このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
喫茶店アルファヴィルの入り口ドアを押して入ってきたNPO法人なごやかの理事長は、オーナーと並んでカウンターの中にいる私を見て、目を丸くした。
「きみは、ウチの管理者じゃなかったっけ?」
理事長はいつもこんな独特の言い回しをする。
「今日はアルバイトのIさんがお休みなので、公休の私がお手伝いしているんです。」
そうなんだ、と言いながら、彼はカウンターの上に紙包みを置くと、スツールイスに腰掛けた。
「バレンタインデイの義理チョコの代わりに、虔十デイサービスのH管理者がアップルパイをくれたので、オーナーにおすそ分けしようと思って。
京都伏見のお店からわざわざお取り寄せしてくれたのだそう。嬉しいね。
でも、僕のマイブームがアップルパイだって、どこから漏れたのかな。」
じろりと私の顔を見た。
私は目を合わせないようにしながら、オーナーが選び出してくれたシンプルなお皿にパイを切り分け、理事長へ出した。
その皿の隣りに、オーナーがもう一つ小皿を添えた。
小さなガラスの皿の上には、淡いピンクと褐色の二色の、バラの花の形をしたチョコレートが載っていた。
「これは、、、すごくきれいですね。」
「今日いらっしゃらなかったら、お持ちしようと思っていました。」
理事長は、白いシュシュで髪をまとめたオーナーの顔とチョコをまぶしそうに目を細めて何度か交互に見やると視線を落とし、照れ隠しなのだろう、独り言のように言った。
「パイとチョコ、どれから食べればいいのだろうね。」