このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
私が売れない演歌歌手だったころ、担当についた初老のマネージャーのNさんの口癖は、大丈夫だから、だった。
すぐくじけそうになり弱音を吐く私へ、そのつど彼は大丈夫だから、と呪文のように声を掛けた。
なにが大丈夫なのか、こまごまとした説明はなかったが、私はたぶんそのあとに、いざとなったら僕が出て行くから、出て行ってまとめるから、安心なさい、と続くのだと信じていた。
なんにせよ、私にとっては最高のマジックワードだった。
ある時、大きなステージを終えた後、いつになく高揚した私はNさんに、その大丈夫は私だけにくれませんか、と言い放ってしまった。
あわてて手で口を押さえ、自分がしでかしたことに顔を赤らめている私を見た彼は、わかりました、プレミア性を維持するために、極力、他の歌手たちには使わないようにしますね、姫様、とおどけた調子で答えた。
今、老舗旅館の若女将を務めている私は、大小失敗が絶えず落ち込む若い仲居たちに、大丈夫だから、と声を掛ける。
その口調がこころなしNさんと似てきていることに、私は気づいている。