このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
新幹線の駅に隣接した豪奢なホテルのロビーで、僕は厚いレザーソファに座り、人をじりじり待っていた。
彼らはまもなくエスカレーターで降りてきた。
何年もご無沙汰してしまった恩人夫妻と、その末娘の3人だ。
僕は駆け寄り、深々とお辞儀した。
やあ、井浦くん、久しぶりだね。お呼び立てして申し訳なかったけど、家内がどうしてもきみに会いたいというものだから、人生最後の旅行に、こちらへ来てみたんだ。
「ご連絡をいただいて、ありがとうございます。とても嬉しかったです。
お孫さんにはもう5年も前になりますが、お会いして、初対面ではありましたが、とにかく懐かしかったです。
どうぞこちらへ、個室のパーラーを時間貸しで押さえておきました。」
それは豪勢だね、ママ。
彼らを広いパーラーの窓際へと案内し、3人が席に着くと、僕はその前でカーペットに膝をついた。
「申し訳ありません、本当に不義理してしまって。
故郷に戻ったものの、慣れない商売のぬかるみに足を取られて結果が出ず、なんだか顔向けできない気がして、恥ずかしくて、ご連絡しないまま年月が過ぎてしまいました。」
いいのよ、井浦くん。
そうだろうと、思っていましたよ。
「ダメよ、こんなヤツ、簡単に許しちゃ。」
僕の前に進み出た娘は怒気をはらんだ低い声で言う。
「そういえばあの、きみに似て利発そうな息子さんはどちらへ進学したの?」
「京大の文学部哲学科よ。」
「京大、、か。ああ、きみの夫君は僕より頭がいいひとなんだね。」
「それはそうでしょ、あなたは私たち家族を捨てて地の果てに帰って行っちゃったひとでなしなのだから。」
「いや、捨てて行ったわけでは、、」
よしなさい、と母親にたしなめられながらも、彼女は憤怒の表情を緩めなかった。