昨年6月末、一本の営業の電話が入った。
コロナ禍で個人事務所にいる時間が格段に増え、こういった電話を取ることが多くなっていた僕は、またか、と舌打ちした。
電話は東北電力からだった。
電気使用量に応じた新しい料金プランができたので、ぜひ申し込みしないかという。
僕は思い出した。
何年も前から、運営する事業所すべてを一括で申し込み、スケールメリットを生かして電気料金を下げることはできないかとぼんやり考えていた(考えているだけだった)ことを。
ただ、新電力会社に高齢者施設を任せてしまうのはリスクが大きく、何度かそういった話はあったものの、お断りしてもいた。
その時たまたま時間があったからだと思う、個人住宅への勧誘だったこの電話に対して、自分は小さな事業所をたくさん運営しており、それを試算してみないか、と持ち掛けた。
はじめ相手は面食らっていたが、話すうちに声が興奮気味になり、ぜひやらせてほしいと言う。電話を切ると、僕は相手に三法人の全事業所リストをFAXで送った。
そのあと何回か電話のやり取りがあり、届いた試算データは、紙のボリューム以外あまり驚きのない内容だった。バラバラで煩雑な提案プランの上にセーヴされるのはこの程度か。
そんな思いが声に乗らないよう気をつけながら、相手の言うとおり、各事業所の電気使用量に応じたそれぞれ最安のプランを契約した。8月末のことだった。
それが、年度が変わって4月、税理士事務所の担当者と仮の決算書を組み上げる作業の中で、おや、と思った。水光熱費が昨年度比で92万円余り下がっている。
調べてみると、原因はすべて電気料金だった。
7か月でこれだと、年間に換算すると158万円の節約となる。
それも、工事も新たな加入金も、なにもなしで。
この金額は、ホーム一棟分の年間の料金に匹敵していた。
昨年度末には(先日書いたように)補助金で三棟へ平時も稼働する非常用自家発電設備を搭載しているので、今年度はより成果が表れてくるだろう。
あの時電話を取り、話を聞き、気が乗らないながらも契約を結んだ。
それがこんな結果になったことを、少々の反省とともに面白く感じてここに書き残している。