このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
私は母が経営する理容所に勤めて二年になるが、親子とはいえ相容れない部分もあって、おもに息抜き目的で毎週一回、土曜日に隣町の理髪店へ留守番を兼ねたアルバイトに行っていた。
そちらの女店主は娘夫婦から土日の孫の世話を頼まれ、しぶしぶ出かけて行く。
「私はまだ若いしこのお店のことがあるからホントは孫の面倒など見てられないのよね。」
毎週土曜日、私はそんな店主を送り出すとまずは一通り店内の清掃を行ない、ぽつりぽつりとやってくる彼女の常連さんたちをカットして、午後7時には店仕舞いするというのが決まった一日の流れだった。
ある時私は友人の結婚式に出席するためアルバイトを休み、店主の願いもあって母の店の同僚に代役を依頼した。
翌日、出勤してきた彼女は私の顔を見るなり笑いながら言った。
「あなたの常連さん、私を見てがっかりしてたわよ。私はピンチヒッターで、来週からまたあのコが来ますって話したら、ほっとした顔をしてたっけ。憎らしいわねえ。」
私の常連さん?
あのひとかな、と思った。
店主の古いおなじみさんではなく、私があの店でアルバイトするようになってからふらりと現れたひと。
私も口数が少ない方だが、そのひともお店のドアを開けて入ってきて、案内されたイスに座るとほとんど口を開かない。
尋ねればこういう風に切って欲しいだの、答えてはくれるが。
もう何度カットしたろう。
でも、私みたいなお世辞一つ言わない、ひょろひょろやせた女に興味なんてあるわけないし。
「あなたのこと、『いつもの、あの丁寧なひとは?』って言ってた。フフフ、丁寧なひとですって。」
そうか、私は丁寧なひとってジャンル分けされているのか。
ちょっとくすぐったいような、嬉しいような気持ちになり、私も一緒にフフフと笑った。