ウルトラセブンからカプセル怪獣ウインダムをもらった。
30代の普通のOLの私へなぜそんなものをくれたのか、よくわからないが、調べてみたところ、カプセル怪獣三体―ウインダム、ミクラス、アギラはいずれもウルトラセブンが事情があって変身できない際におもに時間稼ぎの手段として投入され、ほぼ毎回、相手の怪獣や星人たちにボコボコにされてしまう、へなちょこ揃いだそうなので、たぶんリストラ、お払い箱の意味合いが強かったのだと思う。
その日から、私の狭い部屋にカプセル怪獣が棲みついた。
ふだんはちゃぶ台の前にちょこんと座って、起きているのか、それとも仮死状態なのか、微動だにしない。
それが深夜まで私が資格試験の勉強などして机に向かっていると、気を利かせたつもりなのだろう、コーヒーを煎れてくれたりするのだが、慣れないことはさせるものではない、手を滑らせてテキストや私のお気に入りのパジャマへカップごと撒き散らかしたり、慌てて洗濯機を回して隣りの住人に怒られたりしている。
また、時々背中のチャックが半分開いていたりもする。
潔癖症の私の堪忍袋は早くも限界に近づいていた。
そんなある日のこと、私は仕事上で大きなミスをして、会社の上得意様に損害を与えてしまった。
直接訪問してお詫びしなければ、と、身支度を整えていると、当の顧客から電話が入った。
その声は、不思議と上機嫌だった。
「あなた、いい怪獣を持ってるわね。さっき汗だくでウチに来て、『彼女の失敗は私の失敗です』って、私に千回、頭を下げて行ったわよ。
あなたが羨ましくなっちゃった。
ねえ、いくらでも出すから、私にあのカプセル怪獣を譲ってくれない?」
それからまもなくして、昨今の宇宙規模の人手不足からか、セブンにウインダムの返却を求められた私は、断固拒否した。
ミクラスは爆死したそうだけど、もう一体、アギラがいるでしょ?
セブンは困惑顔で言った。
「あれも日本の十代の女の子に譲ってしまって、絶対返さないって言われてるんです。」
そうか、ふふふ。へなちょこでも何でも、カプセル怪獣に守られているのは地球上でたった二人だけらしい。私はちょっと誇らしかった。