風通しがいい空間で、神奈川から来た青年は三線がうまい。太鼓さばきもなかなかいい。
風が流れる空間で幸子さんの歌三線にあわせて4時間ほど太鼓をたたいた。平良 進さんが応援に下さった小太鼓は音色がいい。しばらくすると三線の音色を聞きつけて一人の若者がやってきて太鼓をたたかせて、という。なかなか太鼓のバチの使い方に味わいがある。話によるともう25年間神奈川で歌三線に馴染んできた男性だった。年齢不詳で若く見えた。大太鼓と小太鼓で芝居太鼓の稽古をしているので、一つの小太鼓での調子の取り方が最初やりづらかったが、バチをうまく使い分けて、自分なりの工夫をしていた。
驚いたのは幸子さんの高音が伸びてきていることである。1年前とは異なる。ご自分の人生を歌にすることを薦めた時、作詞して後、作曲に時間がかかったが、ようやく出来上がった歌を去年の8月から歌っているが、それがうまくこなれてきている。
イギリスのロマン派を代表する詩人ワーズワースの詩集の話をしたのである。湖水地方に生まれた詩人が大自然の豊かさと恐怖の中で過ごし、やがてフランス革命の現場を通り過ぎ、恋愛を経て膨大な詩篇を紡いだことなど、お話した。そして出来上がった幸子さんの自らの人生の断片を語った歌が「母の面影」である。その他の詩句もまた彼女の人生経験が綴られている事が分かる。作曲のたいへんさがある。民謡の本を読み込み、歌を耳にしながら自ら独自の作曲をすることが並大抵でないことは想像できる。
甲状腺癌を克服してそれと闘いながらの作詞作曲である。凄い女性だ。信仰の深い女性でもある。驚きは他にもー。人生、終生頑張る姿がそこにある。創造することが、人生の生きがいになっている。何より誰かのために頑張る姿は神々しい。