MONAのフォト・ギャラリー

写楽・・話楽・・・な日々

箱根のあまのじゃく

2016-03-22 20:58:44 | 小さなおはなし


むかし 気の遠くなるくらい昔の話だ 

箱根山に 空から降ってきたという 神さまとも人間ともつかぬ 

「 あまのじゃく 」というものが 住んでおった 

この あまのじゃく へそまがりで とんでもない力持ちだった  

だが その馬鹿力が出るのも 晩げのうちだけのこと 

朝になって おてんとうさまが昇ると 力はふん抜けて ヘナヘナとなってしまう 

だから あまのじゃくは いつも 山の暗がりに 身を潜めておった 


ある日 あまのじゃくは 山のてっぺんに立ち 周りの山々を眺めておった 

西の方角に目をやると 

そこに お姫さまが 衣の裾をすんなりと広げたような 美しい富士山があった 

おまけに 芦ノ湖のやつめが その晴れ姿を くっきりと水鏡に映しておる 

「 あの高さといい あの姿といい 惚れ惚れするわい 」

あまのじゃくは うっとりと眺めておったが そのうち 富士山が憎くなってきた 

「 おらの箱根山がそっぽを向かれるのは あいつがいるからじゃ! 」 


その晩 あまのじゃくは 里のものが寝静まってから 

天秤棒の前と後ろにもっこを担ぎ 富士山に登って行った 

そして 土を掘り上げると もっこに入れ 海べりに行っては その土を沖合へぶん投げた 

土は 積りに積もって 島になった 

それが 伊豆七島だ 

投げ損なって 海べりに落ちたのが 熱海の初島じゃ  

 


もう 低くなったじゃろと思って 富士山を眺めたが それほどでもない  

「 もう 一息だ!」 

その晩 あまのじゃくは 欲張って大きな岩を引き剥がそうとして 手間取った 

やっと 岩を二つ もっこに押し込み 箱根山を越えようとした その時 

一番どりが鳴き おてんとうさまが ゆらりゆらりと昇ってきた 

「 こりゃ いかん! おてんとうさまが頭にあたったら おらの力はふん抜けてしまうわい 」  

あまのじゃくは もっこから 二つの岩をおんまけて 振り返りもせず 山の暗がりにふっ飛んで行った 


おてんとうさまが昇り 箱根の山々を照らすと 

そこに お椀を伏せたような 新しい山が二つ出来ておった 

あまのじゃくがおんまけた土でできた山は 今でも 箱根の山の上に 

二つ でがんでがんとのっていて 二子山(ふたごやま)と呼ばれておる 


*** 先日の「 おとなが楽しむおはなし会 」でお話した 「箱根のあまのじゃく」です ***  

コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする