電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

菅野仁『友だち幻想』を読む

2018年10月29日 06時03分53秒 | -ノンフィクション
しばらく前に購入していた本で、菅野仁(かんの・ひとし)著『友だち幻想』を読みました。筑摩書店の若い人をターゲットとした新書シリーズ「ちくまプリマー新書」の中の1冊で、156頁のコンパクトな本ですが、最近あちこちで話題になっているみたい。帯には「人づきあいに悩むあなたへ」とあります。ちょいと個人的に思うこともあり。



本書の構成は次のようになっています。

はじめに 「友人重視指向」の日本の高校生
第1章 人は一人では生きられない?
第2章 幸せも苦しみも他者がもたらす
第3章 共同性の幻想―なぜ「友だち」のことで悩みは尽きないのか
第4章 「ルール関係」と「フィーリング共有関係」
第5章 熱心さゆえの教育幻想
第6章 家族との関係と、大人になること
第7章 「傷つきやすい私」と友だち幻想
第8章 言葉によって自分を作り変える
おわりに 「友だち幻想」を超えて

社会学者であり教育大学において教員養成の仕事をしている著者らしく、自分と他人の間の適度な距離感や、併存の作法などを取り上げたもので、「友だち百人できるかな」の圧力下に過ごした若い人にとっては、もしかすると新鮮な考え方かもしれません。



ここからは、本書に触れてというよりは個人的な回想です。私が高校生の頃、今は亡き父親がふともらした言葉が「お前は友だちが少なくていいな。」というものでした。普通、友だちが少ないというのはけなし言葉であって、褒めるべきことではないように思いますが、亡父の発想は違っていたようです。

たしかに、考えてみれば、商売人であれば友だちは多いほうが商売にはプラスでしょうし、幼稚園や小学校の先生にとっては、「みんなバラバラ」よりも「みんな仲良く」してくれたほうが何かと運営しやすいでしょう。ですが、人それぞれ性質も違い、何かと群れたがる人がいれば群れるのを好まない人もいます。

これまでの経験では、全く友人がいないのも困りますが、少数の親しい友人がいれば別に困りはしませんでした。「自分をまるごと受け入れてくれる人がきっといる」などという発想はありませんでしたし、そういう幻想に悩んだ経験もありません。たぶん、中高生時代には、読書や自然や実験室で過ごした時間が長く、人間関係に悩むよりももっと面白いことが目の前にあったからではないかと思います。人間関係にはわりとクールで、自然現象やモノ、技術などに強い興味を持つようになったためでしょう。

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