このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
急ぎの書類を届けにグループホーム虔十を訪ねると、事務室でNPO法人なごやかの理事長とY管理者が話し合いの最中だった。
私は遠慮しようとしたが、理事長は別に聞かれて困る内容ではないから、と事務イスを指し示して座るよう促した。
先日の台風の夜、Y管理者は前日から長期研修で県都S市へ出ていた。
風雨が強くなってきて、テレビなどでも各地の避難勧告や指示が報じられ始めたことから、川沿いにある姉妹事業所を心配して理事長に電話したところ、こちらは全然大丈夫だから引き続き研修を頑張りなさい、という答えだったそうなのだが、その後帰園してから私が作成した避難時の報告書を回覧して、自分が蚊帳の外に置かれたと激怒していた。
面長の顔は怒りで青白くなり、目の中には炎があった。
「そうではないのだよ、あの時もし、今まさに避難を開始したところだなどとうっかり話してしまったら、きみのことだ、どんなことをしてでも、帰ってくるだろう。
なにせ僕は大震災の際のきみの無茶ぶりをつぶさに見ているから。
きみは利用者様と職員たちのためとなると恐れることを知らない。
マーシー(慈悲)のボリュームが、他者とは比べ物にならないほど大きいのだ。
だからこそ心配で、優しい嘘をついた。わかってくれるよね。」
長い沈黙のあと、彼女は頷いた。
「でも、次からは本当のことを教えてくださいね。
理事長はいつも自分一人で解決しようとなさいますが、私にもきっとできることがあると思うのです。」
そして私の顔をちらりと見た。
私はふと思った、あの日Y管理者が市内にいたら、理事長は私へ最初に相談してくれただろうか。