仏教教団のウチマクについては知らないコトもない、少年の日、御前さまについて身延山に行った、長い坂を上り大きな玄関を入ると、若い層たちが四つん這いになった、御前さまは、この教団のトップ・クラス、御前さまの兄は、立正大学の学長で、一時代を築いた。
御前さまが、奥の部屋に消えると、やがて、僧たちが話し始める、次第に、大きな声になり、ケタタマしい笑い声、
「オレんときは オカズが3品だった」
「なんの なんの オレなんか おチョウシがついたんだぞ」
法事の供応、彼ら、それだけが楽しみなのだ、
「あの若ゴケ いろっぽかったな」
「モチハダが ほんのりとサクラ色で」
「ながーい夜 どーすんだろーな」
「おまえ まさか」
「ヒッヒ・ヒッヒ・ヒッー ご供養(くよう)・ご供養・・・」
御前さまがもどってくると、さっと四つん這い、カエルにもどった、
「ははあー」
御前さまが、
「どうだった」
「お寺がほしいと云ってました」
「いまは むずかしいんだよ」
遠い遠い日、老僧と少年。