このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
「悪いけれどここからは僕一人で行方不明者を探しに行くので、きみは車に戻り、みなを安全なホームまで避難させてほしい。」
大きな余震が続いていた。
そのたびあちこちで悲鳴が上がる。
道は異臭を放つヘドロで汚れ、小さな川に住宅の二階部分が押し寄せていた。引いて行く波に車がさらわれてしまった、と男性が大声で叫んでいる。
ホームの方角を見やると、防砂林がすっぽりときれいになくなり、黒い水平線がすぐ間近に迫っていた。
目を合わせないようにしながら立ち去ろうとして、コートの袖をつかまれた。
「何を言っているのですか、理事長、やめてください。また津波が来たらどうします。」
いや、でも僕には責任があるから、と言いながら振り返ると、相手の頭の上に積もった雪が解けて目じりまで流れていた。
「命からがら逃げてきた利用者様や職員を、生きている方々を、まずは安心させていただけませんか。」
僕は常に無茶で、捨て鉢だった。どうともなれ、と思って過ごしてきた。
けれどもその言葉は、匹夫の勇(ひっぷのゆう)でいきり立っている頭にしみてきて、少しの間はあったものの、そうだね、とうなづくことができた。
あの時止めてくれて、ありがとう。
生き延びたことより、自分が相手の申し出を素直に聞けることを教えてくれて。