志情(しなさき)の海へ

かなたとこなた、どこにいてもつながりあう21世紀!世界は劇場、この島も心も劇場!貴方も私も劇場の主人公!

「9人の迷える沖縄人」(劇艶おとな団)が「CoRich舞台芸術まつり!2020春」でグランプリ受賞!おめでとうございます!

2022-06-28 19:24:44 | 沖縄演劇
     (沖縄タイムス6月28日)
そのコンテストに参加していることは劇団のチラシでも記載されていた。いわゆる「復帰50周年記念」の年でもあり、作品の中身が常に【沖縄「復帰」ゼロ年】の原初に立ち戻る作品であり、現在進行形で沖縄の現在を常に表出することが可能な脚本ゆえに、賞の可能性はありえると、何となく予測できた。演出の当山彰一さんの意気込みもすごかった。

ただ「なはーと」の小劇場の舞台構成に関しては不満があった。やはりぐるりと観客が取り囲む舞台装置で味わったエクサイティングな経験は捨てがたいゆえに~。
「9人の迷える沖縄人」は、新しいスタイルの現代劇だと言える。その点で現代日本演劇に一石を投じた作品だ。

1976年に初演で1978年に第22回岸田戯曲賞を受賞した「人類館」も永遠に日本演劇の歴史に刻まれる作品である。沖縄の近現代史を表出したブラックコメディーは、演出した経験から、かなり暴力がこれでもかと迫ってくる作品だ。そしてその構造的な暴力の中心に「天皇」が君臨している。そして作品は循環する仕組みになっている。円環構造は続くのである。日本の天皇制が続く限り、「人類館」もその負の側面を照射しつづけることになる。

つまりどちらの作品も作品として生きている。「9人の迷える沖縄人」は絶えず現時点の様々な阿鼻叫喚や苦悩、喜び、可能性、日米沖の関係性のみならず世界の状況が反映されることになる。方や「人類館」は作品そのものが絶えず円環運動をするのである。

作品のスタイルは変わるけれど、戯曲がもつ普遍性を持っている。新たな現代劇の誕生を喜びたい。これが岸田戯曲賞候補になる可能性はないだろうか。

ところで組踊の立役、沖縄芝居、史劇などの主役で力量を発揮している宇座仁一さんが『演技賞』に輝いた。最もだ。宇座さんの伝統芸に支えられた重厚さは飛び抜けていた。今後、歌舞伎や狂言役者が現代劇やドラマで活躍しているように、宇座さんに続く役者が育つことは十分ありで、すでに育っているに違いない。

「9人の迷える沖縄人(うちなーんちゅ)」は、ウチナーグチの宇座さんやハーメー、共通語の日本語、米軍基地で働く男性なども含め、英語も飛び出して、多言語のポリフォニーの場としてもさらに時代の色を染めていく可能性を秘めている。演劇進化論の実験場のような作品でもある。面白い。そしてかつ1972年の復帰そのものを絶えず問い返す構成になっている。ハーメーはそこにいるだけで存在感のある沖縄芝居役者がいないだろうか。軽く感じるのはなぜだろう。

沖縄人(うちなーんちゅ)が迷わない時代が来るのだろうか。おそらく答えは出たのである。大勢のウチナーンチュは日本国憲法の麗しさを求めて、日本への帰属を求めた。あまりにも米軍の人権無視が非情だったゆえもある。しかし反復帰論も琉球独立運動もあった。その潮流は今に続く。祖国は沖縄そのものであるとの考えもある。しかし日本復帰後もキーストーン沖縄の中身は変わらなかった。米軍基地増強され、自衛隊基地がやってきて日々拡張している。『治外法権』も変わらなかった。

いわゆる構造的差別の中の沖縄は、最貧県でもありつづける。世界の情勢はもろに生活に影響を与える。それはグローバルな国境を超えた世界の状況の中にあるのは同じゆえに、地球市民として共有する問題が降り掛かっている。
さて、どう生きるか、どうより良い沖縄社会をめざしていくか。一人ひとりが問われ続けている。

劇艶おとな団のみなさま、おめでとうございます!宇座さんはじめ、出演した役者の皆さま、おめでとうございます。ただ演技に関しては、もっと磨かれることを期待したい。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。