないのかもしれない」。
お人好しを自認する私もその言うことも、安倍さんの気持ちも良く判る気がする。
しかし政治の世界では小泉さんのような冷酷さもたまには必要になるのだろう。
それを欠く安倍さんは首相として色々の批判を受けるのは当然だ。
然し彼の考えは筋が通っていると思うし、その人柄から考えても、日本のリーダーとしては有用な人材の一人だと思う。
これからどう政局が動くかは判らない。
唯一つ言いたいのは、安倍さんの治世以前の尻拭いの批判など、彼に取って不公平な批判や、小泉改革のつけや多年の年金問題が一度にふりかかった新米首相の政治手法の拙さへの批判で、彼を完全に潰すようなことは日本として勿体ないと思う。
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