「家で言っても全然練習しないのです」
「家で練習したのをみてもらってこそレッスン」とNちゃんのご両親が相談に来られました。
そのときは時間もなかったので「続けていたらいい事があるのよ」と少しお話しましたが
それでは相談の答えになっていないのでブログ上で私の考えを述べさせていただきます。
練習をしないでレッスンに行くことを憤慨されるご両親に感謝します。
練習したところをレッスンでみてもらって、注意するところをきいて、
さらにそれを改善するように練習するのが、今も昔もレッスンの正しいあり方なのです。
しかし、習い事の多い子どもたち、ご両親も共働きでなかなか時間が取れず、
学童や延長保育から帰ってきたらもう夜の七時前なんて子も。
そんな実情の昨今、「レッスンに来るのが練習」になっている子が多いです。
♪① 子どもは練習がきらい
練習が好きなんて子は滅多にいません。 ましてや子どもは強制をきらい、自我が
しっかり芽生えて、3年生にもなると親の思い通りにならないのです。
「今やろうと思ったのに・・・」なんてのはいつの世も常套文句。
♪② レッスンに来てくれるだけでもいいのです
残念ながら練習しないと上達はのぞめません。でも週に一度でもレッスンに通っていると
やはり全くしないより、少しずつでも上達するのです。
それが最初の「続けていればいい事があるのよ」につながります。
そうは言ってもご両親が憤慨するように、先生もたまに憤慨することもあります。
家で練習をしてこない子より、レッスンに来て弾く気を見せない子には
憤慨しますね。(特に発表会前は) そうじゃないと来た時だけでも少し上達することが
望めないからです。
私は、毎日何回練習しましょう。練習したらカードに回数を書きましょうというのが
嫌いです。学校のように毎日チェックできるのなら効果もありますが、週に1回だと
やはり家庭でのチェックに勝るものはありません。カードに書き込むだけなら
嘘もかけるのですから。
もちろん練習することの大切さは都度伝えますが、本人が気がつくまで
待たねばならないのです。
ピアノのテクニックの習得は時間がかかります、おそらくスイミングや珠算のような
目に見える上達は期待できません。 長い時間をかけて、練習を重ね、
テクニックだけでなくその中に音楽をする喜びを感じ、演奏に心を入れられるように
なるには随分と時間がかかります。毎日の中では見えないものが、重ねることによって
点が線になり線が紡がれて面になって心に染み入るように身につくのが音楽と思います。
ピアノを嫌いにさせず、しかし練習しないことに安易に迎合せず、本人がピアノを演奏する
喜びを見つけ出し、何かに気がついて、何かを感じたときに、ぐんと伸びていきます。
気長に待つのも先生の役目と思います。お母さんも気長に待っていただけませんか。
残念ながらその喜びを見出せるまでにやめていく子もありますが、それもまた人生です。
「レッスンに来てくれるだけでいい」なんて言う先生は自分でも月謝泥棒かなと
思ってしまいますが、そうではないですから(笑)
毎週、機嫌よく通ってくれる子どもを音楽嫌い、ピアノ嫌いにさせないよう日々努めています。
ピアノを嫌いにさせてしまうと、生涯の友だちである音楽全般に心を閉ざしてしまう
ことがありますから。 先生は嫌いになってもいいですが、ピアノは嫌いにならないでと
願っています。
♪③家庭でしていただくこと
自発を促す
①の子どもは練習嫌いといいましたが、保育所のときから通っていたNちゃん。
すぐにピアノも用意していただき、お母さんもおそらく練習しなさいの言葉かけと同時に
レッスンについてき見聞きしたことを元に家での練習にお付き合いして
いただいたことと思います。でももう3年生。1人で練習するのが理想です。
練習の内容まではもうタッチしなくてもいいでしょう。
小さい頃は少し練習しただけでも大体弾けて合格がもらえていた曲も、先に進むと
時間をかけないと仕上がらないようになってきます。
しかしその分、達成感は大きいのです。 目に見える上達はのぞめませんと言いましたが
練習すれば出来る、努力の結果はすぐわかるのです。
ただ「練習しなさい」ではなくて「練習はできた?」と自発を促す声かけはいつも
お願いします。 ムカッ、 イラッ!と来ることもあるでしょうが
言い続け、しつづけるのが教育です。
環境を作る
声かけは時間を取らないですが、ご両親に時間を取っていただきたいのは
環境作りのための時間です。
好きな子はどんな環境でも練習する!言いたいのですが、そもそも子どもは練習は嫌い。
伝記や昔の道徳に出てきそうな偉人は少数派だから本になるのです。
家には、テレビ、ゲーム、下の子が賑やかにしている等 いろいろ気が散る原因が
いっぱいです。 させると決めたらリビングにピアノがある場合が多いでしょうから
10分.15分と練習時間を決めたらその間は兄弟にもテレビを見させない覚悟が
必要です。別室なら理想ですが別室でも寒かったり暑かったり、少々さびしかったり
しますから、 お母さんもお忙しいでしょうが台所を片付けながらでも、
耳を傾けている気配を示して頂き、出来ればピアノの内容まで知らなくても、
その時間は新聞をみたり本を読んだりの静かな文化タイムを作っていただきたいのです。
聞いてくれる人が(注意する人でなく)いると年齢に関係なく嬉しいものです。
習い事のピアノですがご家族の協力でどんどんよい方向に向かいます。
環境を変える
1.荒療治ですが、一旦習うのをやめるのもいいかも。
好きならまたやりたいと言い出します。
(私のことですが小学生時、親の考えで一方的にやめさせられたことがあります。
やめさせられた理由も聞けなかったけどまた習わせてほしいと頼んで今があります)
ぜひ続けさせたいと思うなら、この荒療治は向かないかも。そのままやめてしまうことも
ありますから。 でも少なくともお母さんのイラつきは解消されます。
2.これまた荒療治ですが、先生を変える。
先生、子ども、そしてご両親、お互いにピアノが好きになって欲しい、弾けるようになって
欲しい、そんな思いをともに享受しながらやっていくのですが、
その関係は思いを寄せる恋人関係と似ています。長すぎると慣れてマンネリ化。
打開するには別れるか、お互いのよいところを見つけて寄り添う覚悟をして結婚するかで
す。
実際に、他に変わられて、続けている人もいれば、やめた人もいます。
その反対に、理由は引越しとか、時間が合わないとかがほとんどですが、
他の先生から変わられて、「ここに来て また興味が出てきました」といわれる方も
いらっしゃいます。 決して前の先生がよくなくて、私がいいのではなくて、
環境を変えたことによるものだと思います。
実際にもし上を目指すなら、先生を変わっていくのはよくあることです。
お見合いや、結婚とは違うところは、やっぱり戻りたいと思われるなら
私は快く受け入れます。
人と人のお付き合いも大切ですが、 出会った人が音楽(ピアノ)が好きになって
上達するのを見ることが先生の最大の喜びですから。
3.最後は穏やかな環境の変え方
お母さんも(お父さん)ピアノを好きになって、習ってください。
子どもは親を見て育ちます。 お母さんがよいライバルになってくれたら
嬉しくて、俄然張り切ります。
そして、機会があれば、ピアノリサイタルに出かけてください。
いい演奏を聞くと子どもは素直にその時だけでも弾けるようになりたいと思います。
いい刺激を与えて欲しいのです。
私事ですが
ピアノの先生の子が必ずしもピアノが好きで上手とは限りませんが
でもピアノが弾ける率は高いです。
二人の娘は趣味で大人になった今も弾いています。
大人になったからいろんな事が聞きだせます。
決して練習は好きではなかった。
でもピアノはいつでも弾ける状態でレッスン室以外にもう1台あった。
たまにお母さんに椅子に縛り付けられて練習した事もあった。
(そんな事もあったけれど、それがあったから今弾けてるのだと思う)
お母さんはライバルだった。お母さんが5年生で弾いた曲は自分も
5年生かできたら4年生で弾いてみたかった。
お母さんは怒るけれど、おじいさんがよく黙ってピアノを聞いていてくれた
必要に応じて、先生は変わりました。
小さい頃練習は好きではなかったけれど今は、弾きたいのに仕事で時間が取れない
のが残念。
お母さんは、勉強をしなさいとは言わなかったけれど、ピアノは練習しなさいと
言い続けた。
そして私ですが、小学生の頃は日曜の午前中はピアノの練習をしないと
昼からは遊ばせてもらえませんでした。
そして私も、娘もですが、立地条件がよかったのもありますが、
どんな時間(TVゴールデンタイムでも夜遅くても)にピアノを練習しても叱られることは
なかったです。
私の時代は、ピアノを習うのはまだクラスの女の子が4~5人の時代。
電子ピアノはなくて、習うからには一般サラリーマン家庭は
覚悟を決めてピアノを買い親子ともども覚悟がいる時代でした。
やはり習うには入門する感覚でした。
今は気軽に習い事として捉えられる時代ですが、
ピアノを弾くための本質はなにも変わりはありません。
そしておまけ。 娘はお嫁に行くときは絶対ピアノを持っていくといって
アップライトを持っていきました。
私はグランドピアノを持っていける先を見つけられなかったので、
嫁に行かず、家におります